100年前の歴史的名車に乗れる!トヨタ博物館の「T型フォード運転講習会」

「T型フォード」といえば、自動車がまだ高嶺の花だった1908年に登場し、大量生産による低価格化によって「自動車の大衆化」を実現した、大衆車の祖。「モータリゼーションの始まりのクルマ」とも称されるクルマです。

そんな歴史的に貴重なクルマを運転できるイベント「T型フォード運転講習会」が、トヨタ博物館(愛知県長久手市)で開催されています。どんな形で開催されているのか、現地で取材をしてきました。

3つのペダルは「クラッチ、リバース、ブレーキ」

「T型フォード運転講習会」は例年、春と秋の年2回、各2日間の日程で開催されています。通常は午前と午後で2名ずつ、1日合計4名を対象としており、参加は抽選で決まります。つまり、最大でも8名しか運転講習を受けることができない貴重なもの。同博物館の企画・広報グループの與語美紀子さんによると、「平均は4~5倍、今回の倍率は7~8倍だった」とのことで、なかなかに狭き門です。

当選した人には、まずトヨタ博物館からT型フォードの操作方法を説明する資料が届けられるそう。というのも、現在のクルマとはまったく操作方法が違うから。

「遊星歯車変速機」を持つT型フォードのペダルは3つ。構造的にはMT車よりAT車に近いとのこと
「遊星歯車変速機」を持つT型フォードのペダルは3つ。構造的にはMT車よりAT車に近いとのこと

3つのペダルは、「クラッチ・ブレーキ・アクセル」ではなく、「クラッチ、リバース、ブレーキ」だそうで、アクセルはなんとレバーで操作します。乗る前に構造を理解していなければ、動かすことができないのです。さらに講習会の当日には、VTRでの座学講習もあります。

講習に使うT型フォードは年代の違う2タイプ

トヨタ博物館では、100年も前のT型フォードをなんと6台も所蔵しているそう。そのうち、今回の運転講習会は、1915年製のセンタードアセダンタイプと1927年製のクーペタイプを使って行われました。

1915年式のセンタードアセダンタイプ
1915年式のセンタードアセダンタイプ

走行するコースはトヨタ博物館の敷地内で、それほど広くはないものの、40km/hほどの速度まで出すことはでき、ギアチェンジや後退も体験できるようになっています。

運転体験をした男性にお話を聞くと、「細かい振動がいい感じ。トルクが力強いね」とのこと。乗ってみて扱いやすかったのは、クーペの方だったそうです。もちろんパワステなどもないので、ハンドルの重みも普段乗っているクルマとまったく違い、「それがまたよかった」と言います。

1927年式のクーペタイプ
1927年式のクーペタイプ

もうひとりは、神奈川県からきたという女性の方で、なんと今回、夫婦で当選したという強運ぶり。この日は奥様が体験する日で、付き添いできていた旦那様にお話を伺うと、「妻が大のクルマ好きで、私の方が妻に影響されてクルマに興味を持つようになった珍しいパターンです(笑)。今は、もともと妻の愛車だったシトロエン2CVに乗っています」と話してくれました。

参加者の運転で走行するT型フォード。こんな歴史的なクルマに運転できる機会はそうあるものではない
参加者の運転で走行するT型フォード。こんな歴史的なクルマに運転できる機会はそうあるものではない

講習後には博物館の整備スタッフさんがフォードT型の細かい構造まで教えてくれる

講習終了後は、車両の外観や内部をじっくり鑑賞。整備担当スタッフに、2台の違いを聞くと「1915年式のセダンの方は、まだ馬車が一緒に走っていた時代のクルマ。なので、外観も馬車のようなデザインで、木製のパーツが多く使われています。エンジン始動も、クランクハンドルを使っての手動式でした。

セダンタイプは、セルモーターがなく、クランクハンドルでエンジン始動するタイプ。講習会ではトヨタ博物館オリジナルの可搬式電動スターターが用いられていた。それだけ「エンジンをかける」ということが大変だったということ
セダンタイプは、セルモーターがなく、クランクハンドルでエンジン始動するタイプ。講習会ではトヨタ博物館オリジナルの可搬式電動スターターが用いられていた。それだけ「エンジンをかける」ということが大変だったということ

一方、1927年式のクーペは、10年程度の違いしかありませんが、セルモーターもついて始動も簡単。ほとんどのパーツが金属に置き換わっていて、現在のクルマに近い形になっています」という答えが。

アメリカでは、T型フォードの登場後にシボレーが台頭し、フォードと熾烈な競争を繰り広げていたそうで、2台のT型フォードから、当時の自動車の進歩の目覚ましさがうかがえます。

製造年の新しいクーペタイプはセルモーター付きで、ホーンなどもあり、現在のクルマに近づいている
製造年の新しいクーペタイプはセルモーター付きで、ホーンなどもあり、現在のクルマに近づいている

100年も前のクルマということで、パーツの入手が大変そうだと思えますが、スタッフさんによると「欧米ではパーツを製作しているメーカーがたくさんあるので、比較的パーツの入手は難しくありません」とのことでした。海外ではクラシックカーの車両登録が簡単な国も多く、そうした国からのニーズも影響しているようです。

こうしたクラシックカーを走行可能なコンディションで維持していくのは、並大抵のことではありません。こうして一般の人が100年も前のクルマに乗ることが出来るイベントは、貴重といえるでしょう。次回は2019年の春に行われる予定です。興味のある方は、トヨタ博物館のイベント情報をチェックしておきましょう!

▼トヨタ博物館
住所:愛知県長久手市横道41−100
TEL:0561-63-5155
URL:http://www.toyota.co.jp/Museum/

(取材・文・写真:斎藤雅道 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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