クラブ発足20周年!毎年恒例「アウトビアンキA112の日」 ~The Day Of 112 Autobianchi~
「ビアンキ」と聞いて、何を思い浮かべますか? ある人は自転車かもしれません。それも間違いではありませんが、かつてその名を冠した自動車ブランド「アウトビアンキ(Autobianchi)」が存在していました。その中でも特に有名なモデルが「アウトビアンキA112」、そして「アバルト」の創始者であるカルロ・アバルト氏がチューンした最後のモデルが、「A112アバルト」です。
11月4日(日)に行われた「The Day Of 112 Autobianchi」は、そんなA112とA112アバルトが集まる年に一度のイベント。A112にちなんで毎年、11月12日前後に行われており、今年は50台のA112/A112アバルトが、富士の裾野にある「帝人アカデミー富士」のメタセコイヤの並木道に勢ぞろいしました。
アウトビアンキA112とは?
アウトビアンキは、イタリアの自転車メーカーのビアンキ社の自動車部門が、戦後ピレリとフィアットの資金援助を得て独立した自動車ブランド。A112は、1969年にフィアットが127に採用するFF横置きエンジンの実用化検証をするために送り出されたコンパクトカーです。当初、903㏄だったOHVエンジンは、1973年には982㏄の排気量を持ったアバルトモデルにまで発展します。
当初、FFモデルの検証のために送り出されたA112でしたが、アバルトモデルの人気もあり、1985年まで実に20年も生産された長寿モデルとなりました。世界中にファンやマニアが生まれ、今も多くの人に愛されるクルマとなっています。
今期で17回目そして「UUD」発足20周年
今回の「The Day Of 112 Autobianchi」の主催者、日本のアウトビアンキクラブである「UUD」は、今年で発足20周年になります。UDDとは、「112」のイタリア語表記である「UNO UNO DUE」の略です。
関東地区、中部地区、関西地区の主に3団体からなるUDDでは、毎年それぞれがイベントの企画などを行い、今回の「The Day Of 112 Autobianchi」で17回目。今年は、関東地区の団体が、帝人アカデミー富士の入り口にあるメタセコイヤの並木道を会場に選びました。
帝人アカデミー富士は、今から100年ほど前に日本初のレーヨンメーカーとして始まったTEIJINグループの宿泊研修施設で、現在は一般にも解放されており、富士山麓の緑に囲まれた地で景観にも恵まれていることから、クルマの撮影にもたびたび使われる場所です。クルマの撮影等でも使われるメタセコイヤの並木道は知られたところでもあります。
ブロック対抗のA112による競技
毎回、さまざまな企画が行われる「The Day Of 112 Autobianchi」。この日も、3団体対抗の競技が行われました。その内容は、A112にちなんだ「11.2mブレーキ競争」。メタセコイヤ並木道の坂を利用したブレーキ競技で、エンジンをかけずに下り、「11.2mで止める」というもの。各ブロックの代表戦ということもあり、笑いと歓声の絶えない競技となりました。
ほかにも少々変わったコンクールデレガンスが開催され、この日は「カッコいいホイールとカッコ悪いと思えるホイール」というテーマで行われました。「The Day Of 112 Autobianchi」では毎回、コンクールが行われますが、仕上がりがきれいな車両やお金がかかっている車両ばかりが受賞することのないように、ユニークなテーマが設定されます。
この日の優勝者は、高知から参加の黒いビアンキでした(もちろん“カッコいいホイール”での受賞)。しかし、残念ながら距離があるため、表彰式の時間までオーナーはおらず、その知らせを受け取ったのは後日になったようです。
A112は長期所有オーナーが多い
イベントでは、各オーナーのちょっとした紹介が行われますが、どのオーナーも車両の所有歴が長いのが特徴です。平均で8年~15年、長い人は30年にもなることがあり、むしろ所有して日が浅い方の方が少ないほど。所有はしていてもガレージで眠らせたまま云年……という方もいらしたのは、ご愛敬です。
上の写真の赤いアウトビアンキも、長期オーナーの所有する1台です。所有者は女性で、ほぼ「免許取得年=ビアンキ歴」という強者で、さらに驚くのはキャンプが趣味ということ。タープやテント、果ては燻製用のグリルまで、いったいどうすればこの小さなクルマに収まるのかと不思議なほど、多くのものを積載して出かけるそう。しかも、2人乗ってこの荷物だというから驚かされます。大きくなければ荷物が詰めないなどという話は、彼女とアウトビアンキの前では通用しないようです。ちなみに、この日も近くのキャンプ場に泊まられたとのこと。
20年の歴史からなる変遷
アウトビアンキA112は、製造から20年という歳月を、大きなモデルチェンジをすることなく、細かな変更のみで生き続けてきました。それは、多くのファンやオーナーに愛されてきた証拠でもありますが、普通にはその違いが判りません。しかし、こうした機会に一同に集められると「なるほど」と思える仕様の違いが見えてきます。今回は、その「ステージ7」までの違いも紹介いただきました。ちなみにビアンキA112の仕様の違いを示す「ステージ」という言い方は、UUDの関係者から始まった表現だそうです。
- はじまりのアウトビアンキA112。ステージ1と1。メッキバンパーの1に対して2はプラスチックに変更されている。
- 残念ながらステージ3は国内には入っていなというお話。画像はグリルが変更になったモデルステージ4。
- 通称ヒゲと呼ばれるステージ5。グリル下のスリットが特徴。
- ほとんど最終型と差のないステージ6。それでもリアのナンバープレートの位置やフロントバンパー、サイドのモールがないことで違いが見て取れる。
- 最終型であるステージ7。サイドのモールやフロントのフォグランプが識別点。リアのガーニッシュにABARTHのロゴが刻まれるのも大きな特徴。
同一メーカーや単一車種で集まるイベントは多々あります。しかしながら、ひとつのメーカー、それもすでに失われたメーカーの単独の車種で、これだけの台数が集まるイベントとなると、なかなか見られないものでしょう。
時代は移り変わり、基準に則さない部分も出てくるかもしれません。維持にしていくにあたっての部品もまた、出にくくなっていくでしょう。それでも彼らは、その結束力と情熱も持って、この小さなイタリア車を愛さずにはいられないのです。
(取材・文・写真:きもだこよし 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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