片山右京氏が新協会設立「緊急提言!『e-bikeで大きく変わる! モビリティのこれから』」シンポジウムレポート

2018年11月9日から11日にかけて千葉の幕張メッセにて、国内最大級のスポーツ自転車のフェスティバル「サイクルモードインターナショナル2018」が開催された。そのイベント内にて開催された「緊急提言『e-bikeで大きく変わる! モビリティのこれから』」シンポジウムで、一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)の理事長である片山右京氏は、「日本e-Bike協会」の設立を発表した。e-Bikeとは、日本で数多く見られる電動アシスト自転車を含む、電動化された幅広い自転車たちのことだ。

ちなみに、片山右京氏といえばレーシングドライバーとしてF1にまで上り詰めた人物だ。現在もチームUKYOの監督として、モータースポーツではお馴染みの存在となっている。しかし、一方で片山氏は登山や自転車競技にも挑戦していたのだ。特に自転車競技に関して言えば2012年にチームUKYOサイクリングチームを設立。チームは、自転車競技のプロツアーで活躍を見せ、2017年のUCI(国際自転車競技連合)アジアランキングは1位。自転車競技の分野でもチームUKYOは大きな存在感を放っているのだ。そうした活動もあってか、自転車競技のプロツアーを統括する団体である一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)の理事長に、片山右京氏が2018年2月より選出されていたのだ。

右、一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)の理事長片山右京氏。
右、一般社団法人全日本実業団自転車競技連盟(JBCF)の理事長片山右京氏。

モータースポーツの電動化と同様の流れが自転車競技にも

“自転車の競技を統括する団体が、なぜ、e-Bikeに取り組むのか?” そのきっかけは、世の電動化の動きにある。「昨年にUCI(国際自転車競技連合)が、モータースポーツがeスポーツに向かったのと同じように、自転車競技も電動化に向かうという方針を発表しました。我々もUCIルールに準拠しているので、それを形にしていこうというのがきっかけです」と片山氏は説明する。

しかし、その裏には、別の理由もあるようだ。それが現在の自転車の置かれた状況だ。

「自転車が悪者なんです。一般論ですが、通勤の自転車が信号を守らなかったり、原付バイク以上スピードの出せるロードレーサーが歩道を走っています。またお母さんの電動アシスト付き自転車は、そもそも重いのに、さらに子供を載せて重くなっており、そうした自転車が事故を起こしています。また、歩道を自転車が走っているのは、世界で唯一、日本だけなんです。それなのに東京オリンピックで日本に注目が集まっているときに、事故が世界中に報道されると、さらに状況が悪くなります。企業から応援してもらえないどころか、自転車競技部の廃部や縮小ということにもなりかねます」と片山氏は危機感を募らせる。

また、一方で、そんな状況を覆すチャンスが今でもあるのだろう。

「100年に一度のモビリティの大変革が訪れようとしています。自動車の電動化や自動化と同じことが起きて、自転車がe-Bikeに変わります。また、自転車というくくりではなく、eモビリティとして、シニアカーからセグウェイなど、マイクロモビリティ全体に広げて、クルマとどう共生していくのか? どう走っていくかの部分をみんなで考えていかないといけない。これをキックオフにしようと考えています」と片山氏。

自転車を単に電動化するだけでなく、新しい乗り物として進化してゆく中で、クルマとの共生などを考えていこうというのだ。具体的には、e-Bikeによる競技イベントをスタートさせ、また、今回のように声をあげる場を設けていくという。

「サイクルモードインターナショナル2018」の会場の一画にあるメインステージでシンポジウムを開催。
「サイクルモードインターナショナル2018」の会場の一画にあるメインステージでシンポジウムを開催。

現在の自転車を取り巻く環境とe-Bikeの可能性

片山氏の趣旨説明の後、シンポジウムはパネルディスカッションが始まった。パネルディスカッションは2部構成になっており、第1部は「e-Bikeで大きく変わる! モビリティのこれから」で、第2部が「自転車とクルマの未来関係:e-Bikeの視点から」だ。最初に自転車業界から未来を語り、後半は自動車業界の人間も交えて行うという構成だ。

パネリストとして片山右京氏と共に登場したのはNPO自転車活用推進研究会理事長の小林成基氏、自転車評論家の疋田 智氏、グッド・チャリズム宣言プロジェクト代表理事の韓祐志氏であった。

左から右へ、小林成基氏(自転車活用推進研究会理事長)、疋田 智氏(自転車評論家)、グッド・チャリズム宣言プロジェクト代表理事の韓祐志氏。
左から右へ、小林成基氏(自転車活用推進研究会理事長)、疋田 智氏(自転車評論家)、グッド・チャリズム宣言プロジェクト代表理事の韓祐志氏。

まず小林氏から電動アシスト自転車の現状が報告される。日本では電動アシスト自転車の販売が伸びている。だが、自転車が歩道を走るのは日本だけ。また、時速20㎞を超えると、最大アシスト速度である24㎞に向けて、徐々にアシスト力が弱くなるのは日本だけの規制。電動アシストの上限が時速24㎞なのは、原付バイクの8掛けで、科学的根拠はない。そうした事例を聞けば、日本の電動アシスト自転車の規制は、いわゆるガラパゴス状態であることがよく分かる。

小林成基氏による世界各国の自転車をめぐる規制の対比表。
小林成基氏による世界各国の自転車をめぐる規制の対比表。

続いては中国の事例が紹介された。中国は、ざっくり言えば「電動の乗り物は、すべて自転車である」という認識があるという。見た目は、ほとんどマイクロカーのようなものでも、電動というだけで自転車と考える向きもあるというのだ。「中国は一歩一歩前進していますよね。プリミティブな技術を積み重ねている。人と電動のハイブリッドでいいと。日本は立ち止まっている感があります」と疋田氏。

そして韓氏は、二輪カテゴリーの規制の私案を発表。原付バイクの上限速度を、実情にあわせて時速60㎞まで高める。その下にe-Bike用の新カテゴリーを作り、上限速度を時速30㎞にしようというのだ。「自転車がすべて車道の左側を走るとなれば可能な案ですね。E-Bikeが原付バイクにとって代わるかもしれませんね」と小林氏。

自転車が悪者にならない未来のためには、自転車を取り巻く環境が大きく変わる必要がある。「そのためには社会の認識を変えないといけない。お母さんたちが電動アシスト自転車を買う理由はなんだと思いますか。なんと“歩道を走れるから”なんです。車道を走るのは怖いという。そこから変えないといけません」という疋田氏。それに続いて小林氏は「まず、道路環境をよくしないといけませんね」。インフラに意識、モビリティそのもの、といったすべてに変化が求められるのだ。

現在の自転車を取り巻く環境とe-Bikeの可能性

第2部は、片山右京氏、小林成基氏、疋田智氏に加え、ピーター・ライオン氏と河口まなぶ氏の2名のモータージャーナリストが壇上の人となった。

第2部のパネルディスカッションのテーマは「自転車とクルマの未来関係:e-Bikeの視点から」。
第2部のパネルディスカッションのテーマは「自転車とクルマの未来関係:e-Bikeの視点から」。

まずはライオン氏が、クルマの電動化や自動化の動きを説明すると、「クルマに比べると自転車は、まだまだプリミティブなものですね」と疋田氏。それに対して「自転車の電化によって、通信ユニットが載るようになれば、自転車がクルマやインフラとの協調も可能になります。クルマとe-Bikeの関係がよくなるでしょう」と河口氏。

またライオン氏は、車外へ給電できるPHV(プラグインハイブリッド車)を使ってe-Bikeへの充電を行ったイベントの様子も紹介する。「e-Bikeがあれば一般の人とサイクリストが一緒に走れるから、夫婦の仲もよくなるのでは」との意見も飛び交う。さらにe-Bikeは、ビジネス面での将来性が相当に期待できるという話も出た。「今、電動アシスト自転車の売上を金額ベースで考えると、ものすごく存在が大きい。今、自転車メーカーの全体の利益の約86%が電動アシスト自転車です。しかも、その電動アシスト自転車が最も普及している大阪でも15%しかありません。地方であれば、もっと低い。ものすごい伸びしろがあるんです」と疋田氏。

ディスカッションの仕上げは、片山氏のe-Bike協会への期待だ。「e-Bikeはチャンスだと思います。自転車がクルマの仲間として認められやすくなると。現在の低いクルマとの親和性を高くしていってほしいですね」と河口氏。「e-Bikeブームの追い風となるのが電動車のブームです。e-Bikeをチャージできる仕組みが必要だと思います。電動車との親和性を大切にしてほしいですね」とピーター氏。「いろんな誤解に立ち向かってほしい。何で自転車で急ぐ必要があるの? という疑問が必ず出てきます。それはエコな社会の実現のためです。クルマの機能の一部を自転車に移す。そのためにはスピードが必要なんですよ。そもそも自転車が走るのは歩道とかね。こういうことをひとつずつ摘み取ってほしい」と疋田氏。「人の心を変えるためにも、国、政治を動かしてほしい。ロビーイングをやってほしい。根拠をもって提言してください」と小林氏。

さまざまな意見が飛び交った最後に片山氏は「みんなが声をあげていくことが大事だから。そういう場を続けていくところからしかないんですね。そういうところを、eモビリティとして、クルマだとか自転車を超えたONE モビリティとして、自転車を支えるものにしていきたいと思います」と締めくくったのだ。

左より右へ、小林成基氏、ピーター・ライオン氏(モータージャーナリスト)、河口まなぶ氏(自動車ジャーナリスト)、疋田智氏。
左より右へ、小林成基氏、ピーター・ライオン氏(モータージャーナリスト)、河口まなぶ氏(自動車ジャーナリスト)、疋田智氏。
日本最大級のスポーツ自転車フェスティバル「サイクルモードインターナショナル2018」。
日本最大級のスポーツ自転車フェスティバル「サイクルモードインターナショナル2018」。
会場内には試乗コースが用意されており、出展者の最新自転車を無料で試すことができる。
会場内には試乗コースが用意されており、出展者の最新自転車を無料で試すことができる。
会場中央のひときわ大きなブースがシマノ。電動自転車も数多く展示していた。
会場中央のひときわ大きなブースがシマノ。電動自転車も数多く展示していた。
ヤマハのブースは電動自転車の多く集まるエリアに構えられていた。
ヤマハのブースは電動自転車の多く集まるエリアに構えられていた。
ボッシュはヤマハの向かい。ボッシュ製の電動ユニットを搭載する自転車を数多く展示。
ボッシュはヤマハの向かい。ボッシュ製の電動ユニットを搭載する自転車を数多く展示。
自動車メーカーとしては、唯一、マツダが参加。純正の自転車用キャリアを使って6台を搭載する牽引車を展示。
自動車メーカーとしては、唯一、マツダが参加。純正の自転車用キャリアを使って6台を搭載する牽引車を展示。

(文・写真:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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