マフラーを交換すると、なぜパワーアップするの? フジツボに聞いてみた。

カスタマイズの第一歩としてポピュラーなアフターパーツであるマフラー。「音がレーシーになる」「パワー&トルクが向上する」と言われていますが、そもそもなぜ純正からマフラーを変えるとこのような変化が起こるのでしょうか?

この疑問を解き明かすべく、純正からアフターパーツまでさまざまなマフラーを手掛けている「フジツボ(藤壺技研工業株式会社)」を取材しました。お話を伺ったのは研究開発部の藤壺政宏さんです。

そもそもマフラー(排気システム)の役割とは?

「自動車のマフラー」と聞くと、車両後部に見える金属管をイメージすることが多いと思いますが、それはマフラーのほんの一部です。実際は、エンジン本体から普段目にするマフラー後端部まで、いくつかの機能を持つ金属管が繋がった排気システムのことを言います。

画像提供:藤壺技研工業株式会社
画像提供:藤壺技研工業株式会社

「エンジンの爆発によって生まれた排ガスは非常に高温で高圧であるため、大気に触れると急激に膨張して大きな音を発生させます。また、そのまま排ガスを大気に放出すると、環境によくないのも事実です。排気音を和らげ、大気に放出しても問題ないように浄化する。簡単に説明すると、これがマフラー(排気システム)の役割となります」(藤壺さん)

マフラーで性能や特性が変化する理由

ここからが本題です。藤壺さんにマフラー交換にまつわる疑問をぶつけてみました。

――なぜ、マフラー交換をするとパワーアップするのでしょうか?

単純に、管の径を太くしたり管の曲がりを少なくしたりすれば、排気ガスの流速が速くなり、一定時間でより多くの排ガスを放出できるので、パワーアップします。しかし、それだけでは低回転時のトルクが小さくなるなど、街乗りでは非常に乗りづらくなってしまうものです。また、エキゾーストマニホールドの形状や太さも、性能や特性に大きく関わってきます。マフラーの商品コンセプトによって違いますが、車種や乗り味に合ったパワーやトルクの出方を実現できるように、太さや形状を選択しています。

――形状によって性能や特性は変わりますか?

管の径を太くすればパワー型、細くすればトルク型となります。また管の集合の仕方によっても変わってきます。例えば4気筒エンジンなら、4本の排気管を一度に1本にまとめる『4→1』型だとパワー重視。4本、2本、1本と順にまとめていく“4→2→1”だとトルク重視となります。簡単に説明するとこのようになりますが、ほかにも等長、不等長など、気筒ごとの管の長さなどが関わってきます。

――音はどのように違ってくるのでしょうか?

馬力が上がるとともに、また管の径が太くなるとともに音は大きくなる傾向にあります。音の高低はエンジンそのものの特徴や消音器の構造、エンジンからマフラー最後部までの管の長さによっても異なってきます。

――なぜ近年はステンレス製のマフラーが多いのですか?

フジツボでは1990年代半ばごろまで、鉄でマフラーを生産していました。しかしそれ以降、ステンレス製のマフラーが一般的となっています。エンジンがかかっている時間が短時間だと、マフラーに水がたまってしまい、鉄(スチール)のマフラーでは錆びてしまうためです。

――鉄(スチール)製マフラーの特徴とは?

メリットとして、生産がしやすいためコストが安く済むことが挙げられます。また、ステンレスと比べて熱膨張率が小さいため、設計もしやすいですね。デメリットは錆びやすいこと、単純にステンレスと比べて強度が弱いことが挙げられます。

――ステンレス製マフラーの特徴を教えてください

メリットはなによりも錆びにくいこと。デメリットは、鉄に比べコストが高いことと、熱膨張率が大きいことです。ステンレスは熱膨張率が大きいため、条件によって異なりますが、熱によって10~15mmもマフラーの長さが変化してしまうことがあります。そのため、熱膨張による変化も視野に入れて設計しなければなりません。

マフラーに正解はない!

マフラーのメカニズムから、形状、素材による特徴をご紹介してきましたが、「こうすれば絶対に良くなる!」という正解がないのがマフラー造りなのだそう。取材時、藤壺さんは「一概にどれがいいとは言えないので、マフラー造りに正解はありません」とおっしゃっていました。もし、マフラーを交換するならば、商品カタログや紹介ページをよく読んで、自身のクルマや使い方に合ったものを選びたいですね。

(取材・文・写真:西川昇吾 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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