煮る焼く炒める……何でもできちゃう! 災害時も大活躍する自衛隊の炊事車がすごい
ここ数年、災害に見舞われることの多い日本列島。緊急時に、自衛隊の災害派遣による活動は被災地にとって心強いものでしょう。さまざまな活動が行われていますが、ライフラインが断たれた中で温かい食事を提供する「炊事車」はかなりのスペックを持ったものだと聞きます。「炊事車」にはどのような機能があり、どんな人が動かしているのか? 陸上自衛隊北部方面総監部広報室の喜納末広さんに伺いました。
一度に200合もの米が炊ける!
――「炊事車」とは、クルマの形としてはどのようなものなのですか?
サイズは長さ4.595m、幅2.310m、車両総重量2,500㎏以下で、自走はせず、73式大型トラックのけん引で移動します。
調理器具の構成としては、かまどが6つ、火元となるバーナーAssyが6つ、調理するための釜である外釜が6つ、内釜が8つあります。内釜は同時に2種類の材料を調理する場合に、外釜の中に入れて使います。それに、揚げなべが2つです。この他の機能として、皮むき、千切り、すりおろしなどを行う裁断機も搭載しています。
- これらを使用して、炊飯、汁物、焼く、煮る、炒める、揚げると一通りの調理が可能です。
食事を作る能力としては、概ね45分以内に、200人から最大250人分の主食と副食を同時に調理することができます。米で言うと一度の調理で200合、それにおかずをということですね。
献立は特に決まってはいませんが、野営の期間中、同じものを出さないように、事前に考えています。カレーライス、唐揚げ、トンカツ、煮物、野菜炒め、味噌汁など一般的な料理を作っていますね。
調理に必要な人材は平素から訓練を
――「炊事車」で調理をするのは、専門の方なのでしょうか?
炊事要員は、普通の隊員が、通常の勤務と兼務で実施しています。調理師免許は特に必要ありません。普段から、演習場などでの調理実習を主体とした訓練により調理に必要な人材を育成しています。通常訓練は、長い演習であれば1ヶ月に渡ることもありますが、その間ずっと料理をしているんです。
部隊によっては駐屯地の栄養士による座学を受けているところもありますし、技術、味を高めるために、炊事競技会などを実施しているところもあります。
実際の現場での担当は、部隊によっても異なりますが、基幹となる班長等の要員は、隊員が指定されており、裁断要員などの班員は、その都度指名される場合が多いです。
――調理にあたり、気をつけていることはありますか?
まずは、衛生面の管理ですね。炊事要員が調理をする時は、マスク、手袋を着用し、健康管理にも気遣います。食品衛生法に基づき、個人の菌検査も実施します。各機材の消毒も必須です。食中毒などを予防するための食材管理、さらには排水の処置もしっかり行います。
訓練時、被災地で、それぞれでの活動
――実際の現場ではどのような動きをされるのですか?
訓練間では戦闘服装で、敵からの航空攻撃やゲリラ攻撃などを想定する中での作業となります。決まった時刻に食事を提供できるよう数時間前から準備をし、周囲を警戒しつつ、中断することなく調理をしていきます。ここで大切なのは、全隊員に温かい食事を提供すること。それによって、訓練時の隊員の士気高揚に努めるのです。
食材については、各駐屯地から携行するか、訓練場所に近いところにある駐屯地などから補給をします。いずれかは、訓練内容に合わせて決定、準備していきます。
――では、災害派遣の際はどのようになるのでしょう。
災害派遣の場合は、被災の自治体との調整の上、派遣要請を受けた地域に向かい、調理をし、食事を提供します。この際は、水トレーラにより水を運搬、そして、自治体などが準備した食材で調理します。
2018年9月に起きた北海道胆振東部地震の際には、筆者も「第11師団災害派遣車」という断幕を張った自衛隊のトラックを見かけました。「とにかく温かい食事を」という目的意識と日々の訓練によって、災害時にもたくさんの皆さんの助けになっているのですね。やはり、「自衛隊の炊事車はすごかった」のでした。
(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
<取材協力>
陸上自衛隊北部方面総監部広報室
http://www.mod.go.jp/gsdf/nae/
[ガズー編集部]
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