女川の新たな灯台になりたい。そんな思いで営業するトレーラーハウスの宿泊施設「ホテル・エルファロ」
宮城県牡鹿郡にあるJR女川駅の目の前には、少し変わった景色が広がっています。同じような平屋の長細い家がいくつも立ち並んでおり、それもそのどれもがとてもカラフルに彩られているのです。
よく見ると、その建物の一つひとつには、タイヤがついています。そう、これらはすべて、トレーラーハウスなのです。この不思議な住宅密集地は、トレーラーハウスを使った宿泊施設、ホテル・エルファロと言います。
なぜ、トレーラーハウスで宿を始めたのか?
もともと女川駅の周辺には、12軒の宿があったそう。それが2011年の東日本大震災で失われてしまいます。
ホテル・エルファロの創始者のひとり、佐々木里子さんによると、「当時、宿の関係者は失意の中にありましたが、多くのボランティアの方や応援に来てくださる方々が、何もかもがなくなった女川に日々通ってきてくれるのを見て、『これではいけない』『身体を休めてもらう場所を作ろう』と立ち上がりました」とのこと。
そして、役所と交渉し、補助金を使って宿を作ることに。しかし、将来的なことを考えると、いつまでも同じ場所で営業できるとは限りません。
「そこで、移動が容易なトレーラーハウスを用いることにしました。もともとは12軒からなる組合でしたが、うち4軒は高齢などの理由から辞められ、残った4軒の宿が協力し、女川トレーラーハウス宿泊村「EL faro(エルファロ)」を立ち上げました。2012年10月のことです」(佐々木さん)
2017年8月にリニューアルオープンし、宿泊施設名を「ホテル・エルファロ」を改めてから現在は、女川駅に隣接する形で営業していますが、立ち上げた当初は別の場所にあったそう。その大移動の様子は、動画で残されています。
ちなみに、40台もあるトレーラーハウスは、一見するとランダムに置かれているように見えますが、風の通りを考慮して配置しているとのこと。敷地内を歩いていると、海からの風が流れてきており、風通しはよさそうでした。ちなみに、トレーラーハウスは洋風の輸入車両に見えますが、すべて純国産だそう。輸入車の方が安く、仕上がりもいいそうですが、気候の違いから防湿性が弱いため、耐久性で劣るのだと言います。
泊まってみたその使い勝手
今回、このホテル・エルファロを実際に利用してみました。トレーラーハウスは、ごく普通の宿のような2人部屋から、ロフトの付いた家族向けまであります。ロフト付きでは、お子さんが入るとこぞって2階へ上がり、中にはお父さんと奪い合いになることもあるそうです。
実際に宿泊をしてみるとトレーラーハウスであるということを意識させるところはあまり感じさせず、ごく普通のツインルームに思えます。ただし、普通のツインルームではまずないであろう部分が部屋の両壁、ベッドのどちらにも窓があるという点です。これはどちらからも朝日が入るので、気持ちよく目覚めることができました。部屋の設備としてはシャワー室やトイレ、TVはもちろんwi-fiも通っていますのでネット環境も十分対応しています。そして玄関には必ず置き傘があります。何故に?それは後程お話いたします。
部屋としての居心地や快適性は普通の宿と同等ですが、ひとつだけトレーラーハウスならではの欠点があります。建物同士がつながっていないだけに、食堂へ行くなど移動の際には必ず外に出る必要があり、雨の日は傘が必須となることです。佐々木さんは「リピーターになる方は、こうした部分もトレーラーハウスの魅力のひとつと考えてくださっています」と言います。
復興の象徴として
女川にはかつて灯台がありました。現在は仮のものがありますが、震災により失われたものの存在は、やはり大きかったようです。
佐々木さんは、「この移動できるホテルが女川の駅周辺に存在することで、新たな地元の象徴になり、訪れてくれる観光客のための灯台になればと考えています。お気づきの方もいらっしゃると思いますが、エルファロとは灯台を意味する言葉です」と話してくれました。
女川町の復興にかかる時間は8年と言われ、昨年度末(今年3月)で復興事業の終了を迎えました。ですが、現実にはまだまだ道路の改修工事や区画整理など、終わってはいない点が多々あります。もしかしたら、ここからが本当のスタートなのかもしれません。港町の駅に隣接するちょっと幻想的なトレーラーハウス「ホテル・エルファロ」、女川に足を運ぶ際はぜひ泊まってみてください。
(取材・文・写真:きもだこよし 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
ホテル・エルファロ
https://hotel-elfaro.com/
[ガズー編集部]
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