【D1GP】GRスープラが北の大地に初上陸! 北海道2連戦は松井有紀夫選手のFDが連勝
2019 D1グランプリシリーズの第3戦・第4戦が北海道・十勝スピードウェイで開催され、松井有紀夫選手(Team RE雨宮 K&N)が追走トーナメントで2連勝。北の大地にロータリーサウンドが高らかに鳴り響いた。
ニューマシン「レクサスRC」もデビュー。地元ドライバーの気合は充分
横井昌志選手(D-MAX RACING TEAM)がポイントランキングトップとなり、迎えた2年目の北海道ラウンド。横井選手は昨年も北海道を制しているだけに、ここでも優勝して早々にシリーズを制するか、それとも日比野哲也選手(Team SunRISE RACING)を始めとするライバルたちが独走に待ったをかけるかに注目が集まった。
- ファンにサインを求められ対応する横井選手
もちろん、北海道出身の地元ドライバーである畑中真吾選手(VALINO IGM RACING)と上野高広選手(TEAM VERTEX VALINO)も気合十分。なんと上野選手は、ニューマシン「レクサスRC」をここで投入。急ピッチで仕上げたレクサスRCは、ほぼシェイクダウン状態だったが、それでも地元での開催のために間に合わせてきた。
- ニューマシンのレクサスRCと上野選手
シリーズチャンピオン経験者である川畑真人選手(Team TOYO TIRES DRIFT-1)と、齋藤太吾選手(FAT FIVE RACING)の2人がステアリングを握る2台のGRスープラの動向にも目が離せない。北海道ラウンドはまさに見逃せない内容満載の中で迎えた。
- 斎藤選手が今年投入した「GRスープラ」
- 川畑選手の「GRスープラ」
【第3戦・単走】中村選手覚醒!川畑選手が意地を見せる
土曜日の午前中に行われた第3戦・単走決勝。開会式には十勝スピードウェイのある更別村の西山村長もかけつけ、ユーモアたっぷりの開幕宣言とともに戦いの火蓋は切って落とされた。
- 「更別村は日本一の農業王国です」と身振りを入れて説明する西山村長
参加した22名の選手は2グループにわかれて1台ずつ走行。ラインの正確さやドリフトの角度、速度を競う。そのうち各グループの上位8名が追走トーナメントに進出し、3名が敗退する。空に厚い雲が立ち込め、今にも泣きだしそうな雰囲気だ。
その中でランキングトップの横井選手は、Aグループで1本目に97.96点とグループトップの点数を叩きき出すも、前戦ほど点数が伸びない。とはいえ、追走トーナメント進出は決定しており、タイヤ温存のため2本目の走行はキャンセルした。
- グループAの単走をトップで通過した横井選手
いっぽう単走ランキングでは、トップで横井包囲網の筆頭である日比野選手が、その牙城を揺るがすべくアタックするものの、1本目は96.70点と不発。さらに2本目は89.97点と失敗し、結果としてグループAを6位で終える。
- 日比野選手とシルビア
グループBには、ファン待望のGRスープラ2台とレクサスRCが登場。しかし、斎藤選手のGRスープラは、速さこそあるものの角度が足りず。上野選手のレクサスRCもまとまりのある走りを見せるものの、点数が伸び悩み追走トーナメント進出ならずと残念な結果に終わる。
- 斎藤選手
- 上野選手
一方で好調だったのが、今シーズンからD1グランプリに復帰した中村直樹選手(Team VALINO N-STYLE ALIVE FNATZ)。持ち前のダイナミックな走りを披露して横井選手を上回る98.80点でトップに立つと、あとに昨年の単走王である川畑選手が控えている中、まさかの2本目キャンセル。
- 中村選手
この行動に対し、闘争心に火が付いた川畑選手。GRスープラに鞭を打ち、攻めの走りで果敢に攻めるものの、最終コーナーの角度が足りず98.23点とわずかに及ばず。川畑選手は2本目で再度チャレンジをするも、今度は角度をつけすぎて失敗。
- コーナーに対してハーフスピン状態のようなリアからの侵入をする川畑選手
この結果、中村選手のD1復帰後初となる単走優勝が決まった。前戦では不調だった中村選手は「今大会前にマシンセッティングなどのテストをしたのがよかったです。採点システム(DOSS)のことが理解できるようになってきました」と、競技の採点方法を熟知した様子であった。
【第3戦・追走】中村大暴れ!松井覚醒し横井を止める
土曜日の午後から開始した第3戦の追走トーナメント決勝。12時ごろに雨粒が落ちてきたものの、レース開始には止んだ。トーナメントは順当に進み、ベスト8で一昨年のシリーズチャンピオン藤野秀之選手(Team TOYO TIRES DRIFT-1)と中村選手という好カードが実現。しかし、中村選手は先行の1本目にコースアウトを連発する。
- 先行する中村選手のリアタイアがコースアウトし土煙が上がる
逆転が難しいほどの大差がつく中、2本目の藤野選手先行の際にピタリとつけていく。しかし、攻めすぎて藤野選手を押し出し、マシンに大きなダメージを負わせてしまう。その藤野選手のチームメイトである川畑選手は、ベスト8の日比野戦でドリフトが足らずに敗退。
- 中村選手に押し出される形でコースアウトした藤野選手
- コースアウトした際にエアロパーツを破損。ガムテープで補修
ベスト4に進んだのは、藤野選手、松井選手、日比野選手、横井選手の4名。まずは松井選手と藤野選手。単走で5位に終わった松井選手は、追走が始まると、持ち前のハイスピードなドリフトを披露。対藤野戦でも冴えた走りで決勝へ勝ち上がる。
- 松井選手(手前)対藤野選手という、TOYO TIERS同士の対決
日比野選手と横井選手というランキング1位と2位の対決は、日比野選手が先行する1本目に日比野選手がコースアウトする致命的なミスが。横井包囲網は松井選手に託されることになった。
- 横井選手(手前)対日比野選手
計測機器のトラブルにより、なかなかスタートができない中で始まった決勝戦。松井選手先行の1本目、横井選手は「先行で得点が伸びない以上、相手にピタリとつけて得点を稼ぐ」作戦に切り替えたこともあり、松井選手に対して大きなアドバンテージを獲得。2本目、あとがなくなった松井選手だが、横井選手と同様にピタリとつけてレースを進める。これに焦ったのか、先行する横井選手は痛恨のコースアウト。これで松井選手が自身3回目の優勝を飾った。
- 松井選手(手前)対横井選手
「ずっとギリギリのレースでした。でもメカニックをはじめスタッフの頑張りに応えたかった。決勝は開始前までちょっとイライラしましたけれど、落ち着いて走ることができました」と喜びを語った。
- 優勝カップをたかだかと掲げる松井選手
【第4戦・単走】若手の北岡が単層初優勝!
翌日曜日に開催された第4戦は、好天に恵まれ、朝から30度を大きく超える猛暑日の中で行われた。午前中の単走決勝では、松井選手がAグループ1本目に97.63点をたたき出し、さらに前日の単走覇者の中村選手も97.86点と高得点。両名とも午後の追走トーナメントに備え、タイヤ温存のため2本目の走行をキャンセルした。この2人を上回ったのは、北岡裕輔選手(TEAM MORI)。1本目は点数が伸びなかったものの、2本目に98.43点でAグループのトップに立つ。
- 北岡選手
Bグループでは斎藤選手が1本目に97.95点を出してトップ。2本目に98点台が出るのでは?と期待が高まるものの、気負いすぎたのかコースオフ。
- 斎藤選手
川畑選手も、1本目の97.52点に対して点数が伸びなかった。北海道勢のうち畑中選手は、Bグループ5位で通過するものの、上野選手はニューマシンのセッティングなどを大きく変更するものの90点台しか出ずに不通過。結果、北岡選手のD1シリーズ初単走優勝が決定した。
- 川畑選手
- 上野選手
【第4戦・単走】酷暑の中、松井が2連勝達成!
午後から行われた追走トーナメントは、ベスト16戦で暑さのため計測機器にトラブルが発生。この前代未聞のトラブルの修復に、40分を要することとなった。そのベスト16で斎藤選手はミスをしてポン選手(Daychapon Toyingcharoen)に敗退、川畑選手は高橋和巳選手(TMS RACING TEAM)に勝利するものの、2本目にコースアウトした際にタイヤがホイールから外れたために失格との裁定が。GRスープラの2台がベスト16で姿を消した。
- ポン選手(手前)対斎藤選手
- 後追いの川畑選手がコースアウトした瞬間
ベスト4に勝ち上がったのは横井選手、松井選手、藤野選手、高橋選手の4名。松井選手対横井選手は、前日の決勝戦と同じ組み合わせだ。横井選手が2本目にコースアウトした減点が響き、松井選手が勝利する。
- 松井選手(写真手前)と横井選手
藤野選手対高橋選手の戦いでは、1本目に6ポイントの大量アドバンテージをとった高橋選手だったが、タイヤが大きく消耗し2本目に大きなミス。ベテランの藤野選手が勝った。
- 藤野選手(写真手前)と高橋選手
時刻は17時30分を超え、陽が傾き始めた中で松井選手対藤野選手の決勝が行われた。1本目は、先行の松井選手が飛び込みで角度をつけすぎて振られるミス。藤野選手が松井選手に対して終始近づいていたため、藤野選手に5ポイントのアドバンテージがつく。しかし2本目、先行し綺麗な走りの藤野選手に対し、松井選手は背後にピタリとつく。この結果、松井選手が優勝。北海道の2戦を制した。
- 松井選手(写真手前)と藤野選手の決勝戦
ドリフトが北海道に根付きつつあることを実感
機械のトラブルは起きたものの、2年目の北海道ドリフトは成功裏に終わった。感じたのは観客やスタッフの熱量だ。ほかのサーキットに比べてより積極的に選手と話かけ、記念写真を撮る姿が見られた。
- 北海道出身の畑中選手(写真右)
観客のひとりに話を伺うと「この日を楽しみにしていました。昨年は雨で白煙があまり上がらなかったけれど、今年はもくもくで見ていて楽しかった」と、日焼けした笑顔で語ってくれた。レースの様子が夜のニュース番組でも放送され、来年の開催は未定ながらも、誰もが「来年もここでレースを観たい」と口々に語っていた。
- すべてのレースを終え、静けさを取り戻した十勝スピードウェイ
シリーズ戦のチャンピオンシップ争いは、横井選手の独走状態であるのは変わらないものの、松井選手が追いかける展開に。これに日比野選手が遅れてついていく形となった。次戦は8月24(土)日と25日(日)、D1の聖地である福島県エビスサーキットで行われる。
(取材・文・写真:栗原祥光 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
D1 GP
URL:http://www.d1gp.co.jp/
[ガズー編集部]
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