自動車安全テストはリアル・ワールドの事故再現を目指す「2019 NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」

梅雨が明けて、一気に真夏の暑さが訪れた2019年7月29日と30日の東京で「2019 NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」が開催されました。これはユーロNCAPを筆頭に、グローバルNCAP、アセアンNCAP、中国NCAPの担当者が一堂に介して、世界の自動車安全アセスメントの最新事情を語り合うイベントです。

NCAPとは、自動車メーカーとは別の第三者が、自動車の安全性能をテストして公表するというもので、自動車の安全性向上に大きく貢献しています。

そのテスト内容は、時代の変化や技術の進化に合わせて変わっていくもの。このイベントに参加すれば、直近の変更や先の目標までを知ることができるため、自動車メーカーや自動車関連サプライヤーから多くの方が参加しています。

今回は、日本のJNCAPにも大きな影響を与える、ユーロNCAPの話を紹介したいと思います。

2020年に実施される欧州の新しいテストとは

ユーロNCAPからは、レーティング・チーフであるアンドレ・ジーク氏が来日し、ユーロNCAPの2025年までのロードマップを説明しました。

ユーロNCAPのレーティング・チーフであるアンドレ・ジーク氏
ユーロNCAPのレーティング・チーフであるアンドレ・ジーク氏

それによると、まず大きな変化が2020-2021年のテストにあると言います。

<変化1>乗員保護の衝突安全性能をはかる、オフセット前面衝突試験が変わります。

2020-2021年のテストからオフセット前面衝突試験の方法が変更となる。
2020-2021年のテストからオフセット前面衝突試験の方法が変更となる。

変わったのはクルマがぶつかるバリアです。これまでは固定されたバリアだったものが、車輪のついた動くバリアに代わります。クルマとバリアが同じスピードで走ってきてぶつかるテストにすることで、クルマ対クルマというリアル・ワールドの事故に、より近づけたシチュエーションになるのです。

<変化2>クルマの横からの衝突の安全性能を見る側面衝突試験に「ファーサイド」が追加されました。

側面衝突試験に関しても、運転手から遠いサイドからの衝撃をみるテストが追加される。
側面衝突試験に関しても、運転手から遠いサイドからの衝撃をみるテストが追加される。

これは運転手とは逆の遠いサイド(=ファーサイド/Far Side、座席から遠い側面)からの衝撃に対して、乗員の安全度をテストするものです。これまであった、乗員の近い側面からのテストに反対側からテストが加えられた格好です。実は、シートベルトは遠い側面からの衝撃に対して、乗員を拘束しにくい作りになっています。そのため、座席から遠い側面側からの衝撃があると、座席から飛び出して吹き飛ばされる可能性があるのです。そういった事故に遭遇した際、乗員をきちんと守れるかを確認する試験が新たに追加されます。

<変化3>交差点の先で歩行者と接触!? そんな事故を想定した、歩行者保護のテストにも変化があります。

交差点を曲がったところにいる歩行者保護のテストも追加される。
交差点を曲がったところにいる歩行者保護のテストも追加される。

こちらのテストは、衝突被害軽減自動ブレーキであるAEBに関するもので、日本のJNCAPでいえば、衝突が避けられない場合に自動でブレーキをかける技術など自動車の先進安全技術について評価している「予防安全性能アセスメント」に該当します。

ユーロNCAPでは、このテストに対して2020-2021年から、交差点でのテストが追加されると発表しました。その内容は、交差点を曲がったところの歩行者に対してAEB(衝突被害軽減自動ブレーキ)がどう作動するかを確認するテストです。

また、交差点で他車両(クルマとオートバイ)との衝突を防ぐ機能もテストに加わっています。さらに2022-2023年のテストでは、AEBだけではなく、AES(自動エマージェンシーステアリング)が正面衝突を避ける機能も評価に追加されるということです。

よりリアル・ワールドの事故に近づけるために

そして、2023年以降は、シナリオ・ベースのテストに進化するとアンドレ・ジーク氏は説明します。

シナリオ・ベースというのは、2020-2021年のテストに採用された“交差点を曲がったときに、横断歩道を渡る人に対するテスト”というようなものでしょう。つまり、よりリアル・ワールドの交通事故に近いテストになるというのです。

ただし、具体的なテスト内容は「まだ検討中」だとか。テスト数が膨大になるため、コンピューター上のシミュレーションで行うことも考えているようです。

どちらにせよ、テストの内容が高度化するのは間違いなく、それに対応する自動車メーカーは苦労することでしょう。しかし、逆にユーザーにとっては、より安全性の高いクルマを判別できるようになるということ。また、日本のJNCAPもそうしたユーロNCAPの動向を見て、日本に導入可能なものを見つけ出すはずです。日本のJNCAPも進化することが予想されます。

安全性能アセスメントは知っておきたい「ミシュランの星」的存在

安全性能アセスメントは、レストランのクオリティを一目で知らせてくれる「ミシュランの星」と似たようなもの。テスト内容が高度になり、リアル・ワールドに近づくほど、ユーザーにとっては大きなメリットとなります。ユーザーとして、NCAPの進化はうれしいものと言えるでしょう。

(取材・文・写真:鈴木ケンイチ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

<関連リンク>
第6回「2019 NCAP & Car Safety Forum in Tokyo」
https://www.sustainablecommunications.jp/forum/006/

[ガズー編集部]

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