クルマ雑誌の編集部に潜入! 自動車学校向け専門誌『月刊自動車学校』
各業界が発行する専門誌や専門新聞。自動車の分野でも、業界専門誌が存在しています。
そのひとつが、一般社団法人 全日本指定自動車教習所協会連合会(以下:全指連)発行の『月刊自動車学校』です。全国1,261校ある自動車学校に配布され、教習技術向上のために発行されています。
この自動車学校向けの雑誌とは、どのような内容が書かれているのでしょうか。「月刊自動車学校」編集担当の中俣進さんにお話を伺いました。
- 編集部の中俣進さん。現在は制作会社と協力しあいながら一人で雑誌編集をおこなっている
専門誌って何を目的に、どう作っているの?
本雑誌は1冊約70ページの月刊誌で、毎月15,000部を発行しています。創刊は昭和40年とのことで、かなりの老舗雑誌! 一体どんな体制でどう作っているのか伺うと、意外にも「社内での担当は私一人です」という、驚きの声が返ってきました。
「現在社内での担当は私のみ。全指連のメイン業務である、関係機関(警察庁)や業界との橋渡し業務と並行して、制作会社の方と協力して原稿を書いてもらっています」
雑誌担当を引き継いでからもうすぐ6年。引き継いだ当初からずっと、「現場で働く人たちにとって、業務で役立つ情報を入れることができるか」という視点で取り組んでいると言います。
「教習内容は決まっていますが、人によって教え方や気を付けているポイントは異なります。そういったスキルの連携は、基本的に同じ学校内でしかなされません。そのため、本誌を読むことでほかの学校の教え方を知ることができるようにし、現場のさらなるレベルアップになるようにと考えて作っています」
各教習所の教官が月替りで執筆する「技能教習 私の教え方」という連載は、記事がたまると1冊の別冊として再販売される人気コーナー。本誌を読んでスキルの見直しをする教官もいらっしゃるとか。
さらに『月刊自動車学校』には、役立つ情報だけでなく、各種データや会合や、研修などのレポートも掲載。人が入れ替わるこの業界において、「歴史書」としての役割も果たしているそうです。
「効率を考え、雑誌の中では連載が4本あります。ちなみにマンガも1本あるのですが、こちらは50年続いている長期連載です」
50年とはまた、40年で幕を閉じたこち亀(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)もびっくりの超ロング連載ですね。
専門誌はネタ切れしないの?
専門誌は、扱う情報やネタの幅が、ある程度固定されているのが特徴です。ネタ切れを起こさないために、常日頃からネタ探しをしているほか、「制作会社の社長と2人で『どうしようか〜』と悩みながら出すこともありますね」と笑いながら話す中俣さん。6年途切れず、クオリティも落とさず制作し続けています。
でも、実は、もっと努力されているのでは!?
そこで、いつか記事にするために保管しているという極秘資料を見せていただきました!
机の上にドンと重ねられた大量の資料。今後の雑誌を形作っていく、調査資料の数々です。そのボリュームに驚きます。
「捨てていいものもありますが、このデータは記事で紹介しよう、この話は連載として使えるな、といったものを一旦クリアファイルにまとめ、掲載できなかったら翌月に繰り越す、といったことをしています」
これだけの資料やヒントがあるからこそ、ネタ切れなく刊行できているのですね!
時代を超えて残していく、高めていく使命を持って
「一番大変だったのは、引き継いた直後の6年前。本誌をどういう構成で制作していくか。最初の組立に苦労したのを覚えています」
最近では女性教官も増えたため、「職員の健康管理としての働き方改革」や「脳力トレーニング」など、視点を少し変えた記事も好評と言います。
「全指連が気付かないけれど、各教習所が問題として抱えている情報を探して把握し、伝えていくという使命も担っていると考えます。教習所に足を運んだとき、『雑誌が役立つものになって来たね』なんて声をかけていただくこともあるんです。こういった出来事もモチベーションの1つですよね」
運転免許を取得する時に誰もが通う自動車学校。その裏には、学校内でしか共有されない情報やそれぞれが抱える問題を吸い上げ、全国の学校に伝える専門誌の存在があったのですね。
(取材・文:おおしまりえ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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