【D1GP】エビス・マイスター誕生! 小橋選手が2連勝を飾りシーズンは混沌の様相に ~D1GP第5・6戦エビス~

ドリフト競技D1グランプリの2019シーズン第5・6戦が8月24(土)と25日(日)の2日間、福島県二本松市にある「エビスサーキット」で行われ、Team ORANGEの小橋正典選手が2連勝した。

ジャンプが魅力の「ドリフトの聖地」エビスサーキット

エビスサーキットは、D1グランプリシリーズ発足初年度から開催が続く、山の斜面を利用した高低差のある名物コース。競技は、全長約1.2キロメートルのコースのうち、スタンドが設けられている下半分を使い、コースを逆走して行われる。

エビスサーキットのコース全景。写真だと分かりづらいが、かなり高低差があるサーキットだ
エビスサーキットのコース全景。写真だと分かりづらいが、かなり高低差があるサーキットだ

今回の審査区間。主に5つのセクターに分けられ、その間(J1~J3)は滑らかにドリフトをしなければならない。

見どころは、ブラインド気味の最終コーナーをドリフトしながらややジャンプしながら飛び出す「ジャンプドリフト」。競技車が飛び出すのは、日本でもここだけだ。

ジャンプする山口孝二選手のS15シルビア
ジャンプする山口孝二選手のS15シルビア
ジャンプドリフトをする川畑真人選手のGRスープラ。左フロントタイヤが浮いていることに注目
ジャンプドリフトをする川畑真人選手のGRスープラ。左フロントタイヤが浮いていることに注目

着地後は、短いホームストレートで角度を増しながら、審判員席前の2コーナーから3コーナーを左旋回。登坂しながら3コーナーを抜けるとクイックに右へ切り返して4コーナーへ。ドリフトをしながら坂を駆け上がりフィニッシュという、高度な技術が要求される。

セクター5をドリフトしながら駆け上がる斎藤太吾選手のGRスープラ
セクター5をドリフトしながら駆け上がる斎藤太吾選手のGRスープラ

さらに今年は、車体の一部が通過しなければならないゾーンが、ジャンプ着地後と審査員席前に設けられ難易度が上昇している。特に着地後に設けられたゾーンは、コンクリートウォールに近いことから、わずかでもコントロールミスをするとマシン大破する危険をはらむ。

着地後のストレートに設けられたゾーンを通過する上野高広選手のレクサスRC。車体の一部がこのゾーンの中を通過しなければならない
着地後のストレートに設けられたゾーンを通過する上野高広選手のレクサスRC。車体の一部がこのゾーンの中を通過しなければならない

若手の小橋選手が圧倒的な速さをみせつけて第5戦を勝利

横井昌志選手が2位で松井有紀夫選手に対して36ポイントという大差をつけて迎えた今大会は、秋の気配を感じる土曜朝の練習走行から波乱が起きた。横井選手のマシンが、審査員席前のタイヤバリアに接触しクラッシュしたのだ。

クラッシュしマシンを止める横井選手のS15シルビア
クラッシュしマシンを止める横井選手のS15シルビア

わずか数時間後の単走決勝までにマシンは修復したものの、横井選手自身が負傷したこともあり、追走トーナメント決勝に進出することは叶わず。単走決勝は、2016年でも単走優勝を果たしている藤野秀之選手が勝利。「このコースには苦手意識があるので練習をしてきました」と謙遜しながらも勝利のうれしさを語っていた。

セクター4を駆け上がる藤野選手の180SX
セクター4を駆け上がる藤野選手の180SX

追走トーナメントでは、松井選手が優勝するか否かに注目が集まった。しかし、松井選手はベスト8戦のジャンプドリフトで前走車に追突。それがペナルティとなり敗退する。

ジャンプドリフト中、前走車に追突した松井選手のFD3S。追突によりフロントバンパーが大きく損傷
ジャンプドリフト中、前走車に追突した松井選手のFD3S。追突によりフロントバンパーが大きく損傷

その中で2名の選手が会場を沸かせてくれた。1人は、今年からD1グランプリに復帰した中村直樹選手だ。中村選手はベスト16で猛烈な後追いを見せた斎藤選手に勝つと、山口選手、内海彰乃選手を下して復帰後初の決勝戦へとコマを進める。

もう一人は、エビスサーキットをホームコースとするTeam ORANGEの若手、小橋正典選手だ。小橋選手にとってエビスサーキットは、前年に初優勝を果たした得意とする場所で、ベスト16戦でランキング3位の日比野哲也選手を下すと、ベスト8で藤野選手にも完勝。圧倒的な速さを武器に決勝を果たす。

小橋選手先行の1本目、中村選手は3コーナーでミスをして小橋選手との差が開き、小橋選手有利の状況に。中村選手先行の2本目は、小橋選手が冷静さを保ったまま終始ピタリとつけて完勝。D1グランプリ2勝目を飾った。

小橋選手先行の決勝戦1本目。中村選手(写真奥)がピタリとつけてジャンプドリフトをする
小橋選手先行の決勝戦1本目。中村選手(写真奥)がピタリとつけてジャンプドリフトをする
小橋選手先行の決勝戦1本目。中村選手(写真奥)が小橋選手のスピードに追い付かず離れてしまう
小橋選手先行の決勝戦1本目。中村選手(写真奥)が小橋選手のスピードに追い付かず離れてしまう
中村選手先行の決勝2本目。中村選手に対して小橋選手(写真奥)がインに飛び込む
中村選手先行の決勝2本目。中村選手に対して小橋選手(写真奥)がインに飛び込む

3位入賞は内海選手。小橋選手は、試合後「今回のエビス戦に向けて車両の軽量化を行ったのがつながってきたのかなと思います」と感想を言うと、中村選手は「気合一つでやってきました」とやりきった表情を見せてくれた。

写真左から2位の中村選手、優勝した小橋選手、3位内海選手、単層優勝を果たした藤野選手
写真左から2位の中村選手、優勝した小橋選手、3位内海選手、単層優勝を果たした藤野選手

ドリフト以外にも魅力がいっぱいのD1グランプリ

第5戦のあとは、毎年恒例のD1夏祭りが開催された。スイカや甘酒が振舞われたほか、レースクイーンたちによる浴衣コンテストも行われ、そして夜空に大輪の花が咲く下では、酔った選手たちが大騒ぎ。普段は見ることができない姿と裏話に、最後まで残った観客たちも喜んだ。ほかのモータースポーツイベントでは味わえないフレンドリーさは、D1グランプリならではの魅力だと言える。

上野選手のピット前ではスイカが振舞われた。その数なんと100玉!
上野選手のピット前ではスイカが振舞われた。その数なんと100玉!
スイカを手にする浴衣美女
スイカを手にする浴衣美女
冷えた甘酒と浴衣美女
冷えた甘酒と浴衣美女
浴衣美人コンテストで入賞した3名
浴衣美人コンテストで入賞した3名
夜空に上がった大輪の花火
夜空に上がった大輪の花火
来場者が取り囲む中、酔った選手たちが大きな声で立ち話。その愉快な話は夜遅くまで続いた
来場者が取り囲む中、酔った選手たちが大きな声で立ち話。その愉快な話は夜遅くまで続いた

来場者に対してフレンドリーな点はほかにもある。開場時は、選手全員で来場者をお出迎えするのだ。場内はオープンピットなので、いつでもマシンを自由に見ることができるし、お昼時には選手がピットの前に立ち、サインや記念撮影に応じてくれる。

選手たちが来場者をお迎えするのもD1ならではの光景
選手たちが来場者をお迎えするのもD1ならではの光景
オープンピットなので、マシンのすぐ近くまで立ち寄れるのもD1の魅力
オープンピットなので、マシンのすぐ近くまで立ち寄れるのもD1の魅力

コース上では、ドリフトタクシーをはじめとする同乗走行が行われたほか、追走トーナメントの開始前には出走するマシンがコース上に並び華やかなムード。選手がマシンの横に立ち、握手やサインに応じていた。気軽で身近な雰囲気は、ほかのモータースポーツカテゴリにはないポイントだ。

ドリフト車両の同乗体験の様子
ドリフト車両の同乗体験の様子
決勝トーナメント前に行われるグリッドウォーク。対戦順に車が並べられる
決勝トーナメント前に行われるグリッドウォーク。対戦順に車が並べられる

出展ブースに目を向けると、TOYOTA GAZOO Racingのブースでは、今年話題のGRスープラが展示され、その奥でe-SPORTS大会が開催されていた。そこにGRスープラで参戦する斎藤選手が登場。実際にプレイをしてファンを沸かせてくれる一幕も。

TOYOTA GAZOO Racingブースに展示されたGRスープラ(市販車)と斎藤選手
TOYOTA GAZOO Racingブースに展示されたGRスープラ(市販車)と斎藤選手
TOYOTA GAZOO RacingブースでGT sportsを体験する斎藤選手
TOYOTA GAZOO RacingブースでGT sportsを体験する斎藤選手

小橋2連勝!シリーズチャンピオン争いは三つ巴に

第6戦も朝の練習走行から波乱が起きる。横井選手が練習走行の1本目で、ジャンプドリフトの着地時にウォールにヒットしてしまいリタイア。横井選手の夏はこれで終わることとなった。

ジャンプドリフト後、右側のウォールにヒットしてマシンを大破させてしまった横井選手
ジャンプドリフト後、右側のウォールにヒットしてマシンを大破させてしまった横井選手

単走決勝は、藤野選手が前日に続いて連勝。「エビスが苦手」と話す藤野選手だが、とてもそうは思えない走りを見せてくれた。なぜ、苦手なのかを聞いてみると「ジャンプが怖いんですよ。あとリズムがちょっとねぇ。昨日も優勝しているので自信はあったのですが」と、はにかみながら答えてくれた。

最終セクターを駆け上がる藤野選手の180SX
最終セクターを駆け上がる藤野選手の180SX

追走トーナメントのベスト16戦では、昨日の決勝戦と同じ小橋選手vs中村選手のカードが実現。小橋選手先行の1本目は、中村選手が近づきすぎて3コーナーでミス。2本目、後追いの小橋選手は落ち着いて中村にピタリとつけて勝利。

小橋選手はそのままポン選手、さらにランキング2位の松井選手に対しても圧倒的な速さをみせつけて勝ち進み、決勝へコマを進めた。

ベスト16戦で小橋選手と中村選手のカードが実現!
ベスト16戦で小橋選手と中村選手のカードが実現!

一方で、チームメイトであり小橋選手の師匠である末永直登選手も負けていなかった。ベスト4戦で調子のよい藤野選手を倒し決勝進出を果たす。

Team ORANGE同士となった決勝戦。くしくもホームコースでの同門子弟対決に、会場は大いに沸きあがる。レース前のインタビューで末永選手は「久々に決勝戦で。昨日(小橋)正典先生に教わったら、決勝までくることができました。今日は先生に勝ちます」と言うと、小橋選手は「やりますよ。上下関係はもういいんじゃないんですか?」と笑顔を見せた。

Team ORANGE同士の対戦となった決勝戦。左は末永選手、右は小橋選手
Team ORANGE同士の対戦となった決勝戦。左は末永選手、右は小橋選手

末永選手先行の1本目。小橋選手は、終始ピタリとつけてプレッシャーを与えていく。それに負けてか末永選手が4コーナーで失速したため、小橋選手と接触。末永選手のミスとの裁定が下り、大きなペナルティに。圧倒的有利で迎えた小橋選手先行の2本目は、速い小橋選手に末永選手が追い付くことができず、小橋選手の完勝。小橋選手は通算エビス3連勝を飾った。「前日優勝しているので、行けるのではと思ったのですが、まさか優勝するとは」と小橋選手。

末永選手先行の決勝戦1本目。小橋選手が後ろをピタリとつける
末永選手先行の決勝戦1本目。小橋選手が後ろをピタリとつける
先行する末永選手が失速。後ろを走る小橋選手がスピンモードに入って避ける
先行する末永選手が失速。後ろを走る小橋選手がスピンモードに入って避ける

一方、末永選手は「(小橋)正典が中学生のときに僕がドリフトを教えて。だから決勝前はうれしくてうれしくて。2人ともスタートラインで笑っていました」と感慨深げ。素敵な師弟対決に暖かい拍手が会場を包んだ。3位の藤野選手は「単走の勢いで行けるかなと思ったのですが、末永さんの姿が見えなかった」と淡々とした表情で語っていた。

F1のモナコグランプリは3勝したドライバーに「モナコ・マイスター」の称号が与えられるが、前年を含めてエビス戦を3勝した小橋選手はまさに「エビス・マイスター」といっても過言ではないだろう。

優勝トロフィーを持つ「エビス・マイスター」の小橋選手
優勝トロフィーを持つ「エビス・マイスター」の小橋選手

これにより、小橋選手はシリーズチャンピオン争いで一気に3位へ。さらに松井選手もトップの横井選手との差がわずか9ポイントまで詰まり、三つ巴の様相に。小橋選手は「チャンピオンシップ? いや、ぜんぜん想像がつきません。でもガンガン行きます」と前向きだ。

横井選手の独走と思われた今シーズンのD1グランプリ。結局、最終戦まで誰がチャンピオンを手にするのかわからない展開となった。オートポリス戦は11月2日(土)~3日(日)に行われるYouTubeでも中継されるので、ぜひチェックしてほしい。

(取材・文・写真:栗原祥光 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
D1グランプリオフィシャルサイト
http://www.d1gp.co.jp/

[ガズー編集部]

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