オカムラ「いすの博物館」を訪ねて考える、自動車のシートの座り方とこれから

クルマに乗る時に欠かせないシート。「運転する時はきちんとした姿勢で座りましょう」とは言いますが、果たして私たちが考えている座り方は本当に正しいのでしょうか?

そこで、改めて運転姿勢を考えるため、東京都千代田区にある「オカムラいすの博物館」を訪ねてみました。

オカムラとクルマの関係は?

「オカムラいすの博物館」は、オフィス家具の老舗企業である株式会社オカムラ(旧名:岡村製作所)が2009年に開設した博物館。オフィスチェアの歴史やテクノロジー、人間工学、生産技術、そして同社が生み出してきた椅子の数々を見ることができます。

一見すると、オカムラとクルマとは関係がないように思えますが、この博物館の1階には、クラシックなスポーツクーペ「ミカサ ツーリング」が展示されています。

今でこそオフィス家具で名を知られるオカムラですが、かつては航空機や自動車の研究開発を進め、製造・販売をしていた時代がありました。この「ミカサ ツーリング」も、1950年代の国産自動車の黎明期に自動車メーカーを目指していた当時に作られたもの。ごく少数が生産されたうちの、現存する貴重な1台です。

なおミカサツーリングは、国産初のトルクコンバータ式オートマチックを搭載したクルマでもあり、2015年にはその技術が、一般社団法人 日本機械学会により「機械遺産」に認定されています。

体験して初めてわかる座り方の癖

「いすの博物館」の特徴のひとつが、実際に座って個人個人の体格に合った座り方を体験することができる椅子選びのためのシミュレータです。博物館の担当である石井順二郎氏に操作と解説をしていただきながらこのシミュレータを体験してみました。

「オカムラ・エルゴノミック・シーティング・シミュレータは、座った人の姿勢を検知し、体圧の分布状態によって最適な座り方を知ることができます。間違った座り方をしていないか? 最適な座り方は? 自分に合った椅子はどんなものか? といったことがわかります。同時に、利き足、体のズレなどもわかるので、どのような調整をすればきちんと座れるのかを導き出せます」(石井さん)

実際にシミュレータを試してみると、圧力センサーにより体圧が検知され、負担の少ない座り方や姿勢になるよう担当の方が調整してくれました。15分ほどで、リラックスした座り方や集中できる座り方など、さまざまな姿勢を体験することができます。

これらを実感した上でご自身のクルマのシートを調整すれば、乗り味や疲労度が変わってくるのではないでしょうか。

オフィスチェアに見るカーシートの未来

自動車の運転には緊張感が伴います。しかし、同時に疲労の軽減もまた必要であり、緊張感とリラックスという相反する要素が要求されるのです。これから自動運転が本格的に導入されてくれば、座る時の姿勢やシートの形状などの事情も変わるのかもしれません。

かつて、フランスのシトロエン2CVが世の中に登場した時には、その座席はパイプフレームにゴムを掛けて上からクッションを被せたものでした。石井さんによると、オフィスでは、通気性がよく座り心地もいいメッシュタイプも多く使われているそうですが、もしかすると自動車のシートもオフィスチェアのような素材やデザインになっていくのかもしれませんね。

(取材・文・写真:きもだこよし 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
オカムラ「いすの博物館」
http://www.okamura.co.jp/company/museum/index.html

[ガズー編集部]

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