エンジンの仕組みも遊びながら学べる。生まれ変わったヤンマーミュージアム
琵琶湖のほとり滋賀県長浜市。長浜駅からの古い町並みを抜けると、最先端デザインのボートが堂々と据えられた巨大な建物が現れます。
- 情緒ある町並み。この先に……
- こつ然と現れるモダンなスタイルのプレジャーボート。工業デザイナーの奥山清行さんがデザイン
2019年10月5日、ヤンマーミュージアムが大幅にリニューアルして再オープン。ヤンマー株式会社広報グループの古本舞唯さんのご案内で、施設を体験してきました。
この施設はもともと、2013年にヤンマー100周年記念事業の一環として、創業者・山岡孫吉の出身地である滋賀県長浜市に開設。地域に根差して事業展開してきた会社として、100年にわたる会社の歴史を紹介する博物館として建てられたそうです。
2018年から1年かけて行ったリニューアル工事の末、新コンセプト「やってみよう! わくわく未来チャレンジ」のもと、子どもたちのチャレンジ精神を引き出すための工夫を凝らした施設へと生まれ変わりました。
1年かけて生まれ変わったチャレンジのためのミュージアム
創業者の山岡孫吉氏は、現在の長浜市の農家に生まれました。自ら大阪に丁稚奉公に行くところから始めて、世界で初めてのディーゼルエンジンの小型実用化に成功するという偉業を達成。そこから、ヤンマーは農業機械、船舶、建設機械、さらには食づくりなどさまざまな分野へと広がっていきました。
「子どもたちに孫吉の『自ら動き出す』、『あきらめずに工夫する』というチャレンジスピリッツを伝え、実践してもらうためのコンテンツづくりを目指しました。クリエイティブディレクターの佐藤可士和(さとうかしわ)さんを総合ディレクターに迎え、子どもたちが楽しく、チャレンジできるような工夫をたくさん盛り込んでいます」(古本さん、以下同)
大地・海・都市……ヤンマーが手がける分野を舞台に体を動かし体験して学ぶ
ミュージアムに入ると、まずは「わくわく! チャレンジシアター」からスタート。60年間愛され続けるヤンマーのキャラクター、ヤン坊マー坊のナビゲートで、山岡孫吉のチャレンジ精神が紹介されます。
- 紹介のナレーションは「名探偵コナン」の工藤新一や「らんま1/2」の早乙女乱馬、「ONE PIECE」のウソップなどをつとめ、長浜市の声の観光大使でもある声優の山口勝平さん
- ヤン坊マー坊は今年誕生60周年。時代とともに少しずつ変化してきた2人も8代目となった今回は初の3D仕様に
- 「さあ、ここからは皆さん一人一人が主役です!」ナレーションにあわせて扉が開き、目の前にミュージアムの全貌が広がる
「ヤンマーと言えば、農業機械のイメージが強いかと思うのですが、もともとはエンジンから始まった会社です。小型化したディーゼルエンジンを農業機械に積み、陸用に作られたエンジンを今度は船舶用に開発して漁船に搭載。そこから船舶自体も作るようになります。また、発電機の動力としても使われるようになり、都市にエネルギーを供給するようにもなるわけです。と、いうことで、ヤンマーが活躍するフィールドである、大地―LANDエリア、海―SEAエリア、都市―CITYエリアに分けて体験をしていただきます」
一人一人にカードを手渡され、最初に名前を登録。各コンテンツを体験することで、カードにポイントがたまっていきます。
「最後にポイントを集計して、その日、館内で遊んだ人たちの中で自分が何位だったかがわかるんです。自分の館内でのチャレンジを数値化することで、子どもたちの向上心をくすぐる仕掛けになっています」
子どもと一緒に学びたい! エンジンについて体感できるLANDエリア
LANDエリアでは、ディーゼルエンジンの中がどうなっているのかを知ることができる「リズムエンジン」というコンテンツが登場します。ディーゼルエンジンの<空気を取り入れて、圧縮・爆発・燃焼し、排気をすることでエネルギーを生み出す>という仕組みを、手と体の動きで体感して学習するというものです。
- 手の動きをセンサーが読み取り、上手にディーゼルエンジンを動かすことができるとポイントをたくさんもらえる
「リニューアル前に、『ディーゼルエンジンがどうやって動くか展示を前に口で説明しても、ポカーンとしてる子が多いんや』という職員の声があり、機械の説明などの前にもっと単純にわかりやすくした方がいいのでは? ということで試行錯誤してこういう形のものになりました。やはり文字や説明よりも体を使ってエネルギーを作るように覚えてもらおうと考えています」
館内の中央には、トラクターのコンセプトモデル「YT01」も展示されています。工業デザイナー奥山清行さんのデザインです。
「外見のデザインのカッコよさはもちろんですが、内部の機能性にもこだわっています。農業に携わる方にとってはトラクターの中が仕事場なわけです。繁忙期であれば長時間ずっとこの中で過ごされるのですから、快適に、しかも長時間座っていても疲れにくいシートであったり、レバーの配置であったり、そういったことを考えて実用化に活かしています」
シャープなデザインで、すごくスピードが出そうなトラクターに見えます。実際のスピードはどれくらいでるのでしょうか!?
「速そうに見えても、速くはありません。トラクターの最高時速は30㎞ほどですから(笑)」
小型建設機械とエネルギーのあり方を目で見える形で。CITYエリア
- エネルギーによって街が明るくなるというのを体感する『サステナブルエナジークライミング』
CITYエリアで、ひと際目を引くのは高さ6mのボルダリング施設「サステナブルエナジークライミング」ですが、働くクルマ好きにオススメなのは本物のパワーショベルを操作できる「ざくざく! パワーショベルチャレンジ」です!
こちらは、実際に販売されているミニショベルを操作できるというもの。レバーの操作も機械の動きも街で活躍する本物と全く同じです。
- 難しい操作。すぐには使いこなせない!
「後方の部分が丸くなっているのがわかりますか? これは後方超小旋回と言って、1993年ごろエンジンルーム内の配置やバランスを工夫してヤンマーが開発した形です」
後方超小旋回が開発されるまでは、角型で狭い路地では建物などにぶつかりそうになって動きにくかったり、壁と機械の間に人が挟まれるという事故が多かったのだそうです。
「今では小型の建設機械は、ほぼこの丸い形になっていると思います。ヤンマーは小さくするのが得意なんです!」
また、海に関するコンテンツが楽しめるSEAエリアでは、プレジャーボートの体験のほか、30年ほど前から取り組んでいる養殖について知ることができました。
- 目の前には波間をジャンプするような迫力のボートが
- 遊びの中で魚の養殖について知ることができる仕掛け
「ヤンマーでは養殖の技術を研究する水産研究所で二枚貝の稚貝の養殖や魚を生きたまま届ける活魚水槽の開発なども行っています。このゲームを体験した女の子が『魚って網で獲るんだー』と言っていて、このようなコンテンツで少しでも子どもたちの知識を増やしていけるのでは……と思っています」
他にも、発電機のエンジンのメンテナンスのためにヤンマーの社員の方も派遣されているという南極に関するクイズなどに挑戦できる「チャレンジ+」やヤンマーアンバサダーであるサッカー日本代表の乾貴士選手からのパスを受けてシュートを狙う「フットボールチャレンジ」なども用意されていました。
- 乾選手のパス動画はスペインまで出向いて撮影されたとのこと
2階にはヤンマーの歴史とビオトープ、足湯まで
2階に上がると、ヤンマーのこれまでの歴史を知ることができる展示エリアがあり、世界初の小型ディーゼルエンジン「HB型」をはじめとする、さまざまなエンジンを見ることができます。
- エンジン好きにはときめく展示!
屋外には琵琶湖の自然を再現したビオトープが広がり、館内で使われる電気を発電する時に出た熱を利用した足湯「おにやんまの湯」も。さらに1階には、滋賀県産のお米で作ったおにぎりや滋賀県の郷土料理などが味わえる「プレミアムマルシェ BIWAKO」や、ここでしか手に入れることのできないオリジナルグッズがそろう「ヤンマーミュージアムショップ」で思い出の品を買うこともできます。
ヤンマーミュージアムは、体験型コンテンツをしっかり楽しんでもらうために基本的に予約優先制となっています。長浜市を訪れる際には、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。
(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
<取材協力>
ヤンマー株式会社
https://www.yanmar.com/jp/
ヤンマーミュージアム
https://www.yanmar.com/jp/museum/
[ガズー編集部]
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