“スープラの次に加速が速いトヨタ車”も登場。LAオートショーでデビューした注目の日本車
ディズニーランドやユニバーサルスタジオといった人気のテーマパークもあって、日本人にもなじみ深いアメリカ西海岸の都市ロサンゼルス(LA)。そんなロサンゼルスで11月22日から開催されたのが「LAオートショー」と呼ばれるモーターショーです。
ロサンゼルスが属するカリフォルニア州は全米の中でも日本車が多く支持されている場所なだけに、モーターショーには日本の自動車メーカーが多く参加。興味深いニューモデルも披露されました。今日は、会場でお披露目された注目の日本車を紹介しましょう。
優れた環境性能とともに、鋭い加速が自慢のRAV4プラグインハイブリッド
一般的なハイブリッドカーよりも大容量のバッテリーを積み、そのバッテリーに家や公共の充電器からケーブルを接続して充電できるシステムを搭載しているハイブリッドカーが「プラグインハイブリッドカー」。たとえばトヨタはプリウスのプラグインハイブリッド仕様である「プリウスPHV」を市販しています。
そんなプラグインハイブリッドカーのニューモデルとして初公開されたのが「RAV4プライム」。注目はなんといっても、新たに開発された全く新しいプラグインハイブリッドシステムです。エンジンをかけずにバッテリーだけで走行可能なEV航続距離は北米の計測モードにおいて約62km、バッテリーを充電した状態から計測するPHVモード燃費は90MPGe(約38.3km/L)という優れた数値。環境性能を重視するカリフォルニアの人たちからも大きく注目されることでしょう。
しかし、環境性能だけじゃないというのがこのクルマの自慢。
大容量バッテリーの余裕を活かす大容量モーター(通常のRAV4ハイブリッドよりも高出力)を組み合わせたので、加速が鋭いのです。停止状態から96km/hまでの加速は5.8秒と、RAV4ハイブリッドより2秒の短縮しているのだから凄くないですか? 北米トヨタの副社長であるジャック・ホリス氏によるとこの加速は「(北米で販売している)トヨタ車のなかではスープラの次に速い」とのこと。ビックリです。
プラグインハイブリッドカーは実用性の高さから次世代エコカーの本命のひとつとされていますが、単に燃費がいいというだけではなかなか選んでもらえません。そこで燃費に加えて“速さ”というエクストラを備え、力強い加速が好きな人たちにも積極的に選んでもらおうというわけですね。
外観は、普通のRAV4が樹脂素地としている車体下部やタイヤを囲む部品に塗装を施したグロスブラック仕上げとすることで高級感が増しています。日本でも2020年夏から販売される予定で、名前は「RAV4プラグインハイブリッド」になりそうです。
ハイブリッドモデルが選べるようになった、ホンダCR-V
ホンダの注目モデルは、マイナーチェンジを受けたモデルが公開されたCR-V。フロントグリルやバンパーの形状が変わって、顔つきが力強くなりましたね。
でも実は、最大のトピックはパワートレイン。これまで北米ではガソリンエンジンしか選べなかったのですが、新型はハイブリッドも選べるようになったのです。これまで、北米のSUV市場ではハイブリッド車が多くありませんでした。「パワーのあるガソリンエンジンこそSUVの醍醐味」と考える消費者が多かったからです。
しかし、このところの環境意識の高まりでSUVにもハイブリッドカーの波が押し寄せそうな気配ですね。ところでこのデザイン、追って日本仕様にも採用されるのでしょうか。気になるところです。
コンパクトセダンの日産セントラが新型にフルモデルチェンジ
アメリカではSUV人気に押されてセダンが不調……とはいうものの、道路を見渡すとまだまだ日本よりもセダン比率が高いことに気が付きます。
そんななか、日産がLAオートショーで初公開したニューモデルが「セントラ」。シャープなデザインがカッコイイですね。しかも若々しい。アメリカではセダンにスポーティな雰囲気が求められ、そのニーズをしっかりと反映しているというわけです。
このセントラ、北米で展開する日産のセダンの中ではもっとも小さな車体です。「あれ、どこかで見たような気が……」とピンと来た人は鋭い。実は中国で「シルフィ」として販売しているモデルの北米仕様でした。日本で売っているシルフィよりも1世代進んでいて、プラットフォームも新設計された最新タイプ。北米では比較的若い層から支持を得ています。
息をのむような美しさ、レクサスLCのオープンモデル
カリフォルニアといえば、海沿いの道をオープンカーでドライブというイメージはありませんか? 実際に現地へ行ってみると、屋根を開けて走っているオープンカーをよく見かけます。日本と違って気候がオープンカーに適しているんですよね。湿気が少なくカラッとしているから、少しくらい気温が高くても風が爽快なのです。
LAオートショーで市販モデルが公開された「レクサスLCコンバーチブル」は、まさにアメリカ西海岸でドライブしたくなるラグジュアリーオープンカー。みてください、このエレガントなスタイル。息をのむような美しさです。
レクサスのフラッグシップクーペをベースとしたオープンモデルだけにターゲットは富裕層ですが、高級住宅街として知られるビバリーヒルズに行ってみるとレクサスの人気がけっこう高いことに気が付きます。そんな人たちにとっては、待望のレクサスのオープンモデルといえそうですね。
発売は2020年夏。日本でも販売するそうです。
これ市販しちゃうの!? 大迫力のデザインを身にまとったマツダ3
アバンギャルドなデザインが話題のマツダの主力モデル「マツダ3」。モーターショー会場ではレーシング仕様にモデファイされた車両が初披露されました。エンジンはターボ付きで350psもあります。とんでもないハイパワーですね。
しかもマツダはなんとこのクルマを市販するのだというから驚き。本気ですか!?
といっても、実は市販レーシングカーとしてレースに参戦する人に向けた販売で、TCRという国際的なツーリングカーレースに出場できる規格で作られています。もちろんナンバーを取得して公道を走ることもできません。
ただ、こういうイメージの市販スポーツモデルを開発してくれたらうれしいですよね。
日本では発表済みだけど、北米でも正式公開された次期MIRAI
秋の東京モーターショーで世界初公開されたトヨタ「MIRAI(ミライ)」の新型が、アメリカでも正式デビューしました。2021年モデルとして、2020年末から販売される予定です。
MIRAIといえば、水素でおこした電気を使って走る燃料電池車。現行モデルは、ロサンゼルスでも走っているのをときどき見かけます。
カリフォルニアの富裕層にとっては、電気自動車など環境にやさしいイメージのクルマを所有するのがひとつのステータス。ボディサイズが大きくなって車格も上がった次期型は、テスラの上級モデルを好むような層にもこれまで以上にアピールしていくようですね。アグレッシブになったデザインも、そんな狙いを聞けば納得です。
エコカーが求められるけれど、エコだけじゃ人気者になれない
こうしてLAオートショーでデビューした新型車をみていると、やはり全体的にはハイブリッドや燃料電池などエコロジー方向にシフトしていることを実感します。
しかし、どうやらそれだけでは足りない様子。RAV4プラグインハイブリッドのような「速さ」とか、MIRAIのように「自慢したくなるような新しい雰囲気」といったプラスαがないと存在感を示せないのだということを実感しました。
そのいっぽう、LCコンバーチブルのようなエコでも何でもないけど心を揺さぶるクルマも根強い人気。ショー会場を見回すと、大パワーのクルマもたくさん置いてありました。エコ方向へシフトだけど、そうじゃないのもクールなら受け入れるという懐の広い自動車文化がアメリカらしいかな、とモーターショー会場を歩きながら思いましたね。
(文:工藤貴宏 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
[ガズー編集部]
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