神社とは違う? 高幡不動尊金剛寺に「クルマのお祓い」の意味を聞いた

新たな年を迎えた際、あるいは新たに購入した際、無事故を願って行うクルマのお祓い。このお正月に愛車のお祓いをした人もいるのではないでしょうか?

以前、「武蔵総社 大國魂神社(むさしのくにそうじゃ おおくにたまじんじゃ)」に、クルマのお祓いにおける神社や神主さんの役割を教えてもらいました。今回は<お寺編>として、東京都日野市にある「別格本山 高幡不動尊金剛寺(べっかくほんざん たかはたふどうそん こんごうじ)」の信徒部長を務める結城祐純さんに、お寺とお坊さんの役割を教えてもらいました。

不動明王の力で悪しき煩悩を砕き、ドライバーの心から迷いを退ける

まず、お寺で行うクルマのお祓いは、どういった意味を持つのでしょう。

「当寺院で行う交通安全祈願は、ご本尊である不動明王様のお力をいただき、ハンドルを握るドライバーの悪心を祓い、迷うことなく運転してもらうことを目的としています」(結城さん)

大日如来(だいにちにょらい)の化身とされ、五大明王の中心である不動明王。すべての衆生(人)を守る、たくましい身体を持ち、邪な存在を近寄らせない怒りの表情を浮かべています。

結城さんの話によれば、人の煩悩には良い煩悩と悪しき煩悩があり、悪しき煩悩を抱くと心に迷い(心の隙)が生まれ、悪心が出てしまうそうです。たとえば“ながら運転”は、悪いことと知りつつも「ちょっとくらい大丈夫」という悪心が出て、つい、してしまう行為と考えることができます。

結城さんたち「真言宗」のお坊さんが行う交通安全祈願は、「不動明王御真言」を唱えて不動明王の力をいただき、ドライバーの悪しき煩悩を砕いて心の迷いを退けることにあります。

高幡不動尊金剛寺で交通安全祈願を始めたのは、いつくらいから?

高幡不動尊金剛寺で交通安全祈願を始めた経緯や時期は、記録が残っていないため詳しくは分からないそう。しかし、その想いは今も当時も変わりません。

「戦後から高度成長期にかけてクルマが普及し、これに伴って交通事故も増えました。被害者に加害者、その縁者と、多くの苦しむ人や悲しむ人が、救いを求めて当寺院に訪れたそうです。彼らに寄りそうことは、私たち僧侶の務めです。不動明王様による救いの手をさしのべるため、交通安全祈願を始めたのだと推測します」(結城さん)

関東三大不動のひとつに数えられる高幡不動尊金剛寺。その御利益から、いつの頃からか「交通安全の本山」と呼ばれるようになり、現在では年間で3万台ものクルマに祈願を行っているそうです。

交通安全祈願を受けるには?

高幡不動尊金剛寺では毎日、交通安全祈願を行っており、事前の予約なしに受けることができます。受付時間は午前9時から午後4時30分までで、混み方にもよりますが、およそ30分おきに実施しています。

「交通安全祈願を希望される方は、まず『交通安全祈願受付所』で受付を行い、祈祷時間の10分前にまでに、クルマで『交通安全祈願殿(降魔殿)』前に移動していただきます。クルマに憑いた邪気も祓うため、ドライバーだけでなくクルマも祈祷を受けていただきます」(結城さん)

交通安全祈願終了後、ドライバーには交通安全の木札が、クルマにはステッカーが授けられます。もっと強い霊験を求めたい人は、不動明王の智恵を象徴する火で煩悩を焼き尽くす「護摩修行」を受けることもできるそうです(別途の申し込みと祈祷料が必要)。

今回、うかがったお話は、高幡不動尊金剛寺の場合です。同じ仏教のお寺であっても、それぞれの宗派や、寺院がいただくご本尊により、お祓いの意味するところは異なります。

普段は落ち着いているのに、クルマに乗るとイライラしやすい人や性格が変わってしまう人は、心に迷いがあるのかもしれません。交通安全祈願を受け、お不動様に救いを求めてみてはいかがでしょうか?

(取材・文・写真:糸井賢一 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
高幡不動尊金剛寺
https://www.takahatafudoson.or.jp/

[ガズー編集部]

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