まずは脱出! 命を守る行動を。冬の踏切事故を防ぐために
踏切事故は運転に注意することでおおかた防ぐことができます。しかし、細心の注意をしていても、万が一踏切に閉じ込められてしまったら……冬に踏切付近で特に気をつけたいこと、踏切に閉じ込められてしまった時の対処法などをJR北海道鉄道事業本部安全推進部 髙橋祐司さん、湊篤史さんに聞きました。
冬は特に気をつけたい……踏切を渡る時には?
――冬に踏切でのスリップによる事故が多くなるとのことですが、まずは何に気をつけるとよいでしょうか。
踏切を渡る時は、雪がない時期も同じなのですが、踏切手前で一旦停止を行い、列車が来ていないか左右を確認し、安全を確かめてから踏切に進入します。
――教習所でやりましたね。
そうですね。特に冬はこの安全確認のために、踏切手前での一旦停止を確実に行うことが重要なのです。夏場の感覚でギリギリにブレーキをかけるとスリップして止まり切れず、踏切内に侵入してしまい、そこに列車が……ということになりかねません。「とにかく早めにブレーキをかけて、スピードを落としてください」と呼びかけています。
もし、踏切に閉じ込められてしまったら、まずは脱出!
――万が一踏切内に閉じ込められてしまったらどうしたらよいですか?
第一に、踏切内から脱出することです。
まず、クルマを動かせる状態の場合は、クルマの前部で遮断かん(遮断機の竿のこと)をゆっくり押してやると、遮断かんは斜めにググっと押し上がっていきますのでそのまま踏切の外へ出ます。でも、もう列車が迫っていて時間がないというのであれば、クルマで勢いよく遮断かんにぶつかって折ってでも踏切の外に出てください。
――遮断かんを折ってしまってもいいのですか?
かまいません。列車とクルマが衝突してしまうよりはずっといいです。
ただ、折れてしまった遮断かんをそのままにしておくと、次の列車が来た時、正常に踏切を遮断することができなくなってしまいます。折れてしまった場合は、警報機に設置している看板の連絡先へ電話をしてください。
- 遮断かんをゆっくりと押し上げるように出る
――クルマが動かせない状態の場合はどうしたら?
エンストや脱輪でクルマが動かせない時は、クルマから降りて一刻も早く人だけでも踏切から出てください。
そして、警報機にある非常ボタンを押してください。列車側に向けて特殊な信号が点滅して乗務員に危険を知らせます。その信号を見て乗務員がブレーキをかけて列車を止めます。
- 押し込んだ時「コトン」とはまるような感触がある
ただ、非常ボタンは100%設置されているものではないため、非常ボタンがない場合は、クルマに備え付けられている発煙筒を焚くなど列車に向けて危険を知らせてください。
――列車からはどのくらいの距離まで信号は見えるのですか?
列車から信号が見える距離は、地形など周辺状況の違いがあるので踏切によって異なります。ですから、一概には言えませんが、信号自体は800m先から見える性能のものを使用しています。
- 強烈に光る信号は、列車が来る方へ向けて点滅する
――非常ボタンを押したあとはどのようにすれば?
一度作動した信号は現地に係員が行かないと止めることができません。警報機に設置している看板に連絡先の電話番号が書いてありますので、そこに電話していただき、看板に書いてある駅名や踏切の名前などを伝えてください。その後は、電話に出た係員の指示に従ってください。
スリップだけじゃない。冬型の踏切まわりの危険
――スリップによって踏切内に閉じ込められる以外に、冬に特に気をつけたいことはありますか?
きちんと安全確認をして踏切に入っても、道路部分から脱輪をして動けなくなるということがあります。この場合は警報機が鳴る鳴らないに関わらず、非常ボタンを押してください。運行を管理する係員が信号機を赤にするなどして、列車の乗務員に知らせます。
また、吹雪や夜間の見通しが悪い時に道路と間違えて線路に入ってしまい、線路上をクルマが走ってしまったということもたびたび起こります。
ためらわずに非常ボタンを押して!
――とにかく、「踏切周辺で危険を感じたら非常ボタンを押す」ということを心がけるといいのですね。
はい。列車の速度にもよりますが、踏切はカンカンカンと警報機が鳴って遮断かんが下に下りるまで約15秒、下り切ってから早い時には約15秒後に列車が来ます。ですから、アクシデントが起きた時の行動は一刻を争います。命に関わります。
それから、恐らく閉じ込められたドライバーはパニックを起こしてしまうことが多いでしょうから、対向車や周囲の歩行者がそのような現場に出会ったら、ためらわず非常ボタンを押してくれるようお願いしたいです。そうしてくれると、私たちとしても非常にありがたいです。
- JR北海道では季節ごとに踏切事故防止キャンペーンを展開している
危険な目に遭わないに越したことはありませんが、万が一の時の対処法を知っておくだけでも、最悪の状況を招かずに済むかもしれません。踏切で何かあったら「脱出と非常ボタン!」としっかり覚えておきたいものです。
<取材協力・画像提供(一部)>
JR北海道
https://www.jrhokkaido.co.jp/index.html
(取材・文:わたなべひろみ 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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