「消防自動車博物館」には大正~昭和に活躍した消防車が勢揃い

千葉県御宿町に「消防自動車博物館」があります。ここは、最新の消防車や消防関連設備……ではなく、大正から昭和時代にかけて活躍した、古い消防車が展示される私設博物館です。館内に展示される消防車の数々をご紹介する前に、開館に至った経緯から説明してきましょう。

1台の消防車購入をきっかけに次々と集まってきた

同館館長の鈴木靖幸様さん(右)、併設の「レトロぶーぶ館」を運営される村石愛二さん(写真:左)
同館館長の鈴木靖幸様さん(右)、併設の「レトロぶーぶ館」を運営される村石愛二さん(写真:左)

館長の鈴木靖幸様さんは幼い頃から消防車が好きで、小学校5年生から消防車の玩具やグッズを集め出したと言います。現在、館内に飾られている3000台以上の玩具は、鈴木さんが当時から集めたものだそうです。

大人になっても消防車への熱が冷めることはなく、1999年、ついに「いすゞ TXG20 化学消防ポンプ自動車」を購入します。

その後、鈴木さんの元には数々の消防車の情報が寄せられ、「これは」と思った車両を購入、あるいは譲渡により入手。住まいの近くに、土地を借りて保管していました。

消防車博物館開設のきっかけとなった「いすゞ TXG20 化学消防ポンプ自動車」
消防車博物館開設のきっかけとなった「いすゞ TXG20 化学消防ポンプ自動車」

千葉県御宿町で鶏卵牧場を営むかたわら、退役列車を展示する「ポッポの丘」を運営していた村石さんは、旧車を展示する「レトロぶーぶ館」を開館するため、鶏舎を改装して屋内施設内を製作。村石さんに声をかけられた鈴木さんも、同施設での「消防自動車博物館」の開館に乗り出します。

2014年に「消防自動車博物館」をオープン。当時は6台だった展示車両も、現在では18台と大幅に増車。一緒に「レトロぶーぶ館」も見学でき、見ごたえのある内容となっています。

時代と共に進化した消防車の変遷

ここからは、館内に展示されている消防車を見ていきましょう。ここでは、時代とともに進化してきた消防車の変遷を見ることができます。

フォード「T型」消防ポンプ自動車

このフォード「T型」が、展示されている消防車の中で、もっとも古い車両。1920年に製造され、消防車として完成した状態で日本に輸入され、使用されていたそうです。

ひとつひとつのパーツが工芸品のように美しく、大量生産されたクルマにはない魅力にあふれています。

フォード消防ポンプ自動車

日本フォードで1936年に製造された消防ポンプ自動車。当時、横浜にフォードの工場があり、この消防車もメイド・イン・ジャパン。右ハンドル仕様です。

トヨタ「KB型」消防ポンプ自動車

戦前はアメリカメーカー車をベースとした消防車が中心でしたが、戦後になると日本メーカーの商用車をベースとした消防車が登場してきます。

剣道の面を彷彿させるグリルが特徴のトヨタ「KB型」は1943年に製造されたもの。当初は東京都で使用され、1963年に茨城県へ移動。1973年まで活躍した後、現役を退いたそうです。

日本造機3輪消防ポンプ自動車

かつて存在した「日本造機株式会社」が1957年に製作した、いわゆるオート3輪です。長野県にある鉄工所が製作した車体に日産製のエンジンを搭載しています。

日産「キャリアー」消防ポンプ自動車

1963年に軍用トラックとして製造されたキャリアー。傷みがひどく、今後のレストアが予定されています。

日産「FS680」消防ポンプ自動車

縦目4灯のヘッドランプが印象的なFS680。1965年に製造され、北海道の消防団にて使用されていました。

トヨタ「FQ型」消防ポンプ自動車

1968年に軍用トラックとして生産された四輪駆動車がベースとなっています。トヨタのベストセラーエンジン「F型(水冷直列6気筒)」を搭載し、125馬力を発揮しました。

トヨタ「FC100」消防ポンプ自動車

トヨタ製ボンネットトラックの最終型となる「FC100」。消防自動車専用に設計された、3.9リットルの「F型」エンジンを搭載しています。

トヨタ「ランドクルーザー(FJ55/FJ56)」消防ポンプ自動車

「ランドクルーザー」に代表される機動力の高い小型の4輪駆動消防ポンプ自動車は、山間部や積雪の多い地域で重宝されました。展示されているFJ55は1971年、FJ56は1978年に製造された車両で、搭載されるエンジンの違いからボンネットの形状が異なります。

いすゞ「TD70E」24m級はしご付き消防ポンプ自動車

小型の消防車だけでなく、大型トラックをベースに作られたはしご車もありました。

展示車は1972年に製造されたもの。24m級のはしご車は、観光温泉のある消防署に多く配備されたそうです。

日産「FG160 サファリ」消防ポンプ自動車

全国各地に配備された小型の4輪駆動消防ポンプ自動車です。展示車は1980年に製造された最初期の車両。「FG160」の「F」は、消防車(ファイヤー)を表します。


そして、「消防自動車博物館」では消防車だけでなく、希少な救急車と絵本から飛び出したレプリカ車両も展示しています。

トヨタ「クラウン FS45V メトロポリタン救急車」

トヨタの2代目「クラウン」をベースとし、「FC100」と同じF型(直列6気筒)エンジンを搭載した特別な仕様になっています。1968年に製造され、日本国内に現存するのは展示車を含めて2台だけだそうです。

じぷた

(画像提供:自動車博物館)
(画像提供:自動車博物館)

1966年に発刊され、現在も長く愛される絵本「しょうぼうじどうしゃ じぷた(福音館書店)」。その主人公「じぷた」を再現したレプリカ車両です。

映画にも多数出演。「レトロぶーぶ館」のクルマたち

「消防自動車博物館」と同じ建物内で催される「レトロぶーぶ館」には、360cc時代の軽自動車を始めとした、昭和のクルマが並びます。昭和を舞台にした映画に登場したクルマも多いそう。

2020年で開館から6周年を迎える「消防自動車博物館」。消防車というひとつのテーマに絞られた博物館だけに、その歴史の変遷がよくわかりました。消防車好きや旧車好きはもちろん、お子さんたちも楽しめそうです。

■消防自動車博物館
住所:千葉県夷隅郡御宿町実谷437
開館時間:10時~16時
休館日:平日(予約すれば入館可能)
入館料は:中学生以上500円。
URL:http://keiranbokujo.com/company.html

(取材・文・写真:糸井賢一 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
消防自動車博物館Twitter
https://twitter.com/firemuseum

[ガズー編集部]

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