マツダとスズキが100周年!その他のメーカーの100年前は?

現在のスズキの前身にあたる鈴木式織機製作所(写真:スズキ)
現在のスズキの前身にあたる鈴木式織機製作所(写真:スズキ)

2020年、マツダとスズキが創立100周年を迎えました。ちなみに、輸入車販売で知られるヤナセも会社組織となったのが1920年。こちらも同じく100周年となります。では、100年前の自動車を取り巻く状況はどのようなものだったのでしょうか? また、今ある自動車メーカーは当時、どうしていたのでしょうか? 今回は100年前の日本と世界の様子を説明していきます。

1920年代は「大正デモクラシー」の時代

1920年を和暦でいうと、大正9年となります。時代背景でいえば、1918年に第一次世界大戦が終わって日本は戦勝国となり、大正デモクラシーや大正ロマンと呼ばれる自由主義的な雰囲気が漂った時期です。漫画『はいからさんが通る』や『サクラ大戦』シリーズ、『鬼滅の刃』など、大正時代を舞台にした作品も数多くあり、そうした作品に目を通せば、少しは当時の雰囲気がわかるかもしれません。西洋から流入したモダンなものを日本人が徐々に消化してきた時代と言えるでしょう。

自動車が普及した欧米に対して、まだまだの日本

では、大正時代の自動車はどのような存在だったのでしょうか? ダイムラーとベンツがガソリン自動車を発明したのが1886年(明治19年)のこと。その後、欧州ではプジョー、オペル、フィアット、アルファロメオ、BMWなどといった、今に続く多くの自動車メーカーがクルマの生産を開始します。

世界で最初の実用的なガソリン自動車となる、カールベンツのモトールヴァーゲン(写真:鈴木ケンイチ)
世界で最初の実用的なガソリン自動車となる、カールベンツのモトールヴァーゲン(写真:鈴木ケンイチ)

アメリカでも、シボレーやキャデラック、ダッジ、フォードといったメーカーが誕生。フォードは早くも大量生産方式をスタートさせ、1908年(明治41年)には歴史的大ヒットとなる「T型フォード」の発売を開始していました。1920年代の欧米では、すでにクルマは普通の人も手に入るような存在となりつつあったのです。

フォードが大量生産をしたT型フォード(1914年、写真:トヨタ自動車)
フォードが大量生産をしたT型フォード(1914年、写真:トヨタ自動車)

一方、当時の日本において自動車は、まだまだめずらしい存在でした。1904年(明治37年)に国産初の蒸気乗合自動車が作られ、1907年(明治40年)に「タクリー号」と呼ばれる国産初のガソリン車が作られたりもしましたが、ほとんどが手作りで量産メーカーと呼ばれるような大きな存在はありません。

大正のころには、ようやく「快進社(のちのダット自動車)」や「石川島造船」「東京瓦斯電気工業」などが、少しずつ国産のクルマを作るようになります。三菱も「三菱造船」が「三菱A型」を1917年(大正6年)に製作していました。しかし、そもそも自動車のニーズがほとんどないだけでなく、国産車は輸入車に比べると、性能面でも価格面でも負けることが多く、ビジネスとしては厳しい状況でした。

逆に、性能の良い輸入車を販売するヤナセのビジネスは順調そのもの。それまで個人経営だったものを1920年(大正9年)に法人化としています。

他業種として創立したマツダとスズキ

そんな1920年(大正9年)の1月にマツダが創立しました。当時の名称は「東洋コルク工業株式会社」です。名称の通りにクルマではなく、コルクを作る会社でした。

同じく、スズキは1920年(大正9年)3月に、「鈴木式織機株式会社」として法人を設立。ただし、法人格になる10年以上も前の1909年(明治42年)10月に「鈴木式織機製作所」が開設されており、この時代も入れると、すでにスズキは111年もの歴史を歩んできたことになります。また、名称からわかるように、スズキも本業は織機メーカーです。

1920年(大正9年)に創立した当時の「東洋コルク工業」の工場の様子(写真:マツダ)
1920年(大正9年)に創立した当時の「東洋コルク工業」の工場の様子(写真:マツダ)

では、1920年当時のトヨタは何をしていたかといえば、やはり織機や紡織が本業。第一次世界大戦による好景気もあったため、こちらも事業は順調と言っていい状況です。ちなみに、スバルは、まだ中島飛行機になる前の「飛行機研究所」。ホンダは、戦後の創立なので、まだ影も形もありません。ダイハツは、国産エンジン開発を目的に大学の研究者が中心になり、「発動機製造株式会社」として1907年(明治40年)に創立していましたが、自動車ではなく、主に発動機(エンジン)を作っていました。

豊田佐吉が1896年に発明した、日本初の動力織機「豊田式汽力織機(木鉄混製動力織機)」(写真:トヨタ自動車)
豊田佐吉が1896年に発明した、日本初の動力織機「豊田式汽力織機(木鉄混製動力織機)」(写真:トヨタ自動車)

つまり、今から100年前は、まだ自動車が珍しく、わずかながらあった国産メーカーも黎明期で苦労中。トヨタをはじめ、マツダ、スズキなどは、ほかの業種が本業です。日本の自動車産業は、まだまだ夜明け前といった状況でした。

日本を揺るがせた大事件がクルマ身近なものにした

そんな大正時代の後期となる1923年(大正12年)9月、日本を大いに揺るがす大事件が発生します。それは関東大震災です。マグニチュード7.9と推定される巨大地震は、南関東から東海地域にかける広範囲な地域に被害を及ぼし、死者10万人以上だけでなく、道路や鉄道などのライフラインに甚大な被害を与えました。これにより、注目を集めたのが自動車です。鉄道の代わりとして、大量のバスやトラックが輸入されたのです。

そんな状況を見て、アメリカのフォードは、1925年(大正14年)に日本市場に参入。横浜子安に工場を建てて、ノックダウン生産を開始します。GM(ゼネラルモーターズ)も1928年(昭和3年)から大阪でシボレーの生産をスタート。これらのクルマはタクシーにも使われ、「円タク」という流行語を生むことにもなります。

また、震災で破壊された道路は、新たに作り直されるにあたり、より広く、クルマが走りやすいものに整備されました。皮肉なことですが、大震災によって、日本人はクルマがより身近になったのです。

昭和になって自動車への挑戦がブームに

1930年代になって元号も昭和になると、大正時代にはさっぱりだった自動車産業の状況が一変します。にわかに多くの企業が、自動車生産への挑戦を始めたのです。すでに大正時代に自動車メーカーとして生まれていた快進社は、紆余曲折を経て、日本産業の鮎川義介氏の傘下になり、1933年(昭和8年)12月26日に「自動車製造株式会社」となりました。この会社は翌年に「日産自動車」に名称を変更し、1935年(昭和10年)よりオリジナル・モデルとなるダットサンの量産を開始します。

日産が創業した1933年(昭和8年)に製造されていたダットサン12型フェートン(写真:日産自動車)
日産が創業した1933年(昭和8年)に製造されていたダットサン12型フェートン(写真:日産自動車)

同じく、大正時代からある石川島造船と東京瓦斯電気工業、そして快進社の一部は、1937年(昭和12年)に合併して「東京自動車工業」に。太平洋戦争敗戦後に「いすゞ」となり、今に至ります。ダイハツも1931年(昭和6年)に、オリジナルのダイハツ三輪車第1号車を発売し、自動車メーカーへの道を歩み始めます。

トヨタは1933年(昭和8年)9月に、のちに自動車部となる自動車製作部門を豊田自動織機製作所内に設置して、自動車産業への挑戦を開始。1935(昭和10)年に「G1型トラック」、1936年(昭和11年)に「トヨダAA型乗用車」を発売しました。

1935年(昭和10年)、試作工場での「トヨダ A1型試作乗用車」完成式の様子(写真:トヨタ自動車)
1935年(昭和10年)、試作工場での「トヨダ A1型試作乗用車」完成式の様子(写真:トヨタ自動車)
1936年(昭和11年)より発売開始となった「トヨダAA型」乗用車(写真:トヨタ自動車)
1936年(昭和11年)より発売開始となった「トヨダAA型」乗用車(写真:トヨタ自動車)

マツダ(東洋コルク工業)は、1927年には社名を「東洋工業」へと変更。「コルク」から機械工業、そして自動車メーカーへと路線を変えています。また、スズキも1930年代にはクルマの試作を実施し、織機メーカーからの転換を考えていました。とはいえ、この後、日本は太平洋戦争に突入することになり、マツダもスズキの自動車産業への本格的な挑戦は戦後への持ち越しとなりました。

まだまだ夢の存在であった自動車が、急に現実的な目標となるのが昭和初期。その直前となる100年前の大正時代は、自動車を生産するという夢を抱いていた時期と言えるでしょう。クルマという新しい技術で世の中が変わる。そんな予感の漂う時代だったのではないでしょうか。これも大正ロマンのひとつかもしれませんね。

(取材・文:鈴木ケンイチ 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
トヨタ自動車75年史
https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/index.html

[ガズー編集部]

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