最近、増えている「移動交番」の役割を千葉県警に聞いてみた

ここ数年、ワンボックス車やマイクロバスに交番の機能を備える「移動交番車」を採用する自治体が増えています。2019年10月には石川県警が移動交番を採用。香川県でも2020年4月から試験運用をしています。では、移動交番とはどんな役割を持つクルマなのでしょうか? 千葉県警地域部地域課にお話を聞きました。

移動交番の主な仕事は?

移動交番とは、その名の通り交番の機能を持ったクルマのこと。現在、この移動交番を全国で最も多く所有し、積極的に活用しているのが千葉県警です。現在、千葉県には39の警察署が存在しますが、成田国際空港警察署を除く38署にワンボックスタイプ49台、マイクロバスタイプ11台の、計60台の移動交番が配備されています。なぜここまで多いかというと、現在の千葉県知事である森田健作氏の発案なのだそう。

「平成21年(2009年)に就任した森田知事の政策の一環として、平成22年(2010年)から移動交番の体制が整えられました。交番の役目をする車両自体の発想は昭和の時代からありましたが、各署1~2台という運用規模にしたのは知事の発案以降です」(千葉県警地域部地域課)

実は移動交番の歴史は古く、千葉県警では戦後直後から1980年代まで、団地開設などで人口が急増した地域の交番設置要望に応える目的で運用されていました。それを25年ぶりに復活させたのが、現在の移動交番です。

「移動交番の主な仕事は、交番の設置要望がある地域や人の集まるショッピングセンター、あるいは犯罪多発地域などで警戒活動などをすることです。1台に2名の警官と1名の移動交番相談員がつきます。そのうち1名は、女性職員となるようにしています」(同)

移動交番では、常設されている交番のような各種書類の届け出が可能なほか、住民の相談にも応じます。救命活動をするためのAEDも搭載されているそうです。

あえて「目立つカラーリング」にする理由

また、移動交番で特徴的なのが、あえて目立つカラーリングにペイントにしている点です。これには、防犯上大きな意味があると言います。

「派手なカラーリングは、繁華街や住宅街での『見せる警戒』を重視したもの。大きなイベントや子どもの登下校などに合わせた見守り活動などで、あえて目立つことで防犯を高める効果があります」(同)

さらに、交通安全の指導も移動交番の役目のひとつなのだそう。車内には、防犯講話などを独自に開催するための設備もあります。

「最近では、特に高齢者に対する振り込め詐欺被害防止と交通事故防止を重視しています。そのため、これらの防犯講話などに力を入れて活動しています」(同)

被災者のケアも重要な役割

そのほか、災害派遣などでも活躍しています。2019年9月に台風により発生した水害では、避難地域の住民の安全確保のために出動したそうです。同じく移動交番を持つ宮城県警でも、台風による水害で被災した町のために出動しています。地域住民にとって、災害時や犯罪多発地域に移動交番があることは大きな安心感になります。

「地域の方には『移動交番があるだけで安心感が違う』『いざというときに頼りになる』といったご意見をいただいています。犯罪抑止はもちろんですが、事件や事故、災害が起きた地域で不安を抱える住民のケアも私たちの重要な仕事です」(同)

ちなみに千葉県警では、移動交番の出動時やパトロール活動をするとき、広報音楽『夢をのせて』を流しているそう。近くで移動交番車が活動していること周知してもらえるように、との施策です。移動交番を見かけたら、そのカラーリングや活動に注目してみたいですね。

(取材・文:斎藤雅道 写真:千葉県警地域部地域課 編集:木谷宗義+ノオト)

<関連リンク>
千葉県警察
https://www.police.pref.chiba.jp/index.html

[ガズー編集部]

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