「86」デビューまでのコンセプトカーの変遷をたどる 後編(2011~2012年)

2008年4月、トヨタと富士重工(現スバル)は2011年末の市場投入を目標とした新しい小型FRスポーツ車の共同開発を決定します。そのクルマこそが、現在のトヨタ「86」、スバル「BRZ」です。

その決定から1年半後、2009年の東京モーターショーで最初のコンセプトモデル「FT-86コンセプト」が披露され、翌年の1月には東京オートサロンで早くもカスタマイズモデルの「FT-86 Gスポーツコンセプト」が登場します。どちらもワールドプレミアの地に東京が選ばれました。

……と、ここまでが前編のお話。ここからは、その発表の舞台を海外に移しながら発売に向けて進化を続けてきた、コンセプトカーのデザインの変遷を振り返ってみましょう。

2011年3月:FT-86 II コンセプト

「FT-86 II concept」(2011年3月 ジュネーブモーターショー)
「FT-86 II concept」(2011年3月 ジュネーブモーターショー)

目標とする2011年末の市場導入までに1年を切った2011年の3月、「FT-86 コンセプト」は「FT-86 II コンセプト」へと進化を遂げます。スイス・ジュネーブモーターショーで発表されたこのモデルは、市販化へ向けたデザインスタディと位置付けられ、基本コンセプトを踏襲しながらも、さらにエモーショナルなフォルムへ進化し、同時に空力特性の向上も果たします。

2011年3月:スバル BOXERスポーツカーアーキテクチャ

この2011年のジュネーブモーターショーでは、もう1台の気になるコンセプトカーが登場します。それが、スバルが出展した「BOXERスポーツカーアーキテクチャ」です。こちらはFR車の技術コンセプトモデルと位置付けられ、透明なボディに収まった水平対向エンジンやFRのメカニズム、そして足廻りの構造がひと目でわかる展示となっていました。

「BOXER Sports Car Architecture」(2011年3月 ジュネーブモーターショー)
「BOXER Sports Car Architecture」(2011年3月 ジュネーブモーターショー)

トヨタがFT-86 II コンセプトをデザインスタディと位置付けたのに対し、こちらは技術コンセプトモデルという位置付け。ジュネーブショーで別々のブースに展示された2台のコンセプトカーを見ると、1台のクルマの全体像が見えてくるという共同開発ならではのニクイ演出でした。

2011年9月:FT-86 II コンセプト

「FT-86 II concept」(2011年9月 フランクフルトモーターショー)
「FT-86 II concept」(2011年9月 フランクフルトモーターショー)

春のジュネーブモーターショーで黒いボディをまとったFT-86 II コンセプトは、東京モーターショーを3ヶ月後に控えた2011年9月のドイツ・フランクフルトモーターショーでは、オレンジのボディで登場します。以降、正式なデビューを待たずにサプライズ公開された時も東京での正式デビューの時も、86はオレンジのボディでお披露目されました。スバルのコンセプトカーも「BRZプロローグ BOXERスポーツカーアーキテクチャII」へ進化し、展示の照明はオレンジに。ここで初めてBRZというネーミングが登場しました。

2011年9月:FT86ニュルブルクリンク耐久レース

レースデビューを果たしたFT-86ニュルブルクリンク耐久レース参戦車両
レースデビューを果たしたFT-86ニュルブルクリンク耐久レース参戦車両

フランクフルトショーは9月13日のプレスデーを皮切りに25日まで開催されましたが、閉幕からわずか20日後、同じドイツにあるニュルブルクリンクサーキットでFT-86は市販車の発表を待たずにレースデビューします。こちらはボディのディテールなどを見る限り、のちに発表される市販車と酷似しており、発売が間もないことを予感させるものでした。

2011年12月:東京モーターショーで正式デビュー

2011年の東京モーターショーで正式デビューしたトヨタ「86」
2011年の東京モーターショーで正式デビューしたトヨタ「86」

2009年の東京モーターショーで「FT-86 concept」が登場してから、わずか2年。東京モーターショー開催直前の11月27日に、「86」という正式な車名が発表され(欧州ではGT86)、同日に富士スピードウェイで開催されたTOYOTA GAZOO Racing FESTIVALでも、サプライズプログラムとして先行公開されました。

そして2011年12月、東京モーターショーで、86は正式なデビューを飾ります。会場では公開された86を一目見ようと集まったファンで超満員となり、その関心の高さが伺えたものです。

「86」を一目見ようと集まったファンで会場は超満員
「86」を一目見ようと集まったファンで会場は超満員

9月に走行したレースカーでも確認できてはいたものの、基本的なプロポーションを維持しながらもヘッドライトやウインカー、テールレンズの意匠が大きく変更されてデビューした86のスタイリングは当時、大きな驚きと新鮮さを与えてくれました。またフロントデザインの異なるスバルのBRZも、この東京モーターショーで公開されています。

市販モデルではリアのデザインが大きく変更された
市販モデルではリアのデザインが大きく変更された
同時にお披露目されたスバル「BRZ」はフロントの造形が大きく異なる
同時にお披露目されたスバル「BRZ」はフロントの造形が大きく異なる

アメリカ市場向け:Scion FR-S

86はアメリカではScion(サイオン)ブランドの「FR-S」という車名で発売されました。実は2011年4月のニューヨークショーでは、このFR-Sのコンセプトモデル「FR-S concept」も登場しています。

Scion「FR-S concept」全長4,277mm×全幅1,816mm×全高1,204mm、ホイールベース 2,570mm(写真:トヨタグローバルニュースルーム)
Scion「FR-S concept」全長4,277mm×全幅1,816mm×全高1,204mm、ホイールベース 2,570mm(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

FR-S conceptは、アメリカ市場向けにボリューム感を増し、全高を低く抑えた独自のデザインでしたが、市販車は世界共通のものとなりました。なお、2016年のScionブランド廃止に伴い、現在はアメリカでも日本と同じ86の名で販売されています。

アメリカ向けの86は「Scion FR-S」としてデビュー(写真は2012年LAモーターショー)
アメリカ向けの86は「Scion FR-S」としてデビュー(写真は2012年LAモーターショー)
FR-Sは名前にこそ86とは入っていないが、フロントフェンダーに配されたバッチには86と刻まれていた
FR-Sは名前にこそ86とは入っていないが、フロントフェンダーに配されたバッチには86と刻まれていた

2009年のコンセプトモデル登場時から、基本的なイメージを踏襲しながら短い間にデザインの完成度を高めてきた86。2016年には、デザインの変更も伴うマイナーチェンジを行い、現在に至ります。今なお稀少な国産小型FRスポーツの雄、トヨタ86、そしてスバルBRZのこれからの進化も期待していきたいところです。

こちらが現在の86。フロントは登場時よりノーズ先端を下げグリルの開口部を拡大し、よりワイド&ローな顔つきになっている(写真:トヨタグローバルニュースルーム)
こちらが現在の86。フロントは登場時よりノーズ先端を下げグリルの開口部を拡大し、よりワイド&ローな顔つきになっている(写真:トヨタグローバルニュースルーム)

(取材・文・写真:高橋学 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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