ペットとのドライブ。安全に運転するため注意することは?

行楽に限らず、通院、引越し、被災による移動など、さまざまな事情により、飼い犬や飼い猫をクルマに乗せる機会は訪れます。ペットにストレスを与えず、自分から乗ってくれるようになるにはどうすればいいのでしょう?今回は犬や猫の飼い方やしつけ方など、多くの著書を手がけた「東小金井ペット・クリニック」の青沼陽子院長先生に、正しいペットの乗せ方や訓練の方法、注意点を伺いました。

クルマが苦手な犬も、少しずつ慣らすことで乗ってくれる

クルマに乗る(乗せられる)ことを、犬や猫はどう感じているのでしょうか?

「まずワンちゃんですが、気性や性格によりさまざまです。最初から喜んで乗る子もいれば、嫌がる子もいます。クルマに乗ることに抵抗のない猫ちゃんはごくまれで、ほとんどの子は嫌がりますね」(青沼先生)

なぜ犬や猫はクルマに乗るのを嫌がるのでしょうか?

「ワンちゃんがクルマに乗るのを嫌がる原因は、音や振動の怖さや車内の臭いが苦手、過去にひどい車酔いをした、嫌な場所へと連れて行かれた経験などが挙げられます。猫ちゃんは本質的に警戒心が強くて臆病なので、家から出るだけで強いストレスを受けます。ドライブを楽しめる猫ちゃんは、まずいません」(青沼先生)

これまで獣医として何万匹もの猫を診察してきた青沼先生。ドライブを楽しむ猫は2匹しか聞いたことがないそうです。この2匹は堂々として物怖じしない性格だったようで、そういった猫ならクルマに臆することなく乗れるかもしれません。

クルマが苦手な犬と猫は、訓練次第で乗ることができるようになるのでしょうか?

「大半のワンちゃんは乗れるようになります。無理に乗せると逆効果なので、まず動いていないクルマに乗せ、少しずつ慣らしていきましょう」(青沼先生)

具体的な手順として、まずはエンジンが止まっているクルマのドアを開き、飼い主が呼んで犬を招き入れます。強引に連れ込むことはせず、楽しそうに声をかけて自分から乗ってくれるのを待ちましよう。乗ったら犬を褒めてご褒美をあげるなど、ポジティブな体験をさせてあげます。

問題なく入るようになったら、ドアを閉める。ドアを閉めても怯えないようであれば、エンジンをかける。犬用のシートベルトに繋ぐ、キャリーやケージに入れるなど、少しずつ走行できる状態に近づけます。

車内でもリラックスできるようになったら、いよいよドライブ開始。最初は近場の公園などを目的地とし、到着したら遊ばせて「クルマでのお出かけには楽しいことがある」とイメージを付けます。慣れたら次第に距離、あるいは時間を延ばしますが、ここで注意があるそうです。

「ほとんどのワンちゃんはクルマに酔います。どれくらいの時間で酔うかは、ワンちゃんの体質や環境によるので一概にはいえませんが、少し遠くまでの運転を考えているのなら、車酔い対策をしておきましょう」(青沼先生)

犬の車酔いも人間と同じ。気持ちが悪くなって元気が無くなり、ひどいともどしてしまいます。あらかじめ車内やケージ内にはペットシーツを敷いておき、直前の食事は控えましょう。犬用の酔い止め薬もあるので、可能ならば飲ませておくといいそうです。

(写真:糸井賢一)
(写真:糸井賢一)

「猫ちゃんがクルマに乗れるようになる訓練は、今のところありません。最初に乗れないようであればドライブはあきらめ、クルマでの移動は本当に必要なときだけにとどめましょう」(青沼先生)

犬や猫が車内で自由に動ける状態での運転は、道路交通法違反で罰則の対象に

犬や猫をクルマに乗せる際に注意することや、必要な道具はあるのでしょうか?

「理想は後部座席や荷室にしっかりと固定したケージに入ってもらうことです。最近は犬用のシートベルトや助手席に固定できるキャリー、保護用バッグが売っているので、これらを使用するのもいいと思います。大事なのは運転に影響が出ないようにすることです」(青沼先生)

ドライバーの運転や視野を妨げられる、あるいは妨げる恐れがある状態で走行することは道路交通法で禁止されており、罰則の対象となっています。例えば犬や猫をドライバーの膝に乗せて運転することや、犬や猫が車内で自由に動け、ドライバーの視界を妨げる恐れや足下に潜り込む恐れがある状態での運転が該当します。

それでは、助手席に座る人が小型犬や猫を膝の上に抱いているのもダメなのでしょうか?

「事故に遭った時を考えると、あまりおすすめはできません。それに、乗り降りの際、開いたドアからワンちゃんや猫ちゃんが飛び出してしまうこともあります。見知らぬ土地で隠れてしまったワンちゃんや猫ちゃんを捕獲するのはとても困難です。もし、何らかの事情で助手席に座る人が抱えるのなら、最低限リードを付け、不意の事故でも車外に放り出されないようにしてください」(青沼先生)

 

最後に青沼先生から、犬とのドライブを予定されている皆さんに、特に注意して欲しいことを伺いました。

「長距離を移動する際、SAやPAで休憩を取ると思います。これからの季節、炎天下にさらされたアスファルトは60度を超えることもあるので、ワンちゃんを車外に出すときは手足の火傷や熱中症に注意しましょう。わずかな時間でも、エアコンの停止した車内に放置することは絶対に避けてください」(青沼先生)

「また地方の野山や自然の多い公園で遊ばせたワンちゃんには、ノミやマダニが付着している可能性があります。これらは多くのウィルスや細菌を保有しており、人間も咬まれることで感染します。特にマダニが持つ「重症熱性血小板減少症候群ウィルス(SFTSV)」に感染すると、最悪の場合、死に至ります。かつては人間だけに感染すると考えられていましたが、ワンちゃんや猫ちゃんも発症することが分かってきました。自然の多い場所へ連れて行くのなら、事前にノミやマダニの対策薬を施しておきましょう」(青沼先生)

ノミやマダニの対策薬、そして先に記した車酔いの薬も動物病院で扱っており、診察を受ければ購入することができます。かかりつけの動物病院なら飼い犬の特徴(体重など)を把握しているので、適切な薬を処方してくれるはずです。

ドライブでなくても、緊急時を想定して準備を整えておくことはとても大切なことです。猫は難しいようですが、犬を飼われている方は普段からクルマに慣れさせてはいかがでしょう。

(取材・文:糸井賢一 写真:東小金井ペット・クリニック 編集:奥村みよ+ノオト)

<関連リンク>
東小金井ペット・クリニック
https://pet-clinic.info/

[ガズー編集部]

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