「TRD」のルーツは1950年代にあり!中古車再生から始まった歴史を振り返る

(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)
(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)

トヨタのレース活動には、TRDの存在が欠かせません。スーパーGTなどのマシンの研究開発をはじめ、ラリーやワンメイクレースの運営までを実施するのがTRDです。今回は、そのTRDがどんな歴史を歩んできたのかを会社の歴史もあわせて振り返ります。

誕生は1976年。でも、その前に20年以上の歴史があった

TRDというブランドが生まれたのは、1976年のこと。しかし、そこですべてが始まったわけではありません。源流は、それよりもさらに22年も前となる1954年にまでさかのぼります。それがトヨペット整備株式会社でした。

1954年といえば、純国産技術による本格的乗用車と呼ばれる、トヨペット「クラウン」(1955年発売)が生まれる直前。当時の日本におけるクルマ需要の多くは、タクシーでした。一方で個人所有を望む声も徐々に盛り上がっていたころ。そこで必要とされたのが、手ごろな価格で手に入る中古車です。

しかし、当時のクルマは、まだまだ信頼性に不安があり、メーカーと関連する企業に、中古車をきれいに再生して販売するビジネスが求められました。それに応えるために設立されたのが、トヨペット整備株式会社だったのです。

所在地は東京の芝浦で、設立半年後には、月間30~40台もの中古車を再生。同じ時期の東京トヨペットの月販が180台だったことを考えれば、中古車のニーズがいかに高かったのかが分かります。

1954年に東京・芝浦に設立されたトヨペット整備株式会社が、TRDの源流となった(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)
1954年に東京・芝浦に設立されたトヨペット整備株式会社が、TRDの源流となった(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)

その後、トヨペット整備は販売された車両の整備も行うようになり、1965年には工場を一新。“東洋一の整備工場”と呼ばれるほどの規模となりました。そうした整備のプロフェッショナルが存在するトヨペット整備には、変わった相談が持ち込まれます。それが改造でした。

1955年には、朝日新聞社による「ロンドン~東京5万kmドライブ」のためのトヨペットクラウンの改造が。1956年には、資生堂宣伝車20台の改造。また、1957年には豪州1周ラリーに出場するトヨペットクラウンの改造も行われました。同じ1957年には、トヨペット「マイクロバス」の生産も開始。1959年には、FRP(繊維強化プラスチック)を使ったスポーツカーも試作されました。

1964年に、社名がトヨペット整備株式会社から、株式会社トヨペットサービスセンターに改称。1965年になると、TRDの前身となる特殊開発部が社内に設立され、翌1966年に、かの有名な映画『007は二度死ぬ』に登場するボンドカー、トヨタ「2000GT」を製作。同年、世界新記録を樹立したトヨタ2000GTのスピードトライアル車も製作しています。

1万マイルを平均時速206.18kmで走り抜き、3つの世界記録を更新したトヨタ「2000GT」のスピードトライアル車も製作。写真は、トヨタ博物館が所有するレプリカ(写真:トヨタ自動車、トヨタ博物館)
1万マイルを平均時速206.18kmで走り抜き、3つの世界記録を更新したトヨタ「2000GT」のスピードトライアル車も製作。写真は、トヨタ博物館が所有するレプリカ(写真:トヨタ自動車、トヨタ博物館)

ワンメイクレースの主催に始まり、パーツ販売、コンプリートカーまで

1981年になると、TRDは「スターレット(KP61)」によるレースを企画・開催。ワンメイクレースの先駆けとなります。また、1985年には街中でも使える用品としてTRDクイックシフトを発売。1993年に発売したローハイトスプリングもヒット商品となり、レース活動以外にも、パーツ販売でも大きな存在感を発揮するようになっていきます。1990年に社名が、トヨタテクノクラフト株式会社に変更されました。

1981年にTRDの企画でスタートした「KP61-スターレットレース」。今でいうワンメイクレースの先駆けとなった(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)
1981年にTRDの企画でスタートした「KP61-スターレットレース」。今でいうワンメイクレースの先駆けとなった(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)
1994年に発売されたコンプリートカー「TRD3000GT」(写真右)。本物のレーシングカー(写真左)を彷彿とさせるルックスだ(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)
1994年に発売されたコンプリートカー「TRD3000GT」(写真右)。本物のレーシングカー(写真左)を彷彿とさせるルックスだ(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)

そして1994年に、「スープラ」をベースとしたコンプリートカー「TRD3000GT」と「カローラ」ベースのコンプリートカー「TRD2000」を発売。レース直結の技術で生み出された2台は、大いに注目を集めます。その後もTRDは「カレンTRD Sport」(1995年)、「チェイサーTRD Sport」(1997年)、「ワンメイクレースコンプリートカーAE111」(1997年)、「キャバリエTRD Sport」(1997年)、「TRD2000GT」(1998年)と毎年のようにコンプリートカーを発売。直近では、「86」をベースにした「14R-60」(2014年)が話題となりました。

2014年に発売されたTRDによるコンプリートカー「14R-60」。限定100台の発売だった(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)
2014年に発売されたTRDによるコンプリートカー「14R-60」。限定100台の発売だった(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)

もちろんTRDは、コンプリートカーだけでなくレースフィールドで培った技術を生かしたパーツ類も豊富に発売しています。過酷なアセアンの自然を相手にする「アジアクロスカントリーラリー」への参戦から生まれたハイラックス用のパーツなどは、いかにもTRDらしいものと言えるでしょう。

ハイラックス用のTRDパーツを装着。TRDは、「アジアクロスカントリーラリー」にも技術支援している(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)
ハイラックス用のTRDパーツを装着。TRDは、「アジアクロスカントリーラリー」にも技術支援している(写真:トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)

2018年4月には、ジェータックス、トヨタモデリスタインターナショナルとの3社統合で、株式会社トヨタカスタマイジング&ディベロップメントとなり、新たな一歩を踏み出しました。中古車整備からスタートし、カスタムやレース、パーツ開発により60年を超える歴史を歩んだTRD。その製品の魅力は、こうした歴史が培った高い技術力とノウハウと言えるのではないでしょうか。

<関連リンク>
TRD
https://www.trdparts.jp/
トヨタカスタマイジング&ディベロップメント
https://www.toyota-cd.co.jp/

(取材・文:鈴木ケンイチ 写真:トヨタ自動車、トヨタ博物館、トヨタカスタマイジング&ディベロップメント 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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