3次元データ、誤差は10cm以内-自動運転時代に求められる道路地図とは

現在、愛知県の15市町において自動運転の技術革新を促進するプロジェクトが行われている。今回、プロジェクトと連携して愛知県あま市が実施する「あま市モデル」を取材してきた。あま市モデルの狙いは産官学、つまり民間企業、地方自治体、そして大学や研究機関が連携して自動走行の実証実験を進めていくことだ。

あま市モデルは、愛知県あま市が所有する施設「七宝焼アートヴィレッジ」の駐車場で実施されている。あま市は施設の休館日に駐車場を自動運転のテストコースとして有償で貸し出すことで資源を有効活用でき、企業や研究機関は自動運転のテストコースを確保できる。

今のところ、自動運転車両の公道走行は、事前の届け出や手続きなどが煩雑でハードルが高い。公道外のコースを使って実走行を重ねていくことで、技術開発を促進しているのだ。

取材に訪れた11月18日(金)は、自動走行の体験試乗会が開催されていた。ウェブサイトを通じて参加者を公募し、定員に対して約1.5倍もの応募があったという。

運転席に人が座っているが、ハンドルは自動で動いている

駐車場を一周する自動運転車両の後部座席に座り、自動で動くハンドルを観察する。実際に同乗試乗し、その運転のスムーズさに驚いた。細かい曲がり角も正確にライントレースし、自然なハンドルさばきを披露。まるで運転の上手いドライバーが操るクルマに乗っているかのような感覚だった。

スムーズな走りの要は「次世代地図」にある

このプロジェクトで興味深いのは、産官学の「産」として関わっているのが自動車メーカーではないということだ。参加している民間企業はアイサンテクノロジー株式会社。自動運転を行うにあたって必要な、精密な地図を製作する会社だ。

同社の福山尚久さんに、自動運転時代の道路地図について話を聞いてみた。まず、一般的な道路地図と自動運転用の地図とはどう違うのだろうか。

「カーナビの地図は交差点と道路が単位です。一方、次世代の地図は車線までしっかりデータ化されます。車線単位で、『ここへ行くにはこの車線を通ればいい』としっかりクルマが認識した地図になっています。それが自動運転に求められる地図なのです」

自動運転車両には高度なカメラやセンサーが装着されるので、自車の周囲の状況は把握することができる。しかし、カーブを曲がっているときにその先がどうなっているのかはわからない。そこで、あらかじめ精度の高い地図情報をクルマに与えておくことで、前方のカーブに合わせてブレーキをかけて速度を調整するなどの動作ができるのだ。前方に信号があるとわかれば、そこで停止できるように速度を落とすこともできる。

次世代の地図では、道路の幅やカーブの形状、車線はもちろんのこと、横断歩道、ガードレールや縁石、そして電柱やマンホールまでもデータ化される。

「電柱やガードレールなどの位置のデータがあれば、クルマが走れる範囲がわかります。地図がクルマへ教えてあげることによって、車道からはみ出して歩行者などと接触する事故も防ぐことができるのです」と福山さんは言う。

誤差は最大10cm

次世代地図がこれまでの地図と大きく異なるのが、2次元データではなく3次元データだという点だ。

GPSに日本独自の衛星情報を加え、より精度を高めた「マルチGNSS」で正確に測位し、高精度なカメラやスキャナーを備えた特殊な車両を使って3次元形状として取り込み、データベース化。これにより、位置正確度の最大誤差10cmという極めて正確な地図が作れるようになった。

平面でなく立体として高低差までデータ化することで、上り下りによる速度調整はもちろん、電気自動車やプラグインハイブリッドカーのバッテリー管理にまで地図を活用することができるという。

次世代地図の製作はどう進むのか

「次世代地図のフォーマットは、各自動車メーカーや地図メーカーが協力して製作する方向になっています。フォーマットを統一し、地図メーカーが手分けして全国の道路を次世代地図化しようとしているのです」

これだけ精密な地図を作るのは、技術はもちろん時間もコストもかかる。自動車メーカーや地図メーカーが競合しそれぞれ製作するのではなく、ベースとなる次世代地図のフォーマットを作り、それを各メーカーが自動運転車両に合わせて最適化していく形だ。福山さんによれば、現在はテスト段階だが、次世代地図の高速道路部分の整備が急がれているようだ。

自動運転技術と聞くと、まずセンシングや制御といった車両側の技術をイメージしがちだが、アイサンテクノロジーが開発するような次世代地図も欠かせない。本格的な自動運転社会は、高速道路のデータベース化が完了する数年後から始まるのかもしれない。

(工藤貴宏+ノオト)

[ガズー編集部]

<取材協力>
アイサンテクノロジー株式会社 MMS事業本部3Dソリューション事業部 福山尚久