【WRC】目が離せない!激戦が期待される2019年の世界ラリー選手権 ~気になる4チームの陣容~
2019年1月24日、世界ラリー選手権の2019年シーズンが開幕を迎えます。2018年の最終戦オーストラリアからわずか2カ月。選手たちは短いシーズンオフの間にも精力的にテストを重ね、開幕戦ラリーモンテカルロに向けて準備を進めています。2019年シーズンは6年連続チャンピオンの移籍や9連覇王者の復帰、2018年マニュファクチャラーズチャンピオンのTOYOTA GAZOO Racingにも強力なドライバーが合流するなど、2018年以上に面白く目の離せない展開となること間違いなし! いよいよスタートする2019年シーズンにそなえて、チームごとにその陣容をご紹介していきましょう。
【CITROËN TOTAL WRT】 シトロエン・トタル・ワールドラリーチーム
※写真提供:CITROËN
シトロエン・トタル・ワールドラリーチームは、フランス・ベルサイユに開発拠点をもつ、シトロエンのワークスチームです。シトロエンは長年WRCをはじめとするラリー競技に参戦を続けており、2003年〜2005年まで3年連続、2008年〜2012年まで5年連続、計8回のマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得しています。参戦車両はシトロエンC3 WRC。日本ではお洒落なコンパクトカーとして人気を博している1台ですが、チームを運営するシトロエン・レーシングによって鍛え上げられたラリーカーは迫力満点。ベース車両のデザインを活かしたボディラインと独特のリヤウイングは、他のチームのラリーカーには見られないものとなっています。
チームのエースは、セバスチャン・オジェ/ジュリアン・イングラシアの6年連続世界チャンピオンコンビ。昨年まで在籍したMスポーツ・フォードから、2011年以来となる古巣シトロエンへと戻ってきました。フランス出身のオジェはもともとシトロエン・ジュニアで頭角を表し、ワークスに昇格したドライバー。セバスチャン・ローブのチームメイトとして2010年のWRCラリージャパンで優勝したキャリアも持っています。当代随一ともいえるテクニックと、あらゆる路面で発揮されるスピード、そして様々な局面にあってもチャンピオンに向けた的確な判断をこなすことができる、まさに死角なしといっても過言ではないドライバーです。
そんなオジエのチームメイトとなるのは、2018年までTOYOTA GAZOO Racingに在籍していたエサペッカ・ラッピ/ヤンネ・フェルム。ラッピは2017年の母国フィンランドで初勝利を挙げた期待の若手です。冷静沈着な戦いぶりで2018年は3回の表彰台を獲得、TOYOTA GAZOO Racingのマニュファクチャラーズチャンピオン獲得に貢献しました。1月17日に28歳となるラッピにとって、現役王者のチームメイトととなることは、大きく成長を遂げる糧となるはずです。
オジェとラッピというふたりのドライバーが加わることで、シトロエンがどのような変化を遂げるのか、注目したいところです。2018年は車両トラブルやシーズン途中でのドライバー入れ替えなどで今ひとつ戦績が安定せず、マニュファクチャラーズランキングも4メーカー中4位と低迷していましたが、2019年は台風の目となりそうです。
【HYUNDAI SHELL MOBIS WORLD RALLY TEAM】 ヒュンダイ・シェル・モビス・ワールドラリーチーム
※写真提供:HYUNDAI
ドイツのアルゼナウを本拠地とするヒュンダイ・モータースポーツは、ラリーカーだけでなくツーリングカーのTCR車両も製作する巨大なファクトリーをもつチームです。過去には英国のチームに活動を委託して参戦していたこともありましたが、2013年には100%子会社のヒュンダイ・モータースポーツを立ち上げ、2014年から現在の体制でWRCへと再参戦を果たしています。参戦車両はi20クーペWRC。タイトル獲得のポテンシャルを十分に備えたラリーカーとして3年目のシーズンを迎えます。
ドライバーはティエリー・ヌービル/ニコラ・ジルスールとアンドレアス・ミケルセン/アンデルス・ヤーゲルのツートップを2018年から引き続き採用するほか、シトロエンで9年連続チャンピオンを獲得したセバスチャン・ローブ/ダニエル・エレナも加わることが発表されています。また、ダニ・ソルド/カルロス・デル・バリオも引き続きチームに残留し、ローブが6戦、ソルドが9戦で3台目のステアリングを握ることとなりそうです。
ベルギー出身のヌービルはヒュンダイが再参戦を果たした2014年以来のエースとして過去9勝を獲得、次期チャンピオン候補の筆頭と目されており、2018年は最後までオジェとドライバーズチャンピオンを争いましたが、3年連続ランキング2位でシーズンを終えています。路面を問わないスピードはオジェに勝るとも劣らないものですが、安定感に欠ける部分もあり、表彰台を逃してしまうことも。チャンピオンに最も近いドライバーとして、ヒュンダイ在籍5年目のシーズンとなる2019年はタイトル獲得を狙いたいところです。
フォルクスワーゲンの撤退によりシートを失った2017年の終盤からチームに合流したミケルセンはノルウェー出身。ヒュンダイでは2018年のスウェーデンで得た3位表彰台が最高位ですが、参戦したすべてのラリーで完走を果たしており、マニュファクチャラーズポイントの獲得に大きく貢献してきました。2019年シーズンは久々の勝利を狙ってキレのある走りが望まれます。
2018年シーズン終盤のスペインで2013年以来の勝利を挙げて世界を驚かせたローブ。長期にわたってシトロエンで活躍し、数々の金字塔を打ち立ててきたローブは、2012年を最後にWRCへのフル参戦を取りやめ、世界ツーリングカー選手権(シトロエン)や世界ラリークロス選手権(プジョー)に参戦してきました。2004年〜2012年まで9年連続のWRCチャンピオンであり、これまでに積み重ねたWRC優勝数は実に79勝。そのローブが地元フランスのチームを離れるというニュースは、大きな驚きをもって迎えられたのです。6戦とはいえローブの前戦復帰がチームに与える士気は大きく、また車両開発の面でも大きく進化を遂げる可能性が期待されます。
ローブと3台目のi20クーペWRCをシェアするスペイン出身のソルドは、ローブと再びチームメイトになることに。2014年から在籍するヒュンダイではいまだ勝利がなく、4回の2位表彰台が最上位となっています。長らくターマック(舗装路)ラリーを得意としてきましたが、2018年はメキシコやアルゼンチン、ポルトガルといったグラベル(未舗装路)ラリーでも好成績を残しています。
2019年シーズンは、かつてトヨタやプジョーでその手腕をふるったミシェル・ナンダンが代表を退き、アンドレア・アダモが代わってチームを率いることが発表されました。マネージメント陣営の変更とローブの加入がヒュンダイにもたらす影響に注目が集まります。
【M-SPORT FORD WORLD RALLY TEAM】 Mスポーツ・フォード・ワールドラリーチーム
※写真提供:M-SPORT
Mスポーツはシトロエンやヒュンダイ、そしてTOYOTA GAZOO Racingのような自動車メーカー直系のチームとは違い、個人の運営する独立系のチームです。フォード本社からの技術的なサポートを受けながら、ライバルと互角以上の戦いを演じています。チームの本拠地は英国イングランド北部のカンブリア。参加型カテゴリーのラリーカーやベントレーのGT3車両などとともに、フィエスタWRCが製作されています。2018年のシーズン後半にはヤリスWRCと同じようなコンセプトのリヤバンパーを投入し、話題を呼びました。
Mスポーツで2年連続チャンピオンを獲得しているオジェがシトロエンに移籍したことから、ドライバー布陣の行方について注目が集まっていましたが、チームは2013年から在籍するエルフィン・エバンスと若手テーム・スニネンの起用を発表。エバンスはスコット・マーティン、スニネンはマルコ・サルミネンという新たなコ・ドライバーを迎えて心機一転のスタートとなります。
イギリス出身のエバンスは、2014年から本格的にMスポーツからWRC参戦をスタート。2017年のラリーGBで初勝利を飾るなどスピードを見せましたが、2018年はオジェのタイトル獲得に向けたチームオーダーなどもあり、表彰台は2回のみ。2015年以来のエースとして迎えるシーズンで、どのような成長を見せるか期待がかかります。また、彼の父親のグウィンダフ・エバンスは1996年の英国ラリー選手権のチャンピオンであり、息子エルフィンのグラベルクルー(SSの閉鎖直前に走行し、路面状態をドライバーに伝えるチームスタッフ)を務めるなど、現在もラリー現場に身を置いています。
チームメイトのテーム・スニネンはフィンランド出身、1994年生まれの24歳。2017年にチームに加わり、主に参加型カテゴリーのフィエスタR5をドライブしていました。WRカーで出場したフィンランドでは、当時TOYOTA GAZOO Racingのラッピと白熱の接戦を演じました。2018年は11戦にWRカーで参戦し、ポルトガルで3位表彰台を獲得。今後の成長に期待のかかる若手のひとりとして多くの注目を集めています。
また、チームは3人目のドライバーとしてスウェーデン出身のポンタス・ティデマンドを起用。2019年序盤のモンテカルロとスウェーデンに参戦することを発表しました。2015年からシュコダ・モータースポーツでWRC2カテゴリーに参戦し、2017年にはチャンピオンを獲得した期待の若手です。初めての最新型WRカーでどのような走りを見せるのでしょうか。
長年チームを率いてきたマルコム・ウィルソンは第一線から退き、代わってリチャード・ミルナーが代表に就任することに。ミルナーはウィルソンの右腕として手腕を発揮してきた人物です。若手がそろうチームをどのように牽引するか、監督1年目のミルナーに期待がかかります。
【TOYOTA GAZOO Racing WRT】 トヨタ・ガズーレーシング・ワールドラリーチーム
2017年、1999年以来となるWRC復帰を果たしたトヨタ。TOYOTA GAZOO Racingとして、かつてWRCで4回の世界チャンピオンに輝いたトミ・マキネンが率いるチームは、フィンランドのトミ・マキネン・レーシングを本拠地としています。参戦2年目の2018年にはマニュファクチャラーズタイトルを獲得する強さを発揮するなど、最も勢いのあるチームとして知られています。参戦車両は、日本でも発売されているヴィッツ(海外名ヤリス)をベースとしたヤリスWRC。エンジンはドイツのトヨタ・モータースポーツGmbH(TMG)で開発され、高い信頼性とスピードを武器としています。
ドライバー陣営は、2017年のチーム設立以来所属するヤリ‐マティ・ラトバラ/ミーカ・アンティラ、2018年から加入し抜群のスピードを見せたオット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤに、クリス・ミーク/セバスチャン・マーシャルが新たに加わり3台体制でシーズンに挑みます。
チームで3シーズン目を迎えるフィンランド出身のラトバラは、WRC初出走が2002年というベテラン。Mスポーツ・フォードやフォルクスワーゲンで活躍し、トヨタに加わりました。北欧出身のドライバーらしくグラベルラリーを得意としていましたが、ターマックラリーでも勝利を挙げており、路面を問わない速さを見せます。2018年は最終戦オーストラリアでの1勝に留まるものの、中盤戦では連続表彰台も獲得しておりチームのタイトル獲得を後押ししました。
2018年シーズンは、最後までドライバーズチャンピオン獲得の可能性を残す戦いぶりを見せたタナックは、エストニア出身。2018年は計4勝を挙げてチームの大きな推進力となりました。特にフィンランド(グラベル)、ドイツ(ターマック)、トルコ(グラベル)の3連勝では、路面状況がまったく違うラリーでも安定したスピードを発揮できることを証明し、同時にヤリスWRCのオールマイティさを示すことにもなりました。2019年シーズン、その存在感はさらに大きなものとなるでしょう。
イギリス出身のミークは、2014年からシトロエンに所属してきたベテラン。2017年には2勝を挙げたものの、2018年シーズン途中で安定感の不足を理由に契約を打ち切られてしまいました。しかし、天性のスピードは他チームのエースにも劣らないもの。この年の10月にはすでにチーム加入が発表され、すでにヤリスWRCのテストも数回こなしています。どのような速さを発揮するのか、初のラリーとなる開幕戦に注目が集まります。
2018年シーズンを通じてあらゆる路面で安定した速さを見せたヤリスWRCは、さらなる改良を施されて3年目のシーズンに臨みます。トミ・マキネン代表が掲げるテーマは“チーム全体で戦う”こと。物事は合議制で決められ、セッティングの情報なども常にオープン。目的意識の共有が徹底されることで、短期間でライバルチームに匹敵する強さを獲得してきました。その強さは2019年も変わらず活かされるはずです。
各チームの陣営が大きく変わったことで、2019年シーズンの勢力図はさらに混沌とした状況となることが予想されます。総合力では、マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得したTOYOTA GAZOO Racingが一歩リードしていると言えますが、いずれのチームも負けず劣らずの陣容です。シーズン序盤戦は、モンテカルロやスウェーデンなど特殊なコンディションでのラリーが続くため、各戦力の判断は容易ではありませんが、あれこれと予想を巡らせることも楽しみ方のひとつとしてみてはいかがでしょうか。
また、すでに発表されているように、TOYOTA GAZOO Racingラリーチャレンジプログラムの育成ドライバーとして、勝田貴元が選出されています。勝田はフォード・フィエスタR5で今年の WRC2の10戦に出場、さらにフィンランド選手権2戦にヤリスWRCで出場し、さらなる経験を積む予定です。現在最もWRCワークスドライバーに近い日本人選手であり、今後のステップアップにも期待がかかります。
[ガズー編集部]
WRC 2019シーズン 開幕直前企画
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