トヨタ シエンタ クロスレビュー ~ 河口 まなぶ ~

ある意味、究極

われわれの住むここ日本で生活を共にする相棒として、老若男女を問わず使い勝手のよい一台とオススメできるのが、シエンタである。なぜならこのクルマには、現在の日本の自動車生活をより快適に、楽しくしてくれるポイントが多く見受けられるからだ。

まず、とても扱いやすいコンパクトクラスに属しているということ。このサイズは、どんなシチュエーションでも取り回しがしやすく、気軽に運転することができる。
次に挙げられるのが、後席にスライドドアを持つ3列シート車であること。スライドドアはファミリーカーとしての使い勝手が抜群だし、3列シート車は、家族に限らず、いざというときに多くの人を乗せられる。

さらにメカニズムの面では、ハイブリッド車を用意しているあたりもポイントとなってくるだろう。燃費はJC08モードで27.2km/Lと良好な上に、モーターによるアシストがあるから、加速時にアクセルを多く踏む必要がない。これは、静粛性の高さにも効いている。

一方で、ガソリンエンジン車も用意しており、こちらは効率を追求して新たに開発された1.5リットル直4エンジンを搭載するモデルで、燃費は20.6km/Lを実現している。ハイブリッド車よりもクルマ全体が軽量なために、走った時に軽やかな印象を届けてくれるのが魅力。また価格的にも200万円を切る、リーズナブルなゾーンにある。

ユニークだな、と感じるのはデザインだ。通常、この手のクルマの場合、どうしてもあたりさわりのないデザインが採用されることが多いが、シエンタの場合はそうした感覚がないどころか、むしろポップ&スポーティな感覚を演出している。エクステリアではコンパクトなミニバンであることをあえて生かした、攻めのデザインが実現されているし、インテリアにポップな感覚を漂わせるあたりも面白いものだなと感じる。

もうひとつ、日本車のお家芸ともいえる後席のアレンジは、生活の相棒としての強力な“武器”だ。シートを畳むアクション自体が簡単に行える。後部のラゲッジスペースも、低床かつ大開口で、荷物の積み込みが容易に行える。2~3列目シートを倒せば、26インチサイズのMTBを2台、そのまま積み込むことができるのには驚いた。これならば趣味のためのクルマとしてもかなり使い勝手のよい一台になるだろう。
安全装備も、自動ブレーキ等を含むセットオプション「Toyota Safety Sense C」が選べるなど、充実した内容。それを200万円クラスのコンパクトカーで実現して、誰が乗っても不満のない内容に仕上げているのだから、これはある意味、日本だからこそ作ることができた究極の乗り物だと、僕は感じている。

(文=河口 まなぶ)

河口 まなぶ(かわぐち まなぶ)

1970年生まれ。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。テレビ、ラジオ、新聞、ウェブ、専門誌等に出演・執筆を行うほか、独自のYouTubeチャンネル「LOVECARS!TV!」( https://www.youtube.com/user/manablog1 )にて自動車動画を配信している。趣味はトライアスロン。

[ガズー編集部]

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