トヨタ ヴォクシー/ヴォクシーハイブリッド 試乗レポート
ベストなモデルチェンジ
6年半の時を経て、3世代目へと進化したミニバン「トヨタ・ヴォクシー」。
試乗を通じてわかった、その特徴をリポートする。
さらに増した広々感
新型「ヴォクシー」は、“毒気のあるカッコよさ”をテーマにデザインしたという。
上下二段の構成となるフロントマスクは確かにシャープな印象で、ぎらりとした存在感を放つ。
同時にモデルチェンジを受けた兄弟車の新型「ノア」がどっしり感を前面に出しているのと対照的で、うまくすみ分けることができそうだ。
「Spacious FUN Box」(家族の夢を丸ごと載せるFun, Utility, Nenpiの良いハコ)をコンセプトに開発された新型ヴォクシーのステアリングホイールを握る前に、モデルラインナップと従来型からの変更点にふれておきたい。
新型ヴォクシーに用意されるパワーユニットは2種類。
ひとつは「プリウス」や「プリウスα」に搭載されるものをベースにした、1.8リットルガソリンエンジンとモーターからなるハイブリッドシステム。
もうひとつが2リットルのガソリンエンジンだ。
ガソリンエンジン仕様には標準ボディのほかに、よりアグレッシブな衣装をまとったエアロボディ(グレード名は「ZS」)も用意される。標準ボディが5ナンバーサイズに収まるのに対して、エアロボディは3ナンバーとなる。
また、ハイブリッド仕様はFF(前輪駆動)のみの設定となる一方、ガソリンエンジン仕様はFFに加えて4WD(四輪駆動)も選ぶこともできる。
今回は、新型ヴォクシーのハイブリッド仕様と、ガソリンエンジンのエアロボディ(ZS)を試乗することができた。
まずはハイブリッド仕様を見ながら、従来型からの変化を説明したい。
スライドドアを開けて真っ先に、従来型よりも広々とした印象を受ける。これは印象だけではなく、実際に寸法を測っても広くなっている。
広々感に貢献しているのは、まずフロア(床)が低くなっていることだ。結果、全高が25mm低くなっているにもかかわらず、室内の高さは従来型より60mm高くなっている。この高さは実際に子どもの着替えや自転車等の積み込みで便利だし、頭上に余裕があると座っているときの解放感が違う。
また、全長が100mm延長されており、おかげでセカンドシート、サードシートの居住スペースが拡大した。特にサードシートに座った時の膝まわりのスペースは従来型より100mmも余裕がある。
総じて、「スペースにゆとりが生まれた」というのが新型ヴォクシーの第一印象である。
ハイブリッドは走りが上質
運転席に座ると、まず視界のよさから安心感が得られる。サイドウインドゥの下端の位置を下げたり、運転席前方のピラー(柱)を細くしたり、あるいはボンネットの先端まで見えるように設計するなど、配慮が行き届いている。
スタートボタンを押して、ハイブリッドシステムを起動。プリウス等に用いたシステムをより重量のあるミニバン向けにチューニングしたとのことで、確かに車体の重さを感じさせずに滑らかに加速する。低い回転域から力を発生するモーターが、いい仕事をしている。ハイブリッドは、重量のあるミニバンにフィットするテクノロジーかもしれない。
ハイブリッド車のシステム総出力は、最高136PS。絶対的な数値こそ2リットルのガソリンエンジン(152PS)が上回っているものの、市街地での滑らかさや静かさは、ハイブリッド仕様が一枚上手だと感じられる。少なくとも新型ヴォクシーにおいては、ハイブリッドはエコ仕様であると同時に、“上級・上質仕様”である。
モーターだけで走ったり、あるいはエンジンとモーターが共同作業で加速したり、ふたつのパワーソースはまるで熟練の漫才コンビのように息が合っている。プリウス譲りの見事な連携プレーで、粛々と加速していく。
乗り心地は、ふわふわしない“しっかり”としたもの。ステアリングホイールを握っていても、かつてのミニバンにあった操舵(そうだ)フィーリングの曖昧さはみじんもなく、いまどんな状況で操縦しているかというインフォメーションがしっかりと伝わってくる。
やはりミニバンは2列目、3列目のシートにも座らないと正しい評価はできないだろうと、運転をスタッフに代わってもらう。なお、7人乗りと8人乗りをラインナップするガソリン車に対して、ハイブリッド仕様は7人乗りのみである。
特に驚いたのは、サードシートを簡単な操作で両サイドにハネあげて、そのスペースにまでセカンドシートを下げられる「スーパーリラックスモード」。前後に805mmものスライドが可能で、セカンドシートに座る人間の目前には広大なスペースが生まれる。まさに「VIP席」という言葉がふさわしい。
きわだつ個性に、共通のメリット
続いて、ガソリンエンジンを搭載したエアロボディに乗り換える。
あらためて見ると、新型ヴォクシーの“毒々しいカッコよさ”を強調した顔には強烈なインパクトがある。2013年の東京モーターショーにコンセプトモデルとして出展した際も、「パンチがきいていてカッコいい」と来場者に好評だったという。
また、試乗車はZSグレードだけに設定されるオレンジ&ブラックの内装だった。 この“オレンジ内装”はなかなかポップな印象で、楽しい気分にさせられる。
市街地から高速まで走ってみると、このガソリンエンジンとハイブリッドのすみ分けは明確だと感じる。高速道路でのパワー感は2リットルガソリンに軍配、市街地でおとなしく走るなら、ハイブリッドのほうがより上質、ということだ。
聞けば、トヨタはハイブリッドとガソリンの比率は50:50になると予想しているそうだが、選択に迷うユーザーの方は、まず試乗をするべきだろう。燃費と価格はもちろんのこと、両者の性格には明らかな違いがある。
ほかのグレードは15インチタイヤが標準であるのに対して、ZSグレードだけは16インチタイヤを履く。ふらふらしない、信頼のできる安定した乗り心地という基本的な性格は、どのグレードも一貫している。
ただし、コーナーへの進入でステアリングホイールを切り込む瞬間の確実な手応えは、16インチに分がある。一方、乗り心地は15インチのほうがよりしなやかだから、パワートレインの選択と同様、タイヤの選択も悩ましい。
試乗を終えて、もう一度シートアレンジを試してみる。最低限の力で、ほとんどワンタッチでシートをたたんだりスライドさせたりできる使い勝手のよさが、さらに煮詰められている。
おまけに、側方にハネ上げて収納するサードシートはぴったりと両サイドに密着するから、上方のスペースも犠牲にしない。助手席の前に広がるオープントレイや、運転席/助手席シートバックのティッシュボックス入れなど、収納スペースもいたるところに確保されている。
広さと使い勝手のよさ、そして運転のしやすさを極めたうえで、ハイブリッド/ガソリンとも省燃費を実現――新型ヴォクシーは、考えられるベストのモデルチェンジを果たしたと言っていいだろう。
(text:サトータケシ/photo:田村 弥)
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