BMW 220iクーペMスポーツ(車両編) クルマ好きなら見逃せない新型の特徴

FR(フロントエンジン・リアドライブ)の駆動方式を継承しつつ、世代交代を果たした「BMW 2シリーズ クーペ」。新型のハイライトをモータージャーナリスト山田弘樹が紹介する。

みんなが新型BMW 2シリーズ クーペに注目するのは、ずばりこのクルマが「コンパクトなFRクーペ」だからだろう。筆者も、BMWがこのご時世に2ドアクーペを継続したことには驚いた。そして、ちょっとうれしかった。

じゃあFRの魅力って、一体何だ?

僕は、ドリフトできることでも、速く走れることでもなく、「最もバランスがとれたレイアウトであること」だと思う。もちろん、ドリフトコントロールは楽しいし、後輪駆動はスポーツカーのレイアウトの基本だとも思ってる。でもFRには、もっと素朴な良さがある。

物理的な効率だけで考えるなら、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)のほうが、車内が広くなるぶん望ましく、車内スペースを犠牲にしてでも動的性能を突き詰めるなら、ミドシップ(MR)が最も理想的だ。

例えばホンダの「シビック タイプR」を見ても分かるとおり、現代の技術ならFFだって十分ハイパワーなエンジンを搭載することができるし、さらに動力性能を高めたいなら「フォルクスワーゲン・ゴルフR」や「アウディRS 3」のように4WDにすればいい。もっと言うと、近い将来、バッテリーサイズの問題を解決したEVの4WD車が、こうした話題をないものにする可能性もある。

要するにFRは、こうしたクルマたちの“真ん中”にいる。フロントコンパートメントにエンジンを縦置きして、リアアクスルで後輪を駆動させることで、前後重量配分は均等に近づく。この2シリーズ クーペも、そのバランスはほぼ50:50におさまっている。

こうした重量バランスを得ると、クルマの運転は楽しくなる。ヘタなドーピングなどしなくても、素直に走ってくれる。ブレーキングからターンイン、コーナリング、ターンアウトまで、すべての局面で、ドライバーとクルマとの対話が豊かになる。

「そんなの自分には無理」と思う人もいるだろうけど、「マツダ・ロードスター」を運転した誰もが気張らずに楽しいと思えるのは、その人馬一体感を、ごく低い速度域から感じ取れるからだ。翻ってこの2シリーズ クーペにも、そうした魅力がきちんとある。

もちろんFRだからといって、すべてのクルマが人馬一体だったり、スポーティーというわけじゃない。でも少なくともこの「220i クーペ」は、そうした走りを追い求めている。それがBMWの言う、「駆けぬける歓び」なのだと筆者は思っている。

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)

[GAZOO編集部]

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