「日産フェアレディZ」称賛される理由を山田弘樹が解説する

世のクルマ好き・スポーツカー好きを沸かせている新型「日産フェアレディZ」。なかでも魅力的なポイントについて、かつて“Z”を所有したこともある山田弘樹が語る。

新型フェアレディZは、ジキルとハイド。二面性のあるスポーツカーだと筆者は思っている。それを今風に“多様性”なんて言いたくなるところだが、そうじゃない。ハッキリと、表と裏、ふたつの顔がある。

表の顔は、美しくて優しい。

歴代で間違いなく一番美しい、“元祖フェアレディZ”S30型をモチーフとしたフロントマスクはキャッチーだし、伝統のロングノーズ&ショートデッキのプロポーションは伸びやかで、バブル時代を締めくくった“最後のツインターボ”Z32型のテールをオマージュしてリアに持ってきたのも、なかなかひねりがきいている。

この“映える”ボディーに搭載されるエンジンは、先に「スカイライン400R」に積まれて話題となった最高出力400PS超の3リッター V6ツインターボ「VR30DDTT」。開発陣は新たにリサーキュレーションバルブを搭載するなどして、その過給圧制御をさらに向上させることで、パワフルさだけでなく、フェアレディZらしい常用域におけるドライバビリティー(乗りやすさ)を追求した。

さらに自然吸気エンジンの時代は7段だったATを9段とした。この9段ATがもたらす「常用域におけるエンジンの低回転化」は、時代に逆行することになりかねないツインターボエンジンのCO2排出量を抑えるだけでなく、安全性の向上にも貢献していると筆者は考えている。

Zはギアをどんどん上げていっても、その太いトルクで十分速く走れる。パワーのオーバーシュートを避けることによって、多くのドライバーが快適かつ安全に、フェアレディZというスポーツカーを楽しめるというわけである。

こうしたパッケージングによって新型フェアレディZは、ガソリンエンジン時代の最後を飾るにふさわしい(?)、歴代で最もパワフルかつ、多分にノスタルジックだが美しいスポーツカーとなった。

しかしこれは、表の顔にすぎない。(後編につづく)

(文:モータージャーナリスト・山田弘樹)

[GAZOO編集部]

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