「トヨタbZ4X」ほかのBEVとは違った運転感覚。乗ってみないとわからない走りをレポート

BEVはどれも同じと思われるかもしれないが、「トヨタbZ4X」の運転感覚には、ほかのライバル車とは違う特徴がある。その個性的な乗り味について、森口将之がリポートする。

bZ4Xには前輪駆動と四輪駆動、2つの駆動方式がある。今回試乗した前者は1モーターで、後者は2モーターだ。前輪駆動版の最高出力は203.9PS、最大トルクは266N・m。バッテリー容量は71.4kWhで、満充電での航続距離は559kmとなっている。その点、長距離移動については「飛行機や新幹線などとの併用」を前提とする筆者の場合、500kmも走れば十分だと思った。

bZ4Xは、加減速は必要なだけの力が得られるものの、その反応はゆったりしていて、挙動に唐突感は一切ない。ライバルのテスラはもちろん、「日産アリア」よりも穏やかだ。トヨタブランドとしてそのようにしつけているともいえるし、「プリウス」などで培ったハイブリッド車開発の経験が生きているともいえる。

最近のBEVでは、回生ブレーキのレベルをシフトパドルなどで細かく調節することができる車種もある。しかしながらbZ4XはDレンジとBレンジがあるだけ。ハイブリッド車の豊富な経験から、パドルは必要ないという結論に至ったのかもしれない。基本設計が共通で、同じ工場で生産される「スバル・ソルテラ」がパドルを装備していることからも、ブランドとしてのビジョンだと考えられる。

乗り心地や静粛性についても、内燃機関車との大きな差はない。スッと乗り換えても違和感のない乗り味だ。ハンドリングも、エンジンより軽いモーターがフロントに積まれ、フロアにバッテリーを敷き詰めているので、重心や重量配分では有利であるはずだが、メーカーとしてはそのアドバンテージを明確にはアピールしていない。

「GRヤリス」や「クラウン」などを見るにつけ、思い切ったクルマづくりが目立つ最近のトヨタであるが、bZ4Xには少し前のトヨタのクルマづくりが根づいていると思った。誰が乗っても違和感を抱かせないBEVなのだ。そのため、「BEVにとって一番大事なのは不安要素を可能な限り排除することだ」と考える人に、bZ4Xは向くだろう。

アフターサービスで信頼のおけるトヨタのプロダクトであるということは、間違いなくプラス材料になるし、バッテリー保証や売却価格などが保証されているKINTOを介してデリバリーする方針も、そうした考えがベースにあるのかもしれない。bZ4Xはクルマそのもの以上に、こうしたハード以外の面で個性的なBEVではないかと感じられるのだ。

(文:モータージャーナリスト・森口将之)

[GAZOO編集部]

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