【マツダMX-30ロータリーEV】ロータリーエンジンというマツダのDNA(まるも亜希子)
2023年の初秋。久しぶりに訪れたマツダの広島工場は、活気に満ちあふれているように見えました。2012年に生産が終了した「RX-8」以来、約11年ぶりにロータリーエンジンを搭載する車両をつくることができる! そう決まったとき、生産現場は大いに盛り上がったそうです。
そして現場では、従来の13B型を知る職人たちから匠の技を受け継ぎながら、効率・品質向上のための新技術や創意工夫も取り入れられていました。
そのひとつは、「高精度につくる技術」です。「MX-30」に搭載される8C型のロータリーエンジンには「アペックスシール」「コーナーシール」「サイドシール」という3つのガスシールが使われており、燃焼の圧力が高まったことでそれらの精度向上が必須課題となりました。また、ローターが大型化したことにともない、バランス精度もより重要に。それらを、素材からの加工、組み立てに至る一気通貫作業によって、すべてクリアしたということでした。
2つ目は、「軽く・強くつくる技術」。サイドハウジングの素材がアルミに変わったため、アルミ鋳造法の確立や、溶射技術の開発が肝となったそうです。サイドハウジングへの溶射工程では、自由に動く溶射マシンが、加熱・溶融した金属粉末をマッハ2という高速でガス噴射。これによりアルミ化した表面にもしっかりとコーティングできるようになったとのことでした。
工場では13B型と8C型の見本を手で持ってみる機会もあったのですが、13B型が重くてほとんど持ち上げられなかったのに対して、8C型は軽々と上がってびっくり。ものすごい軽量化を実現したことを実感できました。
3つ目は、「既存設備や技術を最大限活用しつつ、工程のモジュール化と専用部の極小化によって柔軟に製品仕様に対応し、短期間での市場導入を実現する」という「フレキシビリティー」です。組み立てに必要な部品の各工程への搬送には無人の搬送車を活用したり、SKYACTIVの生産スタートの頃に導入し、ノウハウを積んできたという加工治具を活用したりして、フレキシブルにさまざまな部品を生産することが可能となっています。
このように、生産現場から整えて世に送り出される新生ロータリーエンジン。発電用ユニットとして黒子の存在に徹しながらも、マツダのDNAは色濃く受け継がれています。
(文:カーライフ・ジャーナリスト まるも亜希子)
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まるも亜希子さんが解説するマツダMX-30ロータリーEVの注目ポイント
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