【マツダMX-30ロータリーEV】受け継がれるルマンイズム(まるも亜希子)

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ロータリーエンジンの歴史のなかで、忘れてはならないのがルマン24時間レース。そして“ミスタールマン”こと、寺田陽次郎さんの存在です。

1970年代の国内レースで、打倒「GT-R」を見事やってのけたマツダが、世界最高峰にして最もドラマチックな耐久レースといわれるルマン24時間に挑んだのは1974年のことでした(それ以前の1970年には、ベルギーのプライベーターがマツダ製ロータリーエンジンを搭載したマシンで参戦)。そのときのドライバーとして初めてルマンの土を踏み、「日本車と日本人の力でここに日の丸をあげたい」という夢に向かった寺田陽次郎さんに、以前お話を伺ったことがあります。

レースの知識、運転技術、そしてマシンの完成度。初年度は、それらすべてにおいて現実の厳しさを思い知ったといいます。しかし一方で、ルマンは決して速さを競うだけの場ではなく、レースという文化が息づく場所だということも痛感したそうです。

そんなルマンにはあらがえない魅力があり、寺田さんは世界に通用するチーム&ドライバー、そして“勝っても愛されるマツダ”になるべく貪欲に学び、5年後に再びルマンの地へ。その後1991年に、マツダチームが「787B」で悲願の総合優勝を勝ち取ったのは、ご存じのとおりです。寺田さんいわく、ルマンは1980年代からすでに環境問題を意識したレースを行っていて、ハイブリッド車やEVに門戸を開いただけでなく、未来を見据えた変化を続けていく姿勢を持っているとのことでした。

そうした視点で見ると、プラグインハイブリッド車用のユニットとしてよみがえった8C型ロータリーエンジンにも、そうしたルマンイズムとでもいうべきスピリットが受け継がれていると思えます。1ローター化し、モーターを駆動する発電用エンジンとすることには、数えきれない困難があったはず。ルマンに響いたあの甲高いエンジンサウンドこそ耳に届きませんが、「MX-30ロータリーEV」は、エンジニアたちの熱い思いが心に伝わってくる一台です。

(文:カーライフ・ジャーナリスト まるも亜希子)

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まるも亜希子さんが解説するマツダMX-30ロータリーEVの注目ポイント

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