クラウンセダン「クラウンを愛用してきた人もクラウンと実感できるクルマ」
あらゆる部分が大きく変わった現行「クラウン」のなかで、セダンがこれまでのクラウンを受け継ぐ存在だと思えたことは、前編に記しました。しかしクラウンの伝統を感じさせる部分は、パッケージング以外にもあります。それはインテリアです。
とりわけインパネは、メーターとセンターディスプレイを横に並べたうえで全体を水平基調にまとめ、高めのセンターコンソールとつなげた空間的レイアウトが、クラウンそのものだと感じたのです。
そういえば、クラウンの「クロスオーバー」や「スポーツ」も、プラットフォームやスタイリングはまるで違うのに、インパネまわりは似ています。スポーツでは、躍動感あふれるスタイリングに対してインテリアは保守的だと思う人もいるでしょう。でもこれがクラウンらしさを伝える要素のひとつであることが、セダンに乗って理解できました。
エアコンなどのスイッチがタッチパネルではなく、ダイヤルに集約させたりもせず、慣れ親しんだ形と配置になっていることにも感心しました。操作のたびに目視の移動が必要になるタッチパネルとは違い、すぐにブラインドタッチができそうです。このあたりは安全性も考えての選択であることが想像できます。
空間づくりも、これまでのクラウンを思い出させるものでした。1475mmという全高は、SUVが多くなった現在の路上では低く感じます。ゆえに後席に乗り込むと、座面の低さにちょっと驚いたりします。
しかしドアの開口部は広くとってあるので、乗り降りで苦労することはありません。中におさまると足元だけでなく頭上空間も、身長170cmの自分にとっては余裕がありました。座面や背もたれの傾斜が強めで、「シートに体を預ける」と表現したくなる着座感は、SUVとは全く違います。ここもまたかつてのクラウンを思い出します。
そしてやはり、前席背もたれ裏に用意されたアシストグリップに触れないわけにはいかないでしょう。後席の乗り降りが楽にできるし、走行中に体を安定させることもできます。長年にわたり採用してきた装備だけあって、位置も形状も絶妙です。
長きにわたりクラウンを愛用してきた人も、この空間におさまれば、現行セダンがまぎれもないクラウンだと実感できるのではないでしょうか。
(文:モータージャーナリスト・森口将之)
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