新型プリウスの実燃費を実際に走って検証【前編】 ~首都高速道路走行

革新のテクノロジーと不変の哲学

4代目に進化した、“元祖ハイブリッドカー”プリウス。では、その燃費性能はどれほどのものなのか? 最新モデル2種類に加えて、ベストセラーの名を欲しいままにした3代目も交え、300kmの道のりで実力を検証した。

ステージ別に実燃費をテスト

2015年初頭から、自動車メディアではトヨタ プリウスについての予測が飛び交っていた。4代目となる新型はプラットフォームとハイブリッドシステムを一新するとされていて、JC08モード燃費が40.0km/Lを上回るかどうかが取り沙汰されていたのである。「なんとかギリギリでクリアするだろう」という声と「さすがに無理ではないか」という予測が交錯する中、発表された数字は40.8km /Lという驚異的なものだった。

トヨタの本気が伝わる、期待以上の低燃費。ハイブリッド車が普及して珍しいものではなくなっても、プリウスには元祖のプライドがある。今もぶっちぎりで先頭を走っていることを見せつけたのだ。ユーザーは敏感に反応し、売れ行きは絶好調。販売台数は他車を引き離してトップを独走している。2016年3月になっても、納車まで3~4カ月待ちという状態だ。

デザインや走りなど、人気の要因はほかにもある。とは言っても燃費の良さがプリウスの一番の特徴であり、関心の真ん中にあることは確かだ。カタログ値ではなく、実際に走ってどの程度の数字が得られるかを知りたくなる。

新型プリウスのハイブリッドシステムは、1.8リットル直4 DOHC 16バルブエンジン(98PS/5200r.p.m.、14.5kgf・m/3600r.p.m.)と電気モーター(72PS、16.6kgf・m)で構成される。
3代目プリウスのハイブリッドシステム。1.8リットル直4 DOHC 16バルブエンジン(99PS/5200r.p.m.、14.5kgf・m/4000r.p.m.)に電気モーター(82PS、21.1kgf・m)が組み合わされる。

今回は、先代にあたる3代目と、2種類の新型を用意し、いくつかのステージで燃費を計測することにした。まず東京都内で空いている首都高速を巡航してみたあと、日本橋からは一般道(国道1号線)で西に向かう。小田原に着いたら箱根の山を登ってみる。復路は大動脈たる東名高速道路で戻ってくるという300kmあまりのルートだ。

最初のステージは首都高速

3代目のグレードは、15インチタイヤを履くプリウスS。新型は、Aプレミアム“ツーリングセレクション”とSである。最上級グレードと中間グレードということだけでなく、装着しているホイールが異なる。Sは3代目と同じ15インチで、Aプレミアム“ツーリングセレクション”は17インチなのだ。それが、燃費と走りにどんな違いをもたらすのか? 今回その点も検証してみた。

テスト開始はガソリンスタンドでの給油から。終了時も同じガソリンスタンドを利用し、満タン法の燃費を計測した。

40.8km/Lという燃費は最廉価グレードのEが記録する値で、今回試乗したモデルはいずれもカタログ値が37.6km/L。それでも32.6km/Lの3代目と比べると、燃費は15%以上向上している。公平を期すために、全車ともに走行モードはノーマルモード、エアコンの設定温度は24度にそろえた。運転方法や重量で偏りが出ないよう、できる限りドライバーの乗り換えや荷物の移し換えを行ったものの、厳密に同一条件とはなっていないことは、お断りしておく。

新型プリウスAプレミアム“ツーリングセレクション”のタイヤ:(前)215/45R17 87W/(後)215/45R17 87W(トーヨー・ナノエナジー)
新型プリウスSのタイヤ:(前)195/65R15 91S/(後)195/65R15 91S(トーヨー・ナノエナジー)
今回テストした3代目プリウスには、(前)195/65R15 91S/(後)195/65R15 91Sのヨコハマ・エコスES31が装着されていた。

給油を行ってタイヤの空気圧もチェックした。この3台は、それぞれ規定空気圧が異なっている。17インチの新型Aは前220kPa・後ろ210kPaで、15インチの新型Sは前250kPa・後ろ240kPa。空気圧の高い新型Sのほうが転がり抵抗が低いはずで、燃費には有利に働くと推測される。3代目は前230kPa・後ろ220kPaである。

首都高速を行く2台の新型プリウス。スポイラーからバンパーに流れるリヤコンビネーションランプのデザインが、個性を主張する。

最初のステージは、早朝ということで交通量は少ない首都高速道路だ。ごくわずかに渋滞区間があったものの、ほぼスムーズに流れており、環状線のC2とC1を合わせて、79kmを走行した。この間の燃費は、車載の燃費計によれば、3代目が27.1km/L、新型Aプレミアム“ツーリングセレクション”が30.3km/L、新型Sが31.3km/L。予想通りの順位である。最も燃費のよかった新型Sは、3代目に比べて15%ほど良好な数値で、カタログ値とほぼ同じ比率となった。

実燃費結果 [首都高速道路 約80㎞走行]
新型プリウス Aプレミアム“ツーリングセレクション”30.3km/L
新型プリウス S31.3km/L
3代目プリウス S27.1km/L
空力性能のさらなる向上が図られた新型プリウス。ホイールハウス前方の平面部によって空気の流れが整えられている。

似ているようで印象の異なるフォルム

テストに際しては、急加速や無理な追い越しは避けたものの、燃費を稼ぐための極端なトロトロ走行もしていない。安全な車間距離をとり、流れに乗って走ることを心がけた。「プリウスに乗る普通のユーザーが普通の運転をする」というイメージである。新型プリウスは道路環境さえ良ければ、特に燃費運転を意識しなくても30km/Lをクリアできるようだ。

首都高速を降り、日本橋から西へ向かう。青が新型プリウスS、赤は新型プリウスAプレミアム“ツーリングセレクション”、奥に見える銀のモデルが3代目プリウスSである。

日本橋からは一般道を走る。少しずつ交通量が増し、流れが悪くなってきた。赤信号で切り離されてしまうこともあり、3台が連なって走るのに、やや気を使う。走りながらまわりを見ていると、あらためてプリウスの多さに驚く。そのほとんどが3代目で、たまに2代目を目にすることもある。色はシルバーの率が圧倒的に高い。試乗車もシルバーだったので、コンボイで走っていても、うっかり見間違えそうになってしまった。

4代目となる新型プリウスのリヤビュー。
こちらは3代目。ともにCd値を下げるために後端を切り落としたフォルムを採用しているが、見た目の印象は大きく異なる。

横浜まで走り、撮影のために小休止した。並べて見比べると、基本的なプロポーションは変わっていないことがわかる。空力性能を高めるために後端を切り落としたフォルムは2代目から採用され、新型にも受け継がれた。トライアングルシルエットと呼ばれるスタイルを踏襲している。それなのに、印象はずいぶん違うのだ。3代目はシンプルな削り出し感が強調されており、特にリヤエンドが彫刻的な造形になっている。新型はフロントもリヤも複雑な意匠を取り入れていて、コンセプトカーのような印象すら受ける。

複雑なグラフィックで迫力を増した4代目プリウス。写真は、最上級グレードのAプレミアム“ツーリングセレクション”。
3代目プリウス。そのフロントまわりは、4代目に比べると端正なデザインだ。

違いが際立つのはボンネットの高さだ。3代目が盛り上がった形状でカタマリ感を強く打ち出しているのに対して、新型はむしろえぐれている。62mmも低くなっているのだからまったく見た目が違う。クルマづくりの構造改革「Toyota New Global Architecture(TNGA)」に基づき、パワートレーンを従来より大幅に低い位置に収めている。デザインの進化は、新たなテクノロジーによってもたらされているのだ。

乗り換えても違和感のないインテリア

ボンネットの形状の違いは、インテリアデザインにも反映されている。3代目のセンターコンソールは高くしつらえられ、その下に収納の空間を確保していた。新型では盛り上がりがなくなり、低い位置にコンソールトレイが配されている。前方視界が開けたこともあり、運転席に座った時に広々とした感じがする。ただ、使い勝手は変わらない。伝統のセンターメーターが受け継がれたので、ダッシュボードの見え方は一緒だ。「遠方にディスプレイ、手元に操作系」という考え方は同じで、3代目から乗り換えても違和感を抱くことはないだろう。

新型プリウスのインテリア。センターコンソール以外は形状を変えることなくデザインと質感のブラッシュアップが図られた。
3代目プリウスのインテリア。左右非対称型のセンターコンソールが採用されていた。

新型では、インテリアの質感が大幅に向上した。ワンランクどころかツーランク違うと言っていい。ダッシュボードやドアトリムにソフトな素材を採用し、しっとりとした感触になった。センターには対照的に硬質なピアノブラックの素材が使われ、コントラストが高級感を演出する。特にホワイトとブラックのツートーン内装は洗練を感じさせる。

旧型を運転しながら前を走る新型プリウスを眺めていると、やはりリアスタイルのインパクトが大きいと感じる。ルームミラーに映るフロントのデザインも負けてはいない。トンネルなどでヘッドライトがオンになると、かなりの迫力だ。ただ、最初に見た時の衝撃は和らいでいて、すんなりとこの形を受け入れていることに気付く。しばらくすればこの大胆な意匠が道にあふれることになるわけで、日本人のデザイン感覚を大きく変えていくことになるだろう。 
(後編につづく)

(文=鈴木真人/写真=田村 弥)

<ここまでの燃費データ>

プリウスAプレミアム“ツーリングセレクション”
首都高速(79.1km):30.3km/L ※車載燃費計計測値

【テスト車のスペック】
ボディサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1390kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リットル直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5200r.p.m.
エンジン最大トルク:14.5kgf・m(142Nm)/3600r.p.m.
モーター最高出力:72PS(53kW)
モーター最大トルク:16.6kgf・m(163Nm)

プリウスS
首都高速(78.9km):31.3km/L ※車載燃費計計測値

【テスト車のスペック】
ボディサイズ:全長×全幅×全高=4540×1760×1470mm
ホイールベース:2700mm
車重:1360kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リットル直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:98PS(72kW)/5200r.p.m.
エンジン最大トルク:14.5kgf・m(142Nm)/3600r.p.m.
モーター最高出力:72PS(53kW)
モーター最大トルク:16.6kgf・m(163Nm)

プリウスS(3代目)
首都高速(79.6km):27.1km/L ※車載燃費計計測値

【テスト車のスペック】
ボディサイズ:全長×全幅×全高=4460×1745×1490mm
ホイールベース:2700mm
車重:1350kg
駆動方式:FF
エンジン:1.8リットル直4 DOHC 16バルブ
エンジン最高出力:99PS(73kW)/5200r.p.m.
エンジン最大トルク:14.5kgf・m(142Nm)/4000r.p.m.
モーター最高出力:82PS(60kW)
モーター最大トルク:21.1kgf・m(207Nm)

[ガズー編集部]