【アウディ S5 試乗】免許がいくらあっても足りない、と日和るほど刺激的…中村孝仁
このところ、日本車、輸入車を含めエンジンは押しなべて4気筒が主流。それに輸入車ではディーゼルの台頭が著しい。
ディーゼルはガソリン車の走りを知る人からしたら、度肝を抜かれるようなトルクフルなパフォーマンスが魅力だが、研ぎ澄まされたシャープなパフォーマンスではなく、どちらかといえば縁の下の力持ち的印象である。
そんなわけで、このところ少し自動車から得られる刺激が少ない。500psも600psもあるようなスポーツカーは、はなっからけたたましい性能を持っていることがわかっているので心して乗るし、第一それらしい格好をしている。
そこへ行くとアウディ『S5』は違う。基本的に『A5』とほとんど区別がつかない。地味なカラーリングのボディだったら、A5と見間違う人も多いのではないかと思う。改めてA5/S5について触れておくと、言ってみればこのラインナップはアウディ『A4』のクーペ、コンバーチブル及び、クーペ型4ドアセダンである。クーペやコンバーチブルをセダンと切り離すラインナップを構築するのは、このアウディとBMW。それによってトレッドが拡大出来たり、ボディディメンションを大きく変えられたり、クーペとして、あるいはコンバーチブルとしてより高い存在感を示すことが出来る。
そしてS5はそれをさらに高性能化して、研ぎ澄ました性能を与えたモデルに仕上げている。美しいスタイリングと官能的な性能を備え持つわけだから、自動車を単なる移動の手段とは思わない、エンスージァスティックなユーザー向けのラインナップと言って過言ではない。
エンジンは今や稀少な部類に入るV6ターボ。4気筒以上のマルチシリンダーは高性能車にしか搭載されなくなってしまった感が強い。しかも排気量3リットルで500Nmの高トルクを発揮する。昔だったらいの一番に最高出力の話をしたものだが、ようやく最近ではトルクの話が先に出るようになった。因みに最高出力は354ps。十分にパワフルなのだが、高性能といえばセダン系でも500psに届くようなクルマたちがぞろぞろいると、これは控えめな数字に見えてしまう。
そのV6ターボに鞭を入れてみた。そもそも、4気筒に比べると何と官能的なサウンドに聞こえるか。最近は電動のウォーターポンプやオイルポンプなどが次々と登場して、エンジンの先端にベルトやプーリーが必要なくなる可能性が高く、メルセデスも直列化に踏み切ったが、その流れは他メーカーも追従する可能性が十分にあるけれど、V6もそれはそれでやはり独特のビートを持っていて五感のうちの聴覚に響いて来る。
トランスミッションは何故かお得意のSトロニックではなく、8速のティプトロニック、ステップATを採用している。しかもこれ、相当な高性能で、いわゆる流れに乗って走るようなシチュエーションでは当然のことながら、Sトロニックよりもスムーズだし、ドライバーが少し気合いを入れて走っても、Sトロニックに負けず劣らずの性能を示してくれる。こうなると、Sトロニックの存在意義が、リアルスポーツの『R8』のようなクルマは別として、希薄になるような印象を受けた。
A5と見紛うエレガントなデザインのボディとかなりピリ辛のパフォーマンスドライブトレーンの融合は、久々に刺激的な走りを堪能できた。一方で、これでは免許がいくらあっても足りないと、日和る心を持つ自分がいたのが情けない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
ディーゼルはガソリン車の走りを知る人からしたら、度肝を抜かれるようなトルクフルなパフォーマンスが魅力だが、研ぎ澄まされたシャープなパフォーマンスではなく、どちらかといえば縁の下の力持ち的印象である。
そんなわけで、このところ少し自動車から得られる刺激が少ない。500psも600psもあるようなスポーツカーは、はなっからけたたましい性能を持っていることがわかっているので心して乗るし、第一それらしい格好をしている。
そこへ行くとアウディ『S5』は違う。基本的に『A5』とほとんど区別がつかない。地味なカラーリングのボディだったら、A5と見間違う人も多いのではないかと思う。改めてA5/S5について触れておくと、言ってみればこのラインナップはアウディ『A4』のクーペ、コンバーチブル及び、クーペ型4ドアセダンである。クーペやコンバーチブルをセダンと切り離すラインナップを構築するのは、このアウディとBMW。それによってトレッドが拡大出来たり、ボディディメンションを大きく変えられたり、クーペとして、あるいはコンバーチブルとしてより高い存在感を示すことが出来る。
そしてS5はそれをさらに高性能化して、研ぎ澄ました性能を与えたモデルに仕上げている。美しいスタイリングと官能的な性能を備え持つわけだから、自動車を単なる移動の手段とは思わない、エンスージァスティックなユーザー向けのラインナップと言って過言ではない。
エンジンは今や稀少な部類に入るV6ターボ。4気筒以上のマルチシリンダーは高性能車にしか搭載されなくなってしまった感が強い。しかも排気量3リットルで500Nmの高トルクを発揮する。昔だったらいの一番に最高出力の話をしたものだが、ようやく最近ではトルクの話が先に出るようになった。因みに最高出力は354ps。十分にパワフルなのだが、高性能といえばセダン系でも500psに届くようなクルマたちがぞろぞろいると、これは控えめな数字に見えてしまう。
そのV6ターボに鞭を入れてみた。そもそも、4気筒に比べると何と官能的なサウンドに聞こえるか。最近は電動のウォーターポンプやオイルポンプなどが次々と登場して、エンジンの先端にベルトやプーリーが必要なくなる可能性が高く、メルセデスも直列化に踏み切ったが、その流れは他メーカーも追従する可能性が十分にあるけれど、V6もそれはそれでやはり独特のビートを持っていて五感のうちの聴覚に響いて来る。
トランスミッションは何故かお得意のSトロニックではなく、8速のティプトロニック、ステップATを採用している。しかもこれ、相当な高性能で、いわゆる流れに乗って走るようなシチュエーションでは当然のことながら、Sトロニックよりもスムーズだし、ドライバーが少し気合いを入れて走っても、Sトロニックに負けず劣らずの性能を示してくれる。こうなると、Sトロニックの存在意義が、リアルスポーツの『R8』のようなクルマは別として、希薄になるような印象を受けた。
A5と見紛うエレガントなデザインのボディとかなりピリ辛のパフォーマンスドライブトレーンの融合は、久々に刺激的な走りを堪能できた。一方で、これでは免許がいくらあっても足りないと、日和る心を持つ自分がいたのが情けない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
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