【ホンダ フィット ハイブリッド 試乗】見た目以上にぐーんと上がった商品力…中村孝仁
出だしでつまずいてしまった、3代目のホンダ『フィット』。改良を重ね、久しぶりに試乗したマイナーチェンジモデルは、その商品力を大幅に引き上げていた。
大きな変化として挙げられるのは、まずホンダセンシングの採用だ。グレードの低いモデル以外はほぼ標準装備。ミリ波レーダーと単眼カメラによるシステムは、自動ブレーキや誤発進抑制などに加えて、ACC、車線維持支援システムのLKASなどが含まれている。もっともACCについては全車速対応ではないが。
次にエクステリアデザインの刷新がある。と言ってもこちらはそれほど大きな変更が施されたわけではなく、前後バンパーのデザイン変更や、車種によって専用バンパーや大型のテールゲートスポイラーなどが装備されるものの、基本は従来のままでフィット・ユーザーならいざ知らず、誰の目にもおお、新しいと言われるほどのものではなかったように思う。
僕が注目したのは静粛性と乗り心地の向上であった。主として商品力が上がったと感じたのはこの部分である。具体的に施された変更としては、フロアに使われている制振材のメルシートの板厚を、従来の2mmから3mmに引き上げたこと。ダッシュボードのインシュレーターを増加したこと。そしてフロアアンダーカバーの材質を、不織布に切り替えたことなど様々で、フロントガラスにも遮音ガラスが使われるなど、制振と防音にはだいぶ気を使った跡があって、それは結果として見事にクルマに反映されていた。
ハイブリッドのシステム自体はすでに市場投入されている『フリード』と同じもので、ドライブトレーンも基本的に大きくは変わっていないが、細かなチューニングを施してブラッシュアップを図っている。
さて、気になるホンダセンシングの話から始めよう。元々お値段が決して高くないBセグメントのモデルだから、自動ブレーキやACC等のクオリティーは松竹梅で言えば、まあ梅の部類。ただ、装備をしたことが進歩であるわけで、いずれはすべてのクルマが標準装備するべきものだと思っている。新しい車線維持支援システムのLKAS、首都高速で試してみたが、比較的スムーズにステアリングを切ってくれることは確認できたが、万能ではないので、全面的に信頼を置いて任せっきりにするのはまずい。あくまでも支援なのだから。ACCは高速で使う限り、かなりの精度で走ってくれるが、車間設定が最も車間の狭い状態にしても、前車との距離があり過ぎて、次から次へと割り込まれる。それに試乗したクルマは何故か、車間を最短に設定しても最長に設定しても距離が変わることはなかった。
一方、乗り始めた直後から??と感じたのは、今までのフィットでは感じられなかったどっしり感と、静粛性の高さである。何となくCセグメントと言われても全然違和感がないほど、華奢な感じがしない。とりわけ、路面からフロアを通して侵入してくる細かい振動やノイズはかなり見事なまでに遮断されていた。織り込んでいない、不織布という素材を最近各メーカーが使い始めている(トヨタ『プリウス』は全面的に使用している)が、こいつの効果はどうも絶大のようだ。まさにひとクラス上の印象である。
1.5リットルユニットとハイブリッドシステム、それに7速DCTの組み合わせは前述したようにフリードと同じ。決してパワフルという印象でもないし、取り立てて、電気のみで走るEVモードがあるわけでもないが、現状ハイブリッドとしては極力バッテリー積載量を減らして、燃費をうまい具合に引き上げるという大命題に対してはうまく機能しているようで、JC08モード燃費も37.2km/リットルとなかなか優秀である。また、スムーズネスという面では十分に及第点が与えられ、DCTもようやくものになったように思う。
見た目はそう変わらないMC後のフィットだが、商品力という点では大きく引き上げられたように思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 :★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
大きな変化として挙げられるのは、まずホンダセンシングの採用だ。グレードの低いモデル以外はほぼ標準装備。ミリ波レーダーと単眼カメラによるシステムは、自動ブレーキや誤発進抑制などに加えて、ACC、車線維持支援システムのLKASなどが含まれている。もっともACCについては全車速対応ではないが。
次にエクステリアデザインの刷新がある。と言ってもこちらはそれほど大きな変更が施されたわけではなく、前後バンパーのデザイン変更や、車種によって専用バンパーや大型のテールゲートスポイラーなどが装備されるものの、基本は従来のままでフィット・ユーザーならいざ知らず、誰の目にもおお、新しいと言われるほどのものではなかったように思う。
僕が注目したのは静粛性と乗り心地の向上であった。主として商品力が上がったと感じたのはこの部分である。具体的に施された変更としては、フロアに使われている制振材のメルシートの板厚を、従来の2mmから3mmに引き上げたこと。ダッシュボードのインシュレーターを増加したこと。そしてフロアアンダーカバーの材質を、不織布に切り替えたことなど様々で、フロントガラスにも遮音ガラスが使われるなど、制振と防音にはだいぶ気を使った跡があって、それは結果として見事にクルマに反映されていた。
ハイブリッドのシステム自体はすでに市場投入されている『フリード』と同じもので、ドライブトレーンも基本的に大きくは変わっていないが、細かなチューニングを施してブラッシュアップを図っている。
さて、気になるホンダセンシングの話から始めよう。元々お値段が決して高くないBセグメントのモデルだから、自動ブレーキやACC等のクオリティーは松竹梅で言えば、まあ梅の部類。ただ、装備をしたことが進歩であるわけで、いずれはすべてのクルマが標準装備するべきものだと思っている。新しい車線維持支援システムのLKAS、首都高速で試してみたが、比較的スムーズにステアリングを切ってくれることは確認できたが、万能ではないので、全面的に信頼を置いて任せっきりにするのはまずい。あくまでも支援なのだから。ACCは高速で使う限り、かなりの精度で走ってくれるが、車間設定が最も車間の狭い状態にしても、前車との距離があり過ぎて、次から次へと割り込まれる。それに試乗したクルマは何故か、車間を最短に設定しても最長に設定しても距離が変わることはなかった。
一方、乗り始めた直後から??と感じたのは、今までのフィットでは感じられなかったどっしり感と、静粛性の高さである。何となくCセグメントと言われても全然違和感がないほど、華奢な感じがしない。とりわけ、路面からフロアを通して侵入してくる細かい振動やノイズはかなり見事なまでに遮断されていた。織り込んでいない、不織布という素材を最近各メーカーが使い始めている(トヨタ『プリウス』は全面的に使用している)が、こいつの効果はどうも絶大のようだ。まさにひとクラス上の印象である。
1.5リットルユニットとハイブリッドシステム、それに7速DCTの組み合わせは前述したようにフリードと同じ。決してパワフルという印象でもないし、取り立てて、電気のみで走るEVモードがあるわけでもないが、現状ハイブリッドとしては極力バッテリー積載量を減らして、燃費をうまい具合に引き上げるという大命題に対してはうまく機能しているようで、JC08モード燃費も37.2km/リットルとなかなか優秀である。また、スムーズネスという面では十分に及第点が与えられ、DCTもようやくものになったように思う。
見た目はそう変わらないMC後のフィットだが、商品力という点では大きく引き上げられたように思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度 :★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。
(レスポンス 中村 孝仁)
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