【スバル レヴォーグ STIスポーツ 試乗】地道で目立たないが、良心を感じる改良…中村孝仁

スバル レヴォーグ STIスポーツ
生産調整やら発売時期などの関係で、最近のスバルの試乗会はナンバーが付く前に開催されることがほとんどになった。今回も例に盛れず、リニュアルされた『レヴォーグ』の試乗はクローズドコースでの開催である。

残念ながら、クローズドコースで開催された際は、チェックする項目が限定的となる。例えば新しいレヴォーグには最新鋭のアイサイトが装備されているが、単独走行でそれをチェックしたところで意味はない。一方で運動性能をチェックするには一般道よりもより攻めた走りが出来る関係で、より深く知ることが出来る。しかも今回は旧型との比較試乗もできるから、よりわかり易いというわけで一長一短がある。いずれ公道試乗の様子もお届けするつもりだが、先ずはクローズドコースでの印象からお届けしよう。

その前に、今回新たに付いたフロントビューモニターの威力を体験させてもらったので、そのお話から。これはボディ先端についたカメラによってドライバーが視認する前に障害物を発見できるという大変ありがたい機能。狭い路地からクルマの先端が出る前に、左右からの障害を発見できるというもので、ノーズ先端が3cmほど手前にあるのに(ということはドライバーはさらにそこから1m以上は手前にいることになる)、左右にいる人間を模した障害物がモニターによって視認できる。こいつはなかなかいい。

他に今回新たに装備された機能性技術としてはAVH(オート・ヴィークル・ホールド)がある。このスイッチを押しておけば、信号待ちで停車した際などに、ブレーキから足を離しても、クルマは静止状態を維持してくれるし、勿論その時点でアイドリングストップしていれば、その状態も保持してくれるという有難い機能。これ、ドイツ車などには一般化された機構だが、一度これに慣れてしまうと後戻りできな麻薬的代物である。他に、装備されたというわけではないが、リアシートはついに40:20:40の分割可倒式になった。その便利さは使ってみればわかる。40:60とは大違いだ。

というわけで、いよいよ試乗。あまりに一気に色々乗ったので、少々混乱気味だったが、レヴォーグは1.6リットルの現行車及び新型車。それに2リットルSTIスポーツに乗ることが出来た。あれやこれや話をすると混同してしまうので、STIスポーツに特化してお話をしよう。

まず、エンジンに関しては特に変更点はない。一方で足回りは前後サスペンションのリバウンドストロークを伸ばして減衰力を変える一方で、スプリングはバネ乗数を引き下げている。つまりこれは、よりダンパーに頼った(それもストロークに)セッティングにされたことを意味し、乗り心地の改善に繋がる。試乗コースでは一カ所だけ、それを試せる場所があり、注意深く走行してみたが、感覚的にはいなし効果が上がっている印象を受けた。もっとも、基本的に路面が整備されたクローズドコースではそれ以上の情報収集は無理だった。ステアリングも電動パワステに手が入っているのだが、正直大きな違いを感じるレベルではなかった。

静粛性に関してはかなり上がっている印象である。断行した変更は前後ガラスの板厚変更や、ボディ床面に貼った制音材の追加や荷室周りの吸音材の追加。やはりインシュレーター効果は大きそうだ。おかげでメーカー調べで100km/h時の前席騒音は従来の80db越えから70db台後半へと引き下げられ、同様の効果は後席でもあるという。まあこちらはあくまで耳の性能が試されているわけで、断定的数値は持ち合わせていないが、うん、静かになったな…と感じさせていただいた。

今回の改良は過去2回に次ぐ3度目で「D型」と車内では呼ばれるようだが、変えているとはいえ、エクステリア及びインテリアの変更はほとんどわからないレベル。以前は目先を変えることで顕著な違いを演出した国産モデルが多かったが、マツダと言いスバルと言い、クルマを深化させることに力点が置かれたマイナーチェンジが多い。だから、AVHや40:20:40のリアシート分割可倒のように使い勝手は明らかに向上している。地道で目立たないものかもしれないが、メーカーの良心を感じるブラッシュアップである。

■5つ星評価
パッケージング ★★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。

(レスポンス 中村 孝仁)

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