【個性派ミニバン比較 第1回】デザイン、エンジン、先進安全、300万円台で選ぶなら…岡本幸一郎

個性派ミニバン4台と岡本幸一郎氏
ファミリーを大事にし、ライフスタイルにもこだわりを持つ人にこそ、ぜひ目を向けて欲しいのが、輸入車の3列シート車だ。まだ選択肢は多くはないが、300万円台で買える中でも、国産ミニバンにはない付加価値を備えた魅力的な3台がこのとおり。

ユニークなクルマづくりが身上のシロトエンが送り出したのが『グランドC4ピカソ』には、待望のクリーンディーゼルが追加されたばかり。また、欧州勢の先駆者として成功しているVW『ゴルフトゥーラン』は昨年モデルチェンジを実施し、あるいはBMWも『2シリーズ グランツアラー』を擁してついにこのカテゴリーに参入してきた。

そんな欧州勢に対し、国産ミニバンの代表として、売れ筋の日産『セレナ』を持ち込んだ。全4回にわたり、使い勝手や走りなど、それぞれの特徴と魅力を、モータージャーナリストの岡本幸一郎がレポートする。第1回はまずそれぞれの目玉を比較してみたい。

◆未来的フォルムに絶大な解放感を誇る独創的モデル…シトロエン グランドC4ピカソ

独創的なクルマづくりで知られるシトロエンは、3列シート車を手がけてもやはり独創的だ。既存のミニバンとは一線を画する丸みを帯びた未来的なフォルムに、個性的な前後のデザインを組み合わせたルックスが、まず印象深い。

広い室内スペースを想起させる、ルーフに沿って配されたC字型のグレーのラインのアイキャッチになっている。「ロフトスタイル」と呼ぶ広く明るいインテリアも、このクルマならでは。パノラミックフロントウインドウとガラスルーフの組み合わせによる絶大な解放感は、C4ピカソのアイデンティティとなっている。宙に浮いたように見えるメーターパネルまわりもユニークだ。とにかく、なにからなにまでシトロエンらしい独自性を感じさせる。

現行モデルの日本導入は2014年の秋から。7人乗りの「グランドC4ピカソ」のほか、5人乗りの「C4ピカソ」もある。エンジンについて、当初は1.6リッターのガソリン直噴ターボのみだったところ、2016年秋にクリーンディーゼルが追加。ディーゼルエンジンに定評のあるプジョーシトロエンによる「クリーンディーゼルミニバン」というキャラクターはやはり魅力だ。

◆そつない完成度をそのままに、最新プラットフォームを得て刷新…VW ゴルフトゥーラン

前身の初代トゥーランも、ミニバンであることを忘れさせる完成度の高い走りや、小柄なサイズながら7人の大人が大きな不満を感じることなく座れる優れたパッケージングなどが高く評価され、このカテゴリーにおける欧州勢の開拓者として、日本でも確固たる地位を築いてきた。

そして2016年1月、実に12年ぶりにモデルチェンジして現行型の2代目にスイッチ。「MQB」と呼ぶVWのモジュラープラットフォームを採用し全面的に生まれ変わった。見た目のとおりまさしくキープコンセプトで、すべてにおいてそつのない完成度を感じさせつつ、内外装の質感は格段に向上しており、各部が微に入り細にわたる進化を遂げていることは、実車に触れるとよくわかる。

パワートレインは全車1.4リッターのガソリン直噴ターボエンジンに7速DCT「DSG」を組み合わせる。グレード体系は価格の安いほうから、「トレンドライン」、「コンフォートライン」、「ハイライン」、「Rライン」という4タイプのラインアップだ。

◆BMWの一員として恥じないデザインと走り…BMW 2シリーズ グランツアラー

ミニバンとは縁のないイメージだったBMWまでもが、ついにこのカテゴリーへの参入を果たしたのが、2シリーズ グランツアラーだ。弟分として2列シートのアクティブツアラーもラインアップされるのはご存じのとおり。

BMWでは偶数のシリーズを奇数のシリーズに対して新しい価値を創造するモデルと位置づけており、2シリーズと呼ぶ中に後輪駆動のクーペやカブリオレもあり、前輪駆動のマルチパーパスビークルとはまったく別物でありながら、同じ2シリーズとなっているのは少々ややこしいのは否めない。

むろんBMWのラインアップの中では異色の存在といえるが、コンパクトなサイズながら、内外装にはBMWらしさを巧みに表現したデザインと、このクラスの水準を大きく超える高級感が与えられていることは、このクルマの人気のヒケツに違いない。

同じく走りも前輪駆動となってもBMWの一員として恥じない優れたドライバビリティを誇る。エンジンは1.5リッター3気筒と2.0リッター4気筒のガソリン直噴ターボと、2.0リッター4気筒のクリーンディーゼルの3タイプが選べる。

◆広い室内空間に多くの魅力を詰め込んだ人気No.1…日産 セレナ

日本車の代表として用意したのは、2017年上半期ミニバン販売台数No.1の座に輝いた日産セレナだ。2016年8月の登場からまもなく1年を迎えるが、人気のヒケツは手頃な価格とサイズはもとより、ミニバンとしての魅力をわかりやすく全身で表現しているからだ。

いかにも広そうな室内空間を想起させる背高の箱型フォルムや、日本の狭い駐車場事情のもとでも使いやすい両側スライドドアをはじめ、多彩なシートアレンジと豊富な収納スペースといったミニバンとしての高い実力はいうまでもなし。

さらにはマイルドハイブリッドの搭載や、話題の「プロパイロット」に象徴される先進安全運転支援技術の積極採用など、このクラスの欧州勢にはない、国産ミニバンならではの武器をいくつも備えていることも強みだ。

エンジンは全車2リッターのガソリン自然吸気で、Sハイブリッドにはエコモーターが組み合わされる。写真はスポーティ仕様のハイウェイスターではなく、標準モデルの上級グレードである「G」だ。

岡本幸一郎|モータージャーナリスト
1968年、富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報映像の制作や自動車専門誌の編集に携わったのち、フリーランスのモータージャーナリストとして活動。幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもスポーツカーと高級セダンを中心に25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに多方面に鋭意執筆中。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

(レスポンス 岡本幸一郎)

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