【マツダ CX-8 試乗】CX-5のロング仕様にあらず。その理由に納得…中村孝仁
その顔つきから、ホイールベースを延長して3列シートを構築した、『CX-5』のストレッチモデルとばかり思っていた新しい『CX-8』。だが、その実態はそうではなかった。
これまでマツダから、CX-8に関するCX-5との違いについては一切の言及がなかった。だから、試乗させていただくまで、筆者自身もてっきりこのクルマはCX-5のストレッチバーションだと思っていた。ところがどっこい、このクルマのルーツは実は別にあったのである。
その話は後述するとして、とにかくこのクルマ、マツダ的にはやり切った感が非常に強いモデルのような気がする。そもそも、マツダには今、旬な3列シートのモデルが皆無である。そして市場はトヨタ『ノア/ヴォクシー』や日産『セレナ』、あるいはホンダ『ステップワゴン』を見るまでもなく、3列シートと言えば、スライドドアのミニバンである。しかし、グローバルに目を向けると、実はSUVの3列シート版が大流行りで、時代はそちらに流れつつある。そしてマツダはそのグローバルの流れに乗ったというわけだ。しかし、これは日本市場的には大いなる賭け。随分と大胆な賭けに出たような気もしたが、どうやらそれは吉と出たようで、発売からこれまでの受注は非常に好調だという。
試乗してみて感じたことは、ん?CX-5と全然違うじゃん…ということ。とにかく乗り心地は極めて良好で、ディーゼルの透過音もCX-5とはかなり差があって、ほとんど気にならないレベルにまで引き下げられている。色々と話を聞くと、エンジンでも静粛性を高め、さらにはボディ側の遮音性能も上げているという。おかげでアイドリングからほとんどディーゼルを意識することなく乗れる。恐らくパッセンジャーは、我々のようにのべつ幕無しクルマに乗っているような人種以外はそれがディーゼルだとは気付かないのではないかと思うほど静かになった。
最大トルクを450Nmまで高めた改良型2.2リットルディーゼルは、高圧インジェクターからピストン、可変ジオメトリーターボに至るまでとことん手を加え、特に日常的に使う低速域での使い勝手や燃費性能を引き上げている。数値上はこれでCX-5と同等レベルの加速性能を得ているというが、実際に体感する性能はそれを上回り、CX-8の方が速いと感じるほど。そしてこの寸法(全長4900×全幅1840×全高1730mm)と重さ(最も重いモデルで1900kg)にも拘わらず、本当にスイスイと走る。しかも視界に非常に気を使った結果か、一般道でそのサイズ感を感じることはまずない。まあ駐車場に入れる際などは話が別だろうが…。
なおして欲しいと思った点がないわけではない。一番気になるのは、今時どうよと思う7インチのディスプレイ。しかもここに360度ビューと、バックカメラの映像が同居する。だから折角の360ビューなのに小さすぎて確認が難しい。また、3列目のシートを起こした状態の時はそのヘッドレストが視界の妨げになるのだが、そいつを畳むにはテールゲートを開けて後ろから折りたたむ以外の方法がない。つまりドライバーズシートからの操作はできない。さらに、何故か駐車場などのチケット挟むチケットホルダーが、サンバイザーから撤去されて存在しない。等々、細かい改良すべき点はいくつかあるが、3列シートのSUVとしての出来の良さはかなり光るものがある。デザイン的には明らかにCX-5のストレッチバーションではあるのだが、その伸びやかなスタイリングも個人的にはこちらの方が好感が持てる等々、高い評価を与えられるモデルだった。
で、冒頭のタネ明かしであるが、このクルマに使われているプラットフォームは、実はCX-5用ではなく、北米に輸出している全長5mを超える大型SUV、『CX-9』のものを使っているのである。フロアの板厚などは、北米のコンクリートロードを走ることや、ほぼ2トンに達する車重を考慮して、CX-5よりはるかに厚いものが使われているという。高い静粛性や、良好な乗り心地は単にホイールベースを伸ばしたり、車重が重くなった結果ではなく、別物のプラットフォームが使われていることがその理由。お値段もCX-5と比較した時、だいぶ高くなっているが、それは前述した理由があるからである。マツダさん、やってくれます。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
これまでマツダから、CX-8に関するCX-5との違いについては一切の言及がなかった。だから、試乗させていただくまで、筆者自身もてっきりこのクルマはCX-5のストレッチバーションだと思っていた。ところがどっこい、このクルマのルーツは実は別にあったのである。
その話は後述するとして、とにかくこのクルマ、マツダ的にはやり切った感が非常に強いモデルのような気がする。そもそも、マツダには今、旬な3列シートのモデルが皆無である。そして市場はトヨタ『ノア/ヴォクシー』や日産『セレナ』、あるいはホンダ『ステップワゴン』を見るまでもなく、3列シートと言えば、スライドドアのミニバンである。しかし、グローバルに目を向けると、実はSUVの3列シート版が大流行りで、時代はそちらに流れつつある。そしてマツダはそのグローバルの流れに乗ったというわけだ。しかし、これは日本市場的には大いなる賭け。随分と大胆な賭けに出たような気もしたが、どうやらそれは吉と出たようで、発売からこれまでの受注は非常に好調だという。
試乗してみて感じたことは、ん?CX-5と全然違うじゃん…ということ。とにかく乗り心地は極めて良好で、ディーゼルの透過音もCX-5とはかなり差があって、ほとんど気にならないレベルにまで引き下げられている。色々と話を聞くと、エンジンでも静粛性を高め、さらにはボディ側の遮音性能も上げているという。おかげでアイドリングからほとんどディーゼルを意識することなく乗れる。恐らくパッセンジャーは、我々のようにのべつ幕無しクルマに乗っているような人種以外はそれがディーゼルだとは気付かないのではないかと思うほど静かになった。
最大トルクを450Nmまで高めた改良型2.2リットルディーゼルは、高圧インジェクターからピストン、可変ジオメトリーターボに至るまでとことん手を加え、特に日常的に使う低速域での使い勝手や燃費性能を引き上げている。数値上はこれでCX-5と同等レベルの加速性能を得ているというが、実際に体感する性能はそれを上回り、CX-8の方が速いと感じるほど。そしてこの寸法(全長4900×全幅1840×全高1730mm)と重さ(最も重いモデルで1900kg)にも拘わらず、本当にスイスイと走る。しかも視界に非常に気を使った結果か、一般道でそのサイズ感を感じることはまずない。まあ駐車場に入れる際などは話が別だろうが…。
なおして欲しいと思った点がないわけではない。一番気になるのは、今時どうよと思う7インチのディスプレイ。しかもここに360度ビューと、バックカメラの映像が同居する。だから折角の360ビューなのに小さすぎて確認が難しい。また、3列目のシートを起こした状態の時はそのヘッドレストが視界の妨げになるのだが、そいつを畳むにはテールゲートを開けて後ろから折りたたむ以外の方法がない。つまりドライバーズシートからの操作はできない。さらに、何故か駐車場などのチケット挟むチケットホルダーが、サンバイザーから撤去されて存在しない。等々、細かい改良すべき点はいくつかあるが、3列シートのSUVとしての出来の良さはかなり光るものがある。デザイン的には明らかにCX-5のストレッチバーションではあるのだが、その伸びやかなスタイリングも個人的にはこちらの方が好感が持てる等々、高い評価を与えられるモデルだった。
で、冒頭のタネ明かしであるが、このクルマに使われているプラットフォームは、実はCX-5用ではなく、北米に輸出している全長5mを超える大型SUV、『CX-9』のものを使っているのである。フロアの板厚などは、北米のコンクリートロードを走ることや、ほぼ2トンに達する車重を考慮して、CX-5よりはるかに厚いものが使われているという。高い静粛性や、良好な乗り心地は単にホイールベースを伸ばしたり、車重が重くなった結果ではなく、別物のプラットフォームが使われていることがその理由。お値段もCX-5と比較した時、だいぶ高くなっているが、それは前述した理由があるからである。マツダさん、やってくれます。
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(レスポンス 中村 孝仁)
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