【日産 セレナe-POWER 試乗】気遣いの出来るクルマになった…中村孝仁
昨年、即ち2017年、日産『ノート』がコンパクトセグメントにおいて販売台数1位になった。2016年に販売が始まった「e-POWER」がその販売を押し上げた結果である。
そして日産は、ミニバンの中核車種『セレナ』にも、このe-POWERを投入した。ノートを購入するユーザーの7割はe-POWERだというのだから、日産ではこの駆動方式をより拡大販売していきたいと考えるのは当然のことで、日産の提唱するワンペダルドライブもそれによって、より市民権を得ることに繋がるのだと思う。今回の試乗はまだ発売前だったこともあって、クローズドコースの本庄サーキットで行われた。だからもっぱらワンペダルドライブのフィーリングチェックに終始したわけだが、ノートの時から少し変わったところがあるので、先ずはそれを紹介しよう。
それは、ノートにはなかった、「マナーモード」と「チャージモード」というモードボタンが追加されたことである。ナビ画面の右下。ちょうどセンターコンソール中央付近に、人が指を立てて、「し~!」と静かにするようなしぐさをしているボタンがマナーモード。その隣の電池と稲妻マークのボタンがチャージモードである。
簡単に言うと、マナーモードはEVモード。そしてチャージモードは言うまでもなくバッテリーを積極的にチャージするモードである。ハイブリッド車やPHEV車の最も悩ましいところが、EVのみでの走行距離。特に『プリウスPHV』に象徴的に表れたが、初代ではEVモードの走行距離がおおよそ26kmほど。それが2代目に移行した時は大幅に伸びて、おおよそ68kmに拡大されていた。電気自動車はきわめて単純にバッテリーを増やせば増やすほど、航続距離が伸びる。しかし反面バッテリーを積めば積むほど車重が重くなって、いわゆる電費は悪くなるという相反する性格を持っている。だから、特にハイブリッド車やPHEVのEV走行レンジをどのくらいにするかは悩みどころであるのだ。
日産は、e-POWERを「電気自動車の新しい形」と形容するが、これは純然たるハイブリッド車である。だからバッテリーの積載容量は悩みどころで、ノートe-POWERの時はほとんど最小限にして、軽量化を優先した。だから基本的にはEVで走ることはできない。一方のセレナは、バッテリー容量を20%増大させた。そのおかげでバッテリー残量90%で、2.7kmのEV走行を可能とした。これがマナーモードを作れる要因である。
要するにセレナは気遣いの出来るクルマになったというわけで、それはミニバンというクルマの性格を考慮したうえでの設定だったと思う。逆にチャージモードはエンジンをかけて充電を促すモードだが、マナーモードでバッテリーを使い果たすことへの対応と言えばよいだろうが、つまりはマナーモードと「行って来い」の関係にあるわけだ。自宅近くの住宅街はご近所の迷惑を考えて、EVで静かに走ろうという気遣いである。
他にノートとの違いは、モーター出力が25%向上し、エンジン出力も7%向上した。最大トルクはノートの254Nmに対してセレナでは320Nmに増えているが、これはセレナの車重に対応したもので、パフォーマンスアップではない。
ワンペダルでドライブできるのは、「エコ」及び「Sモード」。そしてノーマルモードでは回生が効かないから、ごく普通のクルマのドライブフィールに戻る。このSモード、どうしてもスポーツモードだと思ってしまうのだが、スマートモードという意味なのだそうで、別にパワフルな加速が堪能できるわけではない。エコの場合はパワーに制限がかかって燃費指向になるので、走りは少し緩慢になる。
このe-POWER、「電気自動車の新しい形」ではなくて、昔からある「シリーズハイブリッド」というやつなのだが、要するにガソリンエンジンは発電を司るジェネレーターに専念し、パワーを路面に伝えるのはあくまでも電気モーターという仕組み。結論から言って僕は「有り」だと思う。
電気自動車のレンジエクステンダーというやつがこれに相当する。シボレー『ボルト』だったリ、BMW『i3』 のレンジエクステンダーなどがそうなのだが、モーターの特性上、発進時から最大トルクが出るので発進が滑らかだし力強い。それに回生を強力に効かせたワンペダルにすれば、本当に日常の走りでブレーキに足を置く回数が減り、何となく楽しみながら運転もできる。セレナは遮音性を強化したことでエンジンの透過音も小さくなり、突然エンジンがかかってもほとんど気にならない。それに作りもシンプルに出来る。願わくば、アクセルオフにした時にブレーキランプが付いているか否かを確認できる仕組みが装備されると良いのだが…。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
そして日産は、ミニバンの中核車種『セレナ』にも、このe-POWERを投入した。ノートを購入するユーザーの7割はe-POWERだというのだから、日産ではこの駆動方式をより拡大販売していきたいと考えるのは当然のことで、日産の提唱するワンペダルドライブもそれによって、より市民権を得ることに繋がるのだと思う。今回の試乗はまだ発売前だったこともあって、クローズドコースの本庄サーキットで行われた。だからもっぱらワンペダルドライブのフィーリングチェックに終始したわけだが、ノートの時から少し変わったところがあるので、先ずはそれを紹介しよう。
それは、ノートにはなかった、「マナーモード」と「チャージモード」というモードボタンが追加されたことである。ナビ画面の右下。ちょうどセンターコンソール中央付近に、人が指を立てて、「し~!」と静かにするようなしぐさをしているボタンがマナーモード。その隣の電池と稲妻マークのボタンがチャージモードである。
簡単に言うと、マナーモードはEVモード。そしてチャージモードは言うまでもなくバッテリーを積極的にチャージするモードである。ハイブリッド車やPHEV車の最も悩ましいところが、EVのみでの走行距離。特に『プリウスPHV』に象徴的に表れたが、初代ではEVモードの走行距離がおおよそ26kmほど。それが2代目に移行した時は大幅に伸びて、おおよそ68kmに拡大されていた。電気自動車はきわめて単純にバッテリーを増やせば増やすほど、航続距離が伸びる。しかし反面バッテリーを積めば積むほど車重が重くなって、いわゆる電費は悪くなるという相反する性格を持っている。だから、特にハイブリッド車やPHEVのEV走行レンジをどのくらいにするかは悩みどころであるのだ。
日産は、e-POWERを「電気自動車の新しい形」と形容するが、これは純然たるハイブリッド車である。だからバッテリーの積載容量は悩みどころで、ノートe-POWERの時はほとんど最小限にして、軽量化を優先した。だから基本的にはEVで走ることはできない。一方のセレナは、バッテリー容量を20%増大させた。そのおかげでバッテリー残量90%で、2.7kmのEV走行を可能とした。これがマナーモードを作れる要因である。
要するにセレナは気遣いの出来るクルマになったというわけで、それはミニバンというクルマの性格を考慮したうえでの設定だったと思う。逆にチャージモードはエンジンをかけて充電を促すモードだが、マナーモードでバッテリーを使い果たすことへの対応と言えばよいだろうが、つまりはマナーモードと「行って来い」の関係にあるわけだ。自宅近くの住宅街はご近所の迷惑を考えて、EVで静かに走ろうという気遣いである。
他にノートとの違いは、モーター出力が25%向上し、エンジン出力も7%向上した。最大トルクはノートの254Nmに対してセレナでは320Nmに増えているが、これはセレナの車重に対応したもので、パフォーマンスアップではない。
ワンペダルでドライブできるのは、「エコ」及び「Sモード」。そしてノーマルモードでは回生が効かないから、ごく普通のクルマのドライブフィールに戻る。このSモード、どうしてもスポーツモードだと思ってしまうのだが、スマートモードという意味なのだそうで、別にパワフルな加速が堪能できるわけではない。エコの場合はパワーに制限がかかって燃費指向になるので、走りは少し緩慢になる。
このe-POWER、「電気自動車の新しい形」ではなくて、昔からある「シリーズハイブリッド」というやつなのだが、要するにガソリンエンジンは発電を司るジェネレーターに専念し、パワーを路面に伝えるのはあくまでも電気モーターという仕組み。結論から言って僕は「有り」だと思う。
電気自動車のレンジエクステンダーというやつがこれに相当する。シボレー『ボルト』だったリ、BMW『i3』 のレンジエクステンダーなどがそうなのだが、モーターの特性上、発進時から最大トルクが出るので発進が滑らかだし力強い。それに回生を強力に効かせたワンペダルにすれば、本当に日常の走りでブレーキに足を置く回数が減り、何となく楽しみながら運転もできる。セレナは遮音性を強化したことでエンジンの透過音も小さくなり、突然エンジンがかかってもほとんど気にならない。それに作りもシンプルに出来る。願わくば、アクセルオフにした時にブレーキランプが付いているか否かを確認できる仕組みが装備されると良いのだが…。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
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フットワーク:★★★★
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