【三菱 エクリプスクロス 試乗】CX-5 や C-HR に対抗できる“武器”はあるか…中村孝仁
かなり上から目線で恐縮だが、試乗を終えて「なんだ、やればできるじゃん…」という印象を受けてしまった。それはこのクルマのハンドリングについてである。
三菱のSUVと言えば、今は『アウトランダー』と『RVR』。しかしそのどちらも、印象としては『パジェロ』時代のハンドリングを継承していて、中心付近があいまいで操舵系にオフロード車っぽさを残した味付けとされていた。ところが、新しいエクリプスクロスはその印象が大幅に希釈されて、かなりクィックで溌剌としたオンロードでの走りを披露してくれる。
大きく変わった理由は、ステアリングギア比のクイック化(アウトランダー比でロックトゥロックが3.3回転から2.9回転に縮小)、ボディ骨格の強化によるねじり剛性のアップ、それにオーバーハングの縮小化による回答性の良さ等々によるものと思われるが、何よりもオフロード車っぽさを希釈しようという開発の狙いがあったのではないかと推測する。
このクルマ、市場的にはコンパクトSUVというジャンルに属し、現行RVRとはまともにその市場がぶつかる。勿論現在は併売されているものの、いずれはRVRに取って代わるクルマという位置づけで良いだろう。
このハンドリングにとどまらず、新しいエクリプスクロスは色々と新しい三菱を印象付けるクルマとなっている。ハンドリングの次に感心したのが静粛性の高さである。新しいエンジンも、音源としての役割が小さくなっているのかもしれないが、耳周辺に届く音が全体としてとても小さい。聞けば特にシールド性とトーボードから入る透過音減少に留意しているという。音が静かになると、乗ったイメージそのものに高級感を与えるから、クルマの印象が一段高くなる。当然比較対象となるのはRVR、ということになるのだが、いずれ消えゆくクルマとはいえ、少々比較するのが気の毒になるほどの違いである。
インフォテイメント系や操作系も大きく進化した。「Gプラスパッケージ」という最上位機種には、スマートフォンと連携するディスプレイオーディオが標準装備される。これに連動してセンターコンソールにはタッチパッドコントローラーも標準装備だ。果たしてダイヤル式のコントローラーとどちらが操作しやすいかというと、いささか疑問符が付くが、まあ、慣れの問題で、個人的にダイヤルコントローラーが装備されたクルマに乗っているからそう感じるだけだと思う。少なくともかなり直感的に操作できて、慣れれば使い易そうに感じられた。さらに、ヘッドアップディスプレイも標準装備である。ただ、透過式のため、ウィンドウに直接投影するタイプではない。
問題はナビゲーションだ。このディスプレイオーディオは、基本的にスマホと連動するナビを使うことが前提となり、iPhoneの場合はApple CarPlayしか使えない。正直、Apple CarPlayのナビは全く使い物にならないだけに、この点だけは困りものだ。勿論Gプラスパッケージ以下のグレードの場合、この位置にナビゲーションがオプション装備される構造になっている。ただし、その場合はタッチコントロールなどもなくなる。エクリプスクロスで新しさに触れようと思ったら、Gプラスパッケージしかないというのが現状だが、そうするとナビは使いづらいという背反する事情に突き当たるのだ。
新しい1.5リットルの直噴ターボユニットは、必要十分なパフォーマンスを有していて、前述したようにエンジンそのものの静粛性も高くなっているのか、上まで回して行っても十分に高い静粛性を持ち、性能的な不満もない。そして組み合わされるトランスミッションはCVTなのだが、ステップを付けてパドルで操作できる疑似8速が味わえる。しかし、操作してみてもCVTそのものの出来が良くなっていて、敢えてマニュアル操作する必要性はまるで感じられず、日本で使う限りはパドルはいらないという印象である。
売りは何ですか?という問いに対し、デザインと機能性という答えが返ってきた。そしてライバルは何ですか?という問いには、トヨタ『C-HR』、ホンダ『ヴェゼル』、マツダ『CX-5』という答えが返ってきた。??マツダは『CX-3』じゃないの?と聞き返すと、CX-5なのだそうである。これらライバルに対し、少なくともC-HRとCX-5には、これでなくてはダメという武器がある。即ち、尖ったデザインとディーゼルだ。こうした武器に対して、エクリプスクロスが売りとする強力な武器があるかというと、その点は少々希薄な印象も受けた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
三菱のSUVと言えば、今は『アウトランダー』と『RVR』。しかしそのどちらも、印象としては『パジェロ』時代のハンドリングを継承していて、中心付近があいまいで操舵系にオフロード車っぽさを残した味付けとされていた。ところが、新しいエクリプスクロスはその印象が大幅に希釈されて、かなりクィックで溌剌としたオンロードでの走りを披露してくれる。
大きく変わった理由は、ステアリングギア比のクイック化(アウトランダー比でロックトゥロックが3.3回転から2.9回転に縮小)、ボディ骨格の強化によるねじり剛性のアップ、それにオーバーハングの縮小化による回答性の良さ等々によるものと思われるが、何よりもオフロード車っぽさを希釈しようという開発の狙いがあったのではないかと推測する。
このクルマ、市場的にはコンパクトSUVというジャンルに属し、現行RVRとはまともにその市場がぶつかる。勿論現在は併売されているものの、いずれはRVRに取って代わるクルマという位置づけで良いだろう。
このハンドリングにとどまらず、新しいエクリプスクロスは色々と新しい三菱を印象付けるクルマとなっている。ハンドリングの次に感心したのが静粛性の高さである。新しいエンジンも、音源としての役割が小さくなっているのかもしれないが、耳周辺に届く音が全体としてとても小さい。聞けば特にシールド性とトーボードから入る透過音減少に留意しているという。音が静かになると、乗ったイメージそのものに高級感を与えるから、クルマの印象が一段高くなる。当然比較対象となるのはRVR、ということになるのだが、いずれ消えゆくクルマとはいえ、少々比較するのが気の毒になるほどの違いである。
インフォテイメント系や操作系も大きく進化した。「Gプラスパッケージ」という最上位機種には、スマートフォンと連携するディスプレイオーディオが標準装備される。これに連動してセンターコンソールにはタッチパッドコントローラーも標準装備だ。果たしてダイヤル式のコントローラーとどちらが操作しやすいかというと、いささか疑問符が付くが、まあ、慣れの問題で、個人的にダイヤルコントローラーが装備されたクルマに乗っているからそう感じるだけだと思う。少なくともかなり直感的に操作できて、慣れれば使い易そうに感じられた。さらに、ヘッドアップディスプレイも標準装備である。ただ、透過式のため、ウィンドウに直接投影するタイプではない。
問題はナビゲーションだ。このディスプレイオーディオは、基本的にスマホと連動するナビを使うことが前提となり、iPhoneの場合はApple CarPlayしか使えない。正直、Apple CarPlayのナビは全く使い物にならないだけに、この点だけは困りものだ。勿論Gプラスパッケージ以下のグレードの場合、この位置にナビゲーションがオプション装備される構造になっている。ただし、その場合はタッチコントロールなどもなくなる。エクリプスクロスで新しさに触れようと思ったら、Gプラスパッケージしかないというのが現状だが、そうするとナビは使いづらいという背反する事情に突き当たるのだ。
新しい1.5リットルの直噴ターボユニットは、必要十分なパフォーマンスを有していて、前述したようにエンジンそのものの静粛性も高くなっているのか、上まで回して行っても十分に高い静粛性を持ち、性能的な不満もない。そして組み合わされるトランスミッションはCVTなのだが、ステップを付けてパドルで操作できる疑似8速が味わえる。しかし、操作してみてもCVTそのものの出来が良くなっていて、敢えてマニュアル操作する必要性はまるで感じられず、日本で使う限りはパドルはいらないという印象である。
売りは何ですか?という問いに対し、デザインと機能性という答えが返ってきた。そしてライバルは何ですか?という問いには、トヨタ『C-HR』、ホンダ『ヴェゼル』、マツダ『CX-5』という答えが返ってきた。??マツダは『CX-3』じゃないの?と聞き返すと、CX-5なのだそうである。これらライバルに対し、少なくともC-HRとCX-5には、これでなくてはダメという武器がある。即ち、尖ったデザインとディーゼルだ。こうした武器に対して、エクリプスクロスが売りとする強力な武器があるかというと、その点は少々希薄な印象も受けた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
最新ニュース
-
-
『これはいるのか?』ストリートカーでも使える? ロールバーの選び方と装着のコツ~カスタムHOW TO~
2024.11.19
-
-
-
「クルマファンを増やす」ため茨城のトヨタディーラーが結集! その核となる「茨城ワクドキクラブ」が目指す先
2024.11.19
-
-
-
レクサスの3列シート大型SUV『TX』に「Fスポーツハンドリング」追加
2024.11.19
-
-
-
NISMOフェスティバル、ブランド40周年で富士スピードウェイに歴代レーシングカー集結 12月1日開催
2024.11.19
-
-
-
トムス、キッズEVカート無料体験イベント開催、全日本カート選手権EV部門最終戦で
2024.11.18
-
-
-
アキュラ、新型コンパクトSUV『ADX』発表…1.5リットルVTECターボ搭載
2024.11.18
-
-
-
イチオシ機能の“実効空力”は本物なのか? ホンダアクセス「モデューロ」が30周年!
2024.11.18
-
最新ニュース
-
-
『これはいるのか?』ストリートカーでも使える? ロールバーの選び方と装着のコツ~カスタムHOW TO~
2024.11.19
-
-
-
「クルマファンを増やす」ため茨城のトヨタディーラーが結集! その核となる「茨城ワクドキクラブ」が目指す先
2024.11.19
-
-
-
NISMOフェスティバル、ブランド40周年で富士スピードウェイに歴代レーシングカー集結 12月1日開催
2024.11.19
-
-
-
レクサスの3列シート大型SUV『TX』に「Fスポーツハンドリング」追加
2024.11.19
-
-
-
トムス、キッズEVカート無料体験イベント開催、全日本カート選手権EV部門最終戦で
2024.11.18
-
-
-
アキュラ、新型コンパクトSUV『ADX』発表…1.5リットルVTECターボ搭載
2024.11.18
-
MORIZO on the Road