【アルファロメオ ステルヴィオ 試乗】紛れもないワン・アンド・オンリーの存在なのである…中村孝仁

アルファロメオ ステルヴィオ
まあ、それにしても世の中SUVで溢れ返っている。いま、SUVを持たない著名ブランドとしては、フェラーリとアストンマーチンが数えられる程度。この2社だって、いつSUVを出してくるかわからない。

それほど今の自動車メーカーにとって、SUVの存在は金の成る木なのである。そんな中、アルファロメオも満を持してこの市場に参入した。と言ってもかなり勿体をつけて、だいぶ以前から出すぞ、出すぞというポーズは取っていたから、まあ、満を持してというよりもようやく…という感が強い。

世界的には2016年のLAショーで初見参。しかし、アルファがSUVのコンセプトを披露したのはそれより遥か前の2003年に遡るのである。この頃からすでにSUVの計画は温めていて世界中で認知されていたから、ようやくなのである。ただ、アルファにとってこのようやくは、価値があったように思う。

というのも、この『ステルヴィオ』に使われている「ジョルジョ」というコードネームを持つプラットフォームが完成したのは、おおよそ2014年頃のことだったからだ。つまりそれ以前は仮にSUVが登場したとしても、ことによるとFWDベースだったかもしれないからである。ご存知の通り、ジョルジョ・プラットフォームはアルファの『ジュリア』に使われてデビューしたもので、ステルビオ用として若干のモディファイは施されているものの、基本は同じ。つまり、ジュリアのSUV版だと思えばよい。勿論エンジンだって、インテリアだって、ほぼジュリアと軌を一にする。

数多あるSUVの中で、このクルマを敢えて「ワン・アンド・オンリー」だと評するのは、その走りにある。これだけ数が増えてくると、正直言って特徴を出すのはなかなか難しい。アルファといえばすぐに思い浮かぶのはスポーティーな雰囲気。しかし、単純にスポーティーなSUVというと、例えばポルシェ『マカン』だったリ、ジャガー『F-PACE』だったりがいるし、高性能となれば、Mのマークを付けたBMWや、AMGのマークを付けたメルセデス。それにRが付いたアウディ等々…まあいくらでもライバルがいるのである。

では、ステルヴィオがそんな中で際立った個性を放つためにはどうしたらよいか。これはかなり難しい命題であったはずで、数を稼ごうと思えば世間に迎合した無難にまとめた高性能&スポーティーに終始する。これ、ブランドがしっかりと認知されたメーカーであるならそれでよい。しかし、アルファ…確かに100年以上の歴史を持つし、有名ブランドである。だが、メルセデスやBMW、あるいはポルシェやアウディと並ぶ存在か?答えは否であろう。そもそも、アルファロメオ…大丈夫?というのが日本市場におけるアルファロメオというブランドの認識かもしれない。だから、そんなブランドがライバルと同じことをやって対等に戦えるはずなど皆無なのである。

では、彼らが何をやったか。それはジュリアをそのままSUVにすることだった。ご存知の通り、ジュリアは相当にキャラの立ったスポーティーセダンで、そのステアリングが異様にクィックなことは既にお伝えしている。ステルヴィオは見事にそれをやってのけた。

SUVというのは、根源的にはオフロードにも分け入る能力を有するクルマという認識があったのだが、ステルヴィオはまさに「そんなの関係ねぇ!」と言わんばかり。サスペンションの縦方向のダンピングとスプリングのレートは極端に硬いわけではなく、路面を適度にいなしてくれる。ところが横方向だ。高速コーナリングを試みると、驚くほど目線が傾かない。つまりコーナリングをしても、ほとんどロールが起きないのである。だから、まるでクルマが横移動しているような感覚に陥る。しかもその粘り腰…もう信じ難いほどの横Gを発生させる上、きっちりと路面を捉えて離さない。

エンジンはジュリア・ヴェローチェと同じ280psの2リットル直4ターボだ。まあ性能的には他の高性能SUVと比べたら大したことはないかもしれないが、そのシャープなハンドリングのシャシーと合体した時は、ゾクゾクするような走りが味わえる。

というわけでステルビオ、他に類を見ない運動性能を持つSUVとして、紛れもないワン・アンド・オンリーの存在なのである。だから、必ずしも万人に受け入れられる存在のモデルではない。それに相変わらずナビは設定すらなく、例によってスマホに頼るしかない。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来39年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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