【ホンダ N-VAN 試乗】軽バン界に風穴を開けるほどの走行性能、“お一人様”仕様は念頭に…青山尚暉
働く軽バンと言えば、ダイハツ『ハイゼットカーゴ』やスズキ『エブリイ』など、これまで運転席下にエンジンを搭載するキャブオーバーレイアウトが基本だった。
フロアが高くなってもそうする理由は、軽自動車の限られた荷室空間の中でも最大荷室長が命。そこでボンネットのない、前席をギリギリ前に出せ、荷室長を最大限にとれるレイアウトがマストだったからである。
ところが、ホンダ『N-VAN』はNシリーズの一員であり、『N-BOX』がベース。つまりボンネットの下にエンジンを搭載するFFレイアウトなのだ。となると荷室長では不利。実際、後席格納時の荷室長は約1585mm。ライバルの約1950mmに及ばない。そこでホンダが考えたのが、センタータンクレイアウトならではの低床を生かした後席&助手席ダイブダウン格納による、助手席側のキャブオーバー車同等の最大荷室長の実現。しかも助手席側センターピラーレス構造を盛り込み、車体側面、後方の両側から大きく長い荷物の積載を楽々可能にしたというわけだ。
ハードな仕事もこなせそうな乗り心地
そんなN-VANのNAモデルの走行性能はどうかと言えば、軽バン界に風穴を開けるほどの仕上がりだった。エンジン、CVTは基本的に定評ある、というか軽自動車界NO.1と言えるユニットを流用しつつ、最大350kgの積載に対処するため、エンジンは低速寄りのトルクを増強。CVTもギヤリングを低め、加速方向に振ったチューニングが施されている(ターボはエンジン、CVTともにN-BOX ターボと同一仕様)。
結果、驚くことに、出足の加速感はまるでモーターアシストがあるようなスムーズさとトルクを感じさせるものになっている。ズバリ、N-BOXより気持ち良くトルキーに加速してくれるのだ。しかも、試乗車は軽バンの荷物平均積載重量約100kg(ホンダ調べ)の荷物を積んでいても、ちょっとした坂道もすいすい登る。その力強さは下手な軽ターボ並みと言っていいほどだ。
動力源は53ps、6.5kg-mでしかないため、活発な加速力を得るにはアクセルペダルをそれなりに踏み込み、エンジンを回す必要があるものの、高回転域を使っても耳障りなノイズとは無縁。だから走りに余裕があるように感じられるのかもしれない。
乗り心地も良路ならN-BOX並みに快適で、操縦性も軽バン専用の12インチタイヤと1945mmもの全高を感じにくい安定感を持ち合わせているからゴキゲンだ。N-VANならハードな仕事も、少なくとも運転中はストレスなくこなせそう。
基本は“お一人様”仕様
ただし、気になった部分もある。まずは、ハードに働く人のためにタフに仕上げ、サポート性にもこだわったという運転席。荷室長をかせぐためか座面が短めで、シート表皮は破れに強くするため張りが硬く、ボクの体形ではどうにもかけ心地がしっくりこなかった。
つぎに、基本的に乗り心地いいいのだが、キツい段差を乗り越えたときにはガシャン、ドシンという大きめのショックが発生しがち。これは前後して乗ったN-BOXにはない現象。また、後席&助手席がダイブダウン格納でフルフラットにアレンジできるのは便利なものの、助手席をダイブダウン格納する際、シートがダッシュボード下にほんの少しとはいえ、かすって(当たって)しまうのが惜しまれる。もし、毎日のようにアレンジしていると、いつか破れてしまいそうで…。
もし、N-VANを働くクルマとしてではなく、軽バンで唯一、250ccのバイクがそのまま積めたりする超積載性(フロアの低さが効いている)、使い勝手の良さからホビーユースに活用したい…と思っているなら、基本“お一人様”仕様である点を頭に入れておいてほしい。助手席は格納前提の補助席そのものだし、後席もリクライニング&スライドなしの、軽バンならではの簡易シートだからだ(短距離ならOK)。それを理解した上で手に入れるなら、N-VANはめっぽう使い勝手のいい軽バン、ホビーカーとしても大活躍してくれるはずである。車内はタフで汚れにくい素材を使っているから、大型犬などペットを乗せるのにも向いていそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
ペットフレンドリー度:★★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、ラジオ番組の出演、イベントも手がけ、愛犬との安心快適な自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動、自動車用ペットアクセサリーの企画・開発も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。
(レスポンス 青山尚暉)
フロアが高くなってもそうする理由は、軽自動車の限られた荷室空間の中でも最大荷室長が命。そこでボンネットのない、前席をギリギリ前に出せ、荷室長を最大限にとれるレイアウトがマストだったからである。
ところが、ホンダ『N-VAN』はNシリーズの一員であり、『N-BOX』がベース。つまりボンネットの下にエンジンを搭載するFFレイアウトなのだ。となると荷室長では不利。実際、後席格納時の荷室長は約1585mm。ライバルの約1950mmに及ばない。そこでホンダが考えたのが、センタータンクレイアウトならではの低床を生かした後席&助手席ダイブダウン格納による、助手席側のキャブオーバー車同等の最大荷室長の実現。しかも助手席側センターピラーレス構造を盛り込み、車体側面、後方の両側から大きく長い荷物の積載を楽々可能にしたというわけだ。
ハードな仕事もこなせそうな乗り心地
そんなN-VANのNAモデルの走行性能はどうかと言えば、軽バン界に風穴を開けるほどの仕上がりだった。エンジン、CVTは基本的に定評ある、というか軽自動車界NO.1と言えるユニットを流用しつつ、最大350kgの積載に対処するため、エンジンは低速寄りのトルクを増強。CVTもギヤリングを低め、加速方向に振ったチューニングが施されている(ターボはエンジン、CVTともにN-BOX ターボと同一仕様)。
結果、驚くことに、出足の加速感はまるでモーターアシストがあるようなスムーズさとトルクを感じさせるものになっている。ズバリ、N-BOXより気持ち良くトルキーに加速してくれるのだ。しかも、試乗車は軽バンの荷物平均積載重量約100kg(ホンダ調べ)の荷物を積んでいても、ちょっとした坂道もすいすい登る。その力強さは下手な軽ターボ並みと言っていいほどだ。
動力源は53ps、6.5kg-mでしかないため、活発な加速力を得るにはアクセルペダルをそれなりに踏み込み、エンジンを回す必要があるものの、高回転域を使っても耳障りなノイズとは無縁。だから走りに余裕があるように感じられるのかもしれない。
乗り心地も良路ならN-BOX並みに快適で、操縦性も軽バン専用の12インチタイヤと1945mmもの全高を感じにくい安定感を持ち合わせているからゴキゲンだ。N-VANならハードな仕事も、少なくとも運転中はストレスなくこなせそう。
基本は“お一人様”仕様
ただし、気になった部分もある。まずは、ハードに働く人のためにタフに仕上げ、サポート性にもこだわったという運転席。荷室長をかせぐためか座面が短めで、シート表皮は破れに強くするため張りが硬く、ボクの体形ではどうにもかけ心地がしっくりこなかった。
つぎに、基本的に乗り心地いいいのだが、キツい段差を乗り越えたときにはガシャン、ドシンという大きめのショックが発生しがち。これは前後して乗ったN-BOXにはない現象。また、後席&助手席がダイブダウン格納でフルフラットにアレンジできるのは便利なものの、助手席をダイブダウン格納する際、シートがダッシュボード下にほんの少しとはいえ、かすって(当たって)しまうのが惜しまれる。もし、毎日のようにアレンジしていると、いつか破れてしまいそうで…。
もし、N-VANを働くクルマとしてではなく、軽バンで唯一、250ccのバイクがそのまま積めたりする超積載性(フロアの低さが効いている)、使い勝手の良さからホビーユースに活用したい…と思っているなら、基本“お一人様”仕様である点を頭に入れておいてほしい。助手席は格納前提の補助席そのものだし、後席もリクライニング&スライドなしの、軽バンならではの簡易シートだからだ(短距離ならOK)。それを理解した上で手に入れるなら、N-VANはめっぽう使い勝手のいい軽バン、ホビーカーとしても大活躍してくれるはずである。車内はタフで汚れにくい素材を使っているから、大型犬などペットを乗せるのにも向いていそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★
ペットフレンドリー度:★★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、ラジオ番組の出演、イベントも手がけ、愛犬との安心快適な自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動、自動車用ペットアクセサリーの企画・開発も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。
(レスポンス 青山尚暉)
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