【ホンダ N-VAN 試乗】軽バンとしては完全に「格上」である…中村孝仁
働くクルマとしての「N-VAN」
18万5760円。この金額、何だかお解りだろうか。これは今回試乗したホンダ『N-VAN L』のCVT仕様の価格と、そのライバルと思われる、ダイハツ『ハイゼットカーゴ デラックスSA-III』との価格差である。
どちらも営業車として想定される軽バンのデラックス仕様だ。とある企業のオーナー社長に聞いてみた。「営業車にかけるお金として高いクルマを買おうとした場合、どのくらいの価格差に目をつぶれるか?」と。その答えは10万円。つまりN-VANの場合、会社が営業車としてリース、あるいは購入(実際に購入してしまうケースはほとんど無いようだが)するためには、まさに予算オーバー…ということになる。
にもかかわらずN-VANはデビュー以来絶好調で売れていて、その台数は目標の4倍以上。そして営業車として想定されるG/Lシリーズが、全体の4割程度を占めているというから、ちゃんと働くクルマとして売れているじゃないか…と思うのだが、この働くクルマの大半は、ほぼ間違いなく個人商店のオーナーさんといったところで、趣味性も高いオーナーが購入しているものと思われる。
営業車としてのN-VANは、不利なところがある。その一つが荷室長の短いことだ。営業車として荷物を積む場合、奥行きはかなり重要な要素となるようで、数センチの差がモノが載るか載らないかの差となるのだそうだ。その点N-VANは、ドライバーズシート背後からの荷室長が1510mmと、1755mmのハイゼットカーゴと比較して200mm以上も短い。もっとも価格とこの荷室長以外で、N-VANがハイゼットカーゴに劣る点は皆無であった。
ほかの軽バンとは走りが違う
すでに多くのメディアが紹介している、助手席まで床下にダイブダウンさせて荷室空間とし、左サイドをピラーレス化して積載の利便性を図った点などは、荷物を積むうえでもむしろ他のライバルを凌駕して優位になるとも考えられた。それに荷物を固定するフックの存在も、特にバイクを想定したような骨太のものが床にあるなど、如何にもバイクを作るホンダならではのアイデアで、こうした点に共感できるユーザーも恐らく多いと思う。
そして何よりも、営業車として試乗した場合のクルマの性能。これはまさにライバルを完全に蹴散らして、格の違いを見せつめるほどの出来の良さを誇っていた。流石に『N-BOX』をベースにしただけのことはあり、走りの点では全く手を抜いていない。例えば、コーナリング性能であったり、直進安定性の高さであったり、ステアリングフィールなどは、敢えてライバルと呼ばせてもらう他のキャブオーバー型軽バンとは、ライバル視することさえ憚るほどの差がある。
ダイハツもスマアシ3を装備したモデルをハイゼットカーゴに用意したが、ホンダセンシングが標準装備となるN-VANの場合、このカテゴリーにして何とACCが用意されているのだ。流石に30km/hを切ってしまうとそれはキャンセルされてしまうが、高速での移動が、これの存在で疲労度半減と言っても過言ではない。
最近は高速を移動する際に必ずこのACCが付いているクルマはそれをテストするよう心がけているが、それがあると無いとでは、本当に到着後の疲労度が違うのである。だから、ビジネスの効率化という点でも18万円以上の差を補って余りあると考えてしまうのは、金勘定をしないモータージャーナリストならではの考え方かもしれないが、世の中にこうしたクルマが増えてくると、余計な交通トラブルが減少する気がしてならないわけである。
明確なコンセプトと別次元の使いやすさ
一方で、室内のドライバーズシート以外のすべてのシートを、床下収納させることによって犠牲になったのが、助手席の座り心地。写真で見てもわかる通り、そのサイズはドライバーズシートに比べて小さく、そしてクッションも薄い。つまり、このクルマで天国なのはドライバーズシートだけ、ということになる。そのドライバーズシートには何とアームレストすら付くのだから、これはもう天と地の差だ。
N-VANは極めて明確なコンセプトを持ったクルマの一台。あれもこれもつかない代わりに、付いているものはとても使いやすく有益である。そしてもし、同じ俎上にキャブオーバー型ライバルをのせた場合、その差は極めて大きく、正直別次元のクルマといっても差し支えないほどよくできていた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★(ドライバーズシートのみ)
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
18万5760円。この金額、何だかお解りだろうか。これは今回試乗したホンダ『N-VAN L』のCVT仕様の価格と、そのライバルと思われる、ダイハツ『ハイゼットカーゴ デラックスSA-III』との価格差である。
どちらも営業車として想定される軽バンのデラックス仕様だ。とある企業のオーナー社長に聞いてみた。「営業車にかけるお金として高いクルマを買おうとした場合、どのくらいの価格差に目をつぶれるか?」と。その答えは10万円。つまりN-VANの場合、会社が営業車としてリース、あるいは購入(実際に購入してしまうケースはほとんど無いようだが)するためには、まさに予算オーバー…ということになる。
にもかかわらずN-VANはデビュー以来絶好調で売れていて、その台数は目標の4倍以上。そして営業車として想定されるG/Lシリーズが、全体の4割程度を占めているというから、ちゃんと働くクルマとして売れているじゃないか…と思うのだが、この働くクルマの大半は、ほぼ間違いなく個人商店のオーナーさんといったところで、趣味性も高いオーナーが購入しているものと思われる。
営業車としてのN-VANは、不利なところがある。その一つが荷室長の短いことだ。営業車として荷物を積む場合、奥行きはかなり重要な要素となるようで、数センチの差がモノが載るか載らないかの差となるのだそうだ。その点N-VANは、ドライバーズシート背後からの荷室長が1510mmと、1755mmのハイゼットカーゴと比較して200mm以上も短い。もっとも価格とこの荷室長以外で、N-VANがハイゼットカーゴに劣る点は皆無であった。
ほかの軽バンとは走りが違う
すでに多くのメディアが紹介している、助手席まで床下にダイブダウンさせて荷室空間とし、左サイドをピラーレス化して積載の利便性を図った点などは、荷物を積むうえでもむしろ他のライバルを凌駕して優位になるとも考えられた。それに荷物を固定するフックの存在も、特にバイクを想定したような骨太のものが床にあるなど、如何にもバイクを作るホンダならではのアイデアで、こうした点に共感できるユーザーも恐らく多いと思う。
そして何よりも、営業車として試乗した場合のクルマの性能。これはまさにライバルを完全に蹴散らして、格の違いを見せつめるほどの出来の良さを誇っていた。流石に『N-BOX』をベースにしただけのことはあり、走りの点では全く手を抜いていない。例えば、コーナリング性能であったり、直進安定性の高さであったり、ステアリングフィールなどは、敢えてライバルと呼ばせてもらう他のキャブオーバー型軽バンとは、ライバル視することさえ憚るほどの差がある。
ダイハツもスマアシ3を装備したモデルをハイゼットカーゴに用意したが、ホンダセンシングが標準装備となるN-VANの場合、このカテゴリーにして何とACCが用意されているのだ。流石に30km/hを切ってしまうとそれはキャンセルされてしまうが、高速での移動が、これの存在で疲労度半減と言っても過言ではない。
最近は高速を移動する際に必ずこのACCが付いているクルマはそれをテストするよう心がけているが、それがあると無いとでは、本当に到着後の疲労度が違うのである。だから、ビジネスの効率化という点でも18万円以上の差を補って余りあると考えてしまうのは、金勘定をしないモータージャーナリストならではの考え方かもしれないが、世の中にこうしたクルマが増えてくると、余計な交通トラブルが減少する気がしてならないわけである。
明確なコンセプトと別次元の使いやすさ
一方で、室内のドライバーズシート以外のすべてのシートを、床下収納させることによって犠牲になったのが、助手席の座り心地。写真で見てもわかる通り、そのサイズはドライバーズシートに比べて小さく、そしてクッションも薄い。つまり、このクルマで天国なのはドライバーズシートだけ、ということになる。そのドライバーズシートには何とアームレストすら付くのだから、これはもう天と地の差だ。
N-VANは極めて明確なコンセプトを持ったクルマの一台。あれもこれもつかない代わりに、付いているものはとても使いやすく有益である。そしてもし、同じ俎上にキャブオーバー型ライバルをのせた場合、その差は極めて大きく、正直別次元のクルマといっても差し支えないほどよくできていた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★(ドライバーズシートのみ)
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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