【三菱 アウトランダーPHEV 新型試乗】新エンジンの効果絶大、EV的にも使えるSUV…片岡英明
2013年にセンセーショナルなデビューを飾った三菱の『アウトランダーPHEV』は、5年間に16万台を超える販売を記録した。日本だけでなく海外にもファンは多い。
プラグインハイブリッドは増え続けているが、他車と大きく違うのは4WDシステムを採用していることである。PHEVを名乗っていることから分かるようにEV(電気自動車)に近い性格だが、従来モデルは意外に早くエンジンがかかった。そこで2019モデルはパワートレインの主要構成部品の約90%を変え、駆動用バッテリーの容量は12kWhから13.5kWhに15%も増やしている。バッテリーとジェネレーターの出力は10%高めるなど、PHEVシステムを大きく進化させた。
また、エンジンを2.0リットルからアトキンソンサイクルの2.4リットル直列4気筒DOHCに換装し、余裕ある走りを生み出している。可変バルブタイミング機構付きの新しいエンジンを得た効果は絶大だ。ツインモーター4WDの活躍の場が増え、暖気が済んだ後の走行ではエンジンがかかる頻度が大幅に減った。満充電でEV走行できる距離は60kmから65kmに延び、EVでの最高速度も135km/hを可能にしている。
剛性感アップで、走りも楽しく
今まではエンジンがかかるとはっきり分かった。が、新型はつながりが滑らかになり、分かりにくい。加速してエンジンがかかったときも従来モデルよりエンジン回転を低く抑えている。だから静粛性も向上した。400ccの排気量拡大と制御の変更によって扱いやすさを増しているし、加速も冴えている。とくにスポーツモードを選ぶと応答レスポンスは鋭くなり、スピードの乗りもいい。気持ちいい加速フィールを満喫できるなど、モーターの存在感が強まった。実用燃費はそれなりだが、モーターを上手に使えば出費は大きく減らせるだろう。
ハンドリングも軽やかだ。19年モデルはS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)の制御をさらに緻密化するとともに、ステアリングギアもクイックな味付けとした。また、ショックアブソーバーのサイズを大きくし、Sエディションだけに採用していた構造用接着剤を全モデルに拡大採用している。タイヤもエクリプスクロスと同じ225/55R18のサマータイヤ(トーヨータイヤのプロクセスR44)を履く。試乗したGプレミアムパッケージは、ボディやシャシーが今までよりしっかりした印象だ。剛性感たっぷりで、足の動きもよくなっていた。
舵の動きがクイックになり、狙った方向に軽やかにクルマが向きを変える。回り込んだ小さなコーナーでもステアリングを切り増す量が減り、扱いやすい。トルクベクタリングを作動させ、フロントの内輪にブレーキをかけてくれるから気持ちよく曲がる。アンダーステアに悩まされることがなくなり、操っている感が強くなった。乗り心地もよくなっている。フロントシートのサポート性も向上したからワインディングロードでの運転も楽しい。
Sエディションはスポーティな味わい
ビルシュタイン製のショックアブソーバーやアルミペダルなどを採用するSエディションは、他のグレードよりスポーティな味わいだ。高速走行時の落ち着きは一歩上の印象だし、コーナリング時のロールも抑えられている。高い速度域でコーナリングしても狙ったラインに乗せやすいし、ブレーキング時の挙動変化も上手に抑え込んでいた。他のグレードより舵の利きがよく、コントロールできる領域が広いのが美点だ。スポーツモードで走ると、楽しさが際立っているのがSエディションだ。ボディのしっかり感と乗り心地も従来モデルよりよくなった。ただし、低速で走っているときは他のグレードより引き締まった乗り心地だ。
アウトランダーPHEVの2019年モデルは、走りのポテンシャルを1ランク上げるとともに快適性も大きく向上させている。モーターの存在感も増しているから、EV的に使いたい人にとっても魅力的な存在と映るだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
(レスポンス 片岡英明)
プラグインハイブリッドは増え続けているが、他車と大きく違うのは4WDシステムを採用していることである。PHEVを名乗っていることから分かるようにEV(電気自動車)に近い性格だが、従来モデルは意外に早くエンジンがかかった。そこで2019モデルはパワートレインの主要構成部品の約90%を変え、駆動用バッテリーの容量は12kWhから13.5kWhに15%も増やしている。バッテリーとジェネレーターの出力は10%高めるなど、PHEVシステムを大きく進化させた。
また、エンジンを2.0リットルからアトキンソンサイクルの2.4リットル直列4気筒DOHCに換装し、余裕ある走りを生み出している。可変バルブタイミング機構付きの新しいエンジンを得た効果は絶大だ。ツインモーター4WDの活躍の場が増え、暖気が済んだ後の走行ではエンジンがかかる頻度が大幅に減った。満充電でEV走行できる距離は60kmから65kmに延び、EVでの最高速度も135km/hを可能にしている。
剛性感アップで、走りも楽しく
今まではエンジンがかかるとはっきり分かった。が、新型はつながりが滑らかになり、分かりにくい。加速してエンジンがかかったときも従来モデルよりエンジン回転を低く抑えている。だから静粛性も向上した。400ccの排気量拡大と制御の変更によって扱いやすさを増しているし、加速も冴えている。とくにスポーツモードを選ぶと応答レスポンスは鋭くなり、スピードの乗りもいい。気持ちいい加速フィールを満喫できるなど、モーターの存在感が強まった。実用燃費はそれなりだが、モーターを上手に使えば出費は大きく減らせるだろう。
ハンドリングも軽やかだ。19年モデルはS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)の制御をさらに緻密化するとともに、ステアリングギアもクイックな味付けとした。また、ショックアブソーバーのサイズを大きくし、Sエディションだけに採用していた構造用接着剤を全モデルに拡大採用している。タイヤもエクリプスクロスと同じ225/55R18のサマータイヤ(トーヨータイヤのプロクセスR44)を履く。試乗したGプレミアムパッケージは、ボディやシャシーが今までよりしっかりした印象だ。剛性感たっぷりで、足の動きもよくなっていた。
舵の動きがクイックになり、狙った方向に軽やかにクルマが向きを変える。回り込んだ小さなコーナーでもステアリングを切り増す量が減り、扱いやすい。トルクベクタリングを作動させ、フロントの内輪にブレーキをかけてくれるから気持ちよく曲がる。アンダーステアに悩まされることがなくなり、操っている感が強くなった。乗り心地もよくなっている。フロントシートのサポート性も向上したからワインディングロードでの運転も楽しい。
Sエディションはスポーティな味わい
ビルシュタイン製のショックアブソーバーやアルミペダルなどを採用するSエディションは、他のグレードよりスポーティな味わいだ。高速走行時の落ち着きは一歩上の印象だし、コーナリング時のロールも抑えられている。高い速度域でコーナリングしても狙ったラインに乗せやすいし、ブレーキング時の挙動変化も上手に抑え込んでいた。他のグレードより舵の利きがよく、コントロールできる領域が広いのが美点だ。スポーツモードで走ると、楽しさが際立っているのがSエディションだ。ボディのしっかり感と乗り心地も従来モデルよりよくなった。ただし、低速で走っているときは他のグレードより引き締まった乗り心地だ。
アウトランダーPHEVの2019年モデルは、走りのポテンシャルを1ランク上げるとともに快適性も大きく向上させている。モーターの存在感も増しているから、EV的に使いたい人にとっても魅力的な存在と映るだろう。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
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