【ホンダ CR-V 新型試乗】トータル性能の高いSUVとなったが、気になるのは価格…片岡英明
◆2年遅れて待望の復活、5代目「CR-V」
『オデッセイ』、『ステップワゴン』とともにホンダの屋台骨を支えてきたのが、クロスオーバーSUVの『CR-V』だ。
日本だけでなく北米でも大ヒットを飛ばし、『ヴェゼル』の上級に位置する都市型SUVとしてホンダには欠かせない存在になった。だが、4代目を最後に、日本では販売を休止している。そのまま消滅するかと思われたが、海外より2年遅れて第5世代のCR-Vがニッポンのファンの前に姿を現わした。
◆大柄なサイズ感で風格のあるリアビューに
エクステリアは4代目の正常進化型だ。フロントマスクは、最近のホンダ車が好んで使う吊り目のLEDヘッドライトに切れ上がったメッキグリルの組み合わせだ。見慣れた顔で、新鮮味は薄い。フロントウインドーは傾斜を強め、ワゴンのように伸びやかなサイドビューは躍動感あふれている。ドア後方のガラスエリアをキックアップし、フェンダーを力強く膨らませた。テールゲートスポイラーから続くL字型のリアコンビランプを配したリアビューも美しい。
全長は4605mm、ホイールベースも2660mmと、日本で運転しやすいボディサイズだ。だが、全幅は1855mmと、思いのほか広い。全高は1680mm(EXマスターピース)で、最低地上高は200mmを確保している。4代目CR-Vと比べると少しだけ大きくなっているが、大柄に見えるサイズ感を手に入れた。とくにリアビューは風格があり、遠くからでも目立つ。
◆好評を博す直噴ターボエンジンに“引っ張れる”CVT
パワートレインは2つ用意された。2018年8月下旬、ひと足先に発売されたのは、ステップワゴンなどに搭載され、好評を博している1.5リットル直列4気筒DOHC直噴ターボ搭載車だ。11月1日に発売したのは、2.0リットルのアトキンソンサイクル4気筒DOHC・i-VTECエンジンに発電機と駆動用、2つのモーターを搭載するi-MMD方式のハイブリッド車である。トランスミッションはCVTとした。ダウンサイジングターボ、ハイブリッド車ともに前輪駆動の2WDと後輪への駆動伝達を油圧クラッチで制御するリアルタイムAWDを設定する。
夏に発売された1.5リットルのL15B型直噴ターボは、最高出力140kW(190ps)/5600rpm、最大トルク240Nm(24,5kg-m)/2000~5000rpmのパワースペックだ。性能的には2.4リットルクラスの自然吸気エンジンと同等である。しかもフリクションを減らしたターボや圧縮比の最適化など、専用チューニングを行った。ターボはタイムラグなしに低回転から過給を開始し、1000回転台から力強い加速を披露した。しかも2000回転を超えてからの伸びがいいし、回転の上昇とリンクしてパワーとトルクが盛り上がる。
驚いたことに、その気になれば6000回転まで引っ張ることができた。CVTに多い、加速していくときにゴムを介したようなダルさを伴う違和感も上手に封じ込んでいる。アクセルを目いっぱい踏み込むと、ステップ変速制御になり、トルコン付きATのようにリズムを感じさせながらスピードを上げていく。加速していくときはエンジン音が高まるが、クルージング時は静粛性も高い。
◆ハイブリッドモデルは衝撃的なドライビングフィール
それ以上に強烈なインパクトを放ち、魅力的な走りを見せたのが、幅広い領域をモーター走行し、しかもスポーティな味わいのハイブリッド車である。2.0リットルのLFB型直列4気筒DOHCエンジンは107kW(145ps)/6200rpmの最高出力と175Nm(17.8kg-m)/4000rpmの最大トルクを発生するが、これに135kW(184ps)/315Nm(32.1kg-m)のモーターアシストが加わるのだから走りの実力は推して知るべしだ。
アクセルを踏み込むと1000回転台から力強いパワーとトルクを発生し、痛快なダッシュを見せた。バッテリーの残量が十分ならば、アクセルを少し強く踏み込んでもモーター走行をキープし、静かで滑らかな加速を満喫できる。電気式CVTのチューニングと制御も絶妙な味付けだ。ダイレクト感があり、切れ味鋭い加速を楽しめ、1.7トンに迫る重いボディを軽々と走らせる。ハイブリッド車はブレーキのコントロール性に難があるクルマが多いが、CR-Vは意思に忠実に減速することができた。
EVドライブモードやハイブリッドドライブモードなどのモードを備え、燃費に振ったECONモードでもかったるさはない。スポーツモードではメリハリの効いた痛快な加速フィールだ。しかも加速時やクルージング時の静粛性はターボ搭載車を相手にしない。乗り換えると、1クラス違うと感じさせるほど差がある。タイヤなどのノイズが耳障りと感じるほど静かだ。
◆コントロールのしやすさとドイツ車のような重厚感
CVTのシフトレバーは、ターボ車が一般的なインパネシフトにパドルシフトの組み合わせ、ハイブリッド車は『NSX』などと同じプッシュスイッチに減速セレクターと差別化を図っている。慣れると便利だが、最初は戸惑う。パーキングブレーキは流行の電子制御ボタン式だ。JC08モード燃費はターボ車が15.4km/リットル。ハイブリッド車は19.4km/リットルと、4km/リットルも上回っている。もちろん、どちらもレギュラーガソリンが指定だ。これは嬉しい。
サスペンションはストラットとマルチリンクで、ハンドリングは先代よりスポーティな味わいが強い。ボディやシャシーの剛性は高く、ドイツ車のような重厚な走行フィーリングが特徴である。デュアルピニオン式パワーステアリングとVGRを採用したことと相まってリニアなハンドリングを身につけていた。ワインディングロードでも狙ったラインに乗せやすく、コーナリング時のロールも上手に抑えている。
オールシーズンタイヤを履いているが、ホットな走りでも安定した車両挙動に終始した。リアの追従性も良好だ。コントロールしやすく、絶大な安心感があった。高速直進安定性も優れている。横風にも強い。今回の試乗では4WDを意識させる場面はなかったが、ヴェゼルより1ランク上の実力を秘めているはずだ。ターボ車の乗り心地はちょっと引き締まった印象である。路面によっては突き上げを感じ、硬さを意識させられた。
◆キャビン・ラゲッジルームともに満足、注目の3列目シートだけは窮屈
CR-Vのターボ搭載車は、2列シートの5人乗りのほか、3列シートの7人乗り仕様を設定している。キャビンは前席、後席ともに不満のない広さを確保した。注目の3列目は座面が短く、背もたれも長さが足りない。体育会系の座りを強いられ、サイズもミニマムだが、万一のときには重宝する。ラゲッジルームも満足できる広さだ。2列目のシートを倒し、フロアボードを上段にセットするとフラットで広いスペースが生まれる。3列目のシートも分割可倒式だ。
5代目CR-Vはホンダを代表する国際商品に成長した。トータル性能の高いクロスオーバーSUVだが、気になるのは価格である。先代よりドーンと跳ね上がり、ターボの廉価グレード、EX5人乗り(2WD)でも320万円を超える。ハイブリッド車はターボ車より50万円ほど高く、ハイブリッド車の4WDは400万円オーバーのプライスタグだ。リーズナブルな価格とは言い難い。もう少し安ければ、さらに魅力を放ったはずである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
片岡英明│モータージャーナリスト
自動車専門誌の編集者を経てフリーのモータージャーナリストに。新車からクラシックカーまで、年代、ジャンルを問わず幅広く執筆を手掛け、EVや燃料電池自動車など、次世代の乗り物に関する造詣も深い。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員
(レスポンス 片岡英明)
『オデッセイ』、『ステップワゴン』とともにホンダの屋台骨を支えてきたのが、クロスオーバーSUVの『CR-V』だ。
日本だけでなく北米でも大ヒットを飛ばし、『ヴェゼル』の上級に位置する都市型SUVとしてホンダには欠かせない存在になった。だが、4代目を最後に、日本では販売を休止している。そのまま消滅するかと思われたが、海外より2年遅れて第5世代のCR-Vがニッポンのファンの前に姿を現わした。
◆大柄なサイズ感で風格のあるリアビューに
エクステリアは4代目の正常進化型だ。フロントマスクは、最近のホンダ車が好んで使う吊り目のLEDヘッドライトに切れ上がったメッキグリルの組み合わせだ。見慣れた顔で、新鮮味は薄い。フロントウインドーは傾斜を強め、ワゴンのように伸びやかなサイドビューは躍動感あふれている。ドア後方のガラスエリアをキックアップし、フェンダーを力強く膨らませた。テールゲートスポイラーから続くL字型のリアコンビランプを配したリアビューも美しい。
全長は4605mm、ホイールベースも2660mmと、日本で運転しやすいボディサイズだ。だが、全幅は1855mmと、思いのほか広い。全高は1680mm(EXマスターピース)で、最低地上高は200mmを確保している。4代目CR-Vと比べると少しだけ大きくなっているが、大柄に見えるサイズ感を手に入れた。とくにリアビューは風格があり、遠くからでも目立つ。
◆好評を博す直噴ターボエンジンに“引っ張れる”CVT
パワートレインは2つ用意された。2018年8月下旬、ひと足先に発売されたのは、ステップワゴンなどに搭載され、好評を博している1.5リットル直列4気筒DOHC直噴ターボ搭載車だ。11月1日に発売したのは、2.0リットルのアトキンソンサイクル4気筒DOHC・i-VTECエンジンに発電機と駆動用、2つのモーターを搭載するi-MMD方式のハイブリッド車である。トランスミッションはCVTとした。ダウンサイジングターボ、ハイブリッド車ともに前輪駆動の2WDと後輪への駆動伝達を油圧クラッチで制御するリアルタイムAWDを設定する。
夏に発売された1.5リットルのL15B型直噴ターボは、最高出力140kW(190ps)/5600rpm、最大トルク240Nm(24,5kg-m)/2000~5000rpmのパワースペックだ。性能的には2.4リットルクラスの自然吸気エンジンと同等である。しかもフリクションを減らしたターボや圧縮比の最適化など、専用チューニングを行った。ターボはタイムラグなしに低回転から過給を開始し、1000回転台から力強い加速を披露した。しかも2000回転を超えてからの伸びがいいし、回転の上昇とリンクしてパワーとトルクが盛り上がる。
驚いたことに、その気になれば6000回転まで引っ張ることができた。CVTに多い、加速していくときにゴムを介したようなダルさを伴う違和感も上手に封じ込んでいる。アクセルを目いっぱい踏み込むと、ステップ変速制御になり、トルコン付きATのようにリズムを感じさせながらスピードを上げていく。加速していくときはエンジン音が高まるが、クルージング時は静粛性も高い。
◆ハイブリッドモデルは衝撃的なドライビングフィール
それ以上に強烈なインパクトを放ち、魅力的な走りを見せたのが、幅広い領域をモーター走行し、しかもスポーティな味わいのハイブリッド車である。2.0リットルのLFB型直列4気筒DOHCエンジンは107kW(145ps)/6200rpmの最高出力と175Nm(17.8kg-m)/4000rpmの最大トルクを発生するが、これに135kW(184ps)/315Nm(32.1kg-m)のモーターアシストが加わるのだから走りの実力は推して知るべしだ。
アクセルを踏み込むと1000回転台から力強いパワーとトルクを発生し、痛快なダッシュを見せた。バッテリーの残量が十分ならば、アクセルを少し強く踏み込んでもモーター走行をキープし、静かで滑らかな加速を満喫できる。電気式CVTのチューニングと制御も絶妙な味付けだ。ダイレクト感があり、切れ味鋭い加速を楽しめ、1.7トンに迫る重いボディを軽々と走らせる。ハイブリッド車はブレーキのコントロール性に難があるクルマが多いが、CR-Vは意思に忠実に減速することができた。
EVドライブモードやハイブリッドドライブモードなどのモードを備え、燃費に振ったECONモードでもかったるさはない。スポーツモードではメリハリの効いた痛快な加速フィールだ。しかも加速時やクルージング時の静粛性はターボ搭載車を相手にしない。乗り換えると、1クラス違うと感じさせるほど差がある。タイヤなどのノイズが耳障りと感じるほど静かだ。
◆コントロールのしやすさとドイツ車のような重厚感
CVTのシフトレバーは、ターボ車が一般的なインパネシフトにパドルシフトの組み合わせ、ハイブリッド車は『NSX』などと同じプッシュスイッチに減速セレクターと差別化を図っている。慣れると便利だが、最初は戸惑う。パーキングブレーキは流行の電子制御ボタン式だ。JC08モード燃費はターボ車が15.4km/リットル。ハイブリッド車は19.4km/リットルと、4km/リットルも上回っている。もちろん、どちらもレギュラーガソリンが指定だ。これは嬉しい。
サスペンションはストラットとマルチリンクで、ハンドリングは先代よりスポーティな味わいが強い。ボディやシャシーの剛性は高く、ドイツ車のような重厚な走行フィーリングが特徴である。デュアルピニオン式パワーステアリングとVGRを採用したことと相まってリニアなハンドリングを身につけていた。ワインディングロードでも狙ったラインに乗せやすく、コーナリング時のロールも上手に抑えている。
オールシーズンタイヤを履いているが、ホットな走りでも安定した車両挙動に終始した。リアの追従性も良好だ。コントロールしやすく、絶大な安心感があった。高速直進安定性も優れている。横風にも強い。今回の試乗では4WDを意識させる場面はなかったが、ヴェゼルより1ランク上の実力を秘めているはずだ。ターボ車の乗り心地はちょっと引き締まった印象である。路面によっては突き上げを感じ、硬さを意識させられた。
◆キャビン・ラゲッジルームともに満足、注目の3列目シートだけは窮屈
CR-Vのターボ搭載車は、2列シートの5人乗りのほか、3列シートの7人乗り仕様を設定している。キャビンは前席、後席ともに不満のない広さを確保した。注目の3列目は座面が短く、背もたれも長さが足りない。体育会系の座りを強いられ、サイズもミニマムだが、万一のときには重宝する。ラゲッジルームも満足できる広さだ。2列目のシートを倒し、フロアボードを上段にセットするとフラットで広いスペースが生まれる。3列目のシートも分割可倒式だ。
5代目CR-Vはホンダを代表する国際商品に成長した。トータル性能の高いクロスオーバーSUVだが、気になるのは価格である。先代よりドーンと跳ね上がり、ターボの廉価グレード、EX5人乗り(2WD)でも320万円を超える。ハイブリッド車はターボ車より50万円ほど高く、ハイブリッド車の4WDは400万円オーバーのプライスタグだ。リーズナブルな価格とは言い難い。もう少し安ければ、さらに魅力を放ったはずである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
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