【プジョー 3008 新型試乗】「8速になった」それ以上に成熟を感じる…中村孝仁

プジョー 3008
◆プジョー乗りも驚くスムーズなシフト

都内を軽く流していると、パッセンジャーシートからひと言「いやー、今のプジョーって、こんなにスムーズなシフトするんですね」。これ、プジョー/シトロエンを複数だ乗り継いだ男の感想である。

彼のプジョーはかつて悪名を轟かせていた時代のAL4と呼ばれる4速ATを使っていた時代のもの。それでも彼は今も「もし『406クーペ』のいい奴が出たら買っちゃうかもしれません」というほどプジョーに心酔している。

まあ、406クーペの場合はそのスタイリングだが、個人的な話をすれば僕自身ももし『エグザンティア』のいい奴が出たら買っちゃうかもしれない危うさを持っている。要するに、この二つのブランドは人を引き付けてやまない何か特別なものを持っているということかもしれない。もっとも、それは人それぞれによって異なるから、たまたま僕や彼がそうなだけかもしれないが…。

◆ネガな部分は屁みたいなもの

プジョー『3008』は一昨年登場したプジョーSUV化の先兵。デビューから1年の昨年7月に、トランスミッションを6速から8速に改めた。どちらも我がアイシンAW製だから、そのシフトのスマートさは折り紙付きである。だから冒頭パッセンジャーシートに座っていた僕の友人がふと漏らした言葉は、まあ当然と言えば当然の帰結でもある。

6速から8速に変更した背景には、勿論より燃費の向上とか高速における静粛性の向上なども挙げられるだろうが、表に出ない背景として排ガス規制の強化が挙げられる。現在ヨーロッパ施行されているユーロ6という規制は2014年に始まり、第2段階として2017年からユーロ6cへ移行。さらにユーロ6d -TEMPそしてユーロ6d -RDEと今後もめまぐるしく変わっていく。そうした中で最小のコストで最も手っ取り早く対応可能なのが、トランスミッションを多段化させて排ガスの出易い高回転域を使わないようにすることを念頭に置いた改良ともいえる。

というわけで、今回の改良はすべてお家の事情なわけだが、今のところ、この種の問題は日本国内においては発生していないため問題とはならず、前述した燃費向上とか静粛性など利点ばかりを日本のユーザーは享受することになるわけだ。まあ、ネガな部分がないわけでも無くて、若干のパワーダウンとほんの僅かな最大トルク時の発生回転数引き上げだが、まあそんなものは言ってみれば屁みたいなものである。

◆骨格の強さと静粛性

今更ながら驚かされるのが、このクルマの骨格の強さである。現行の『308』がデビューした時から使われている新たなプラットフォームEMP2、往々にして徐々に改良が加えられてりして、いつの間にやらよくなっていた…なんてこともあったりするが(その典型がボルボのSPA)、まあ気のせいかもしれないけれど以前よりもガッシリした感が強い。

まあそのせいかどうかはわからないが、音の遮断も全体的に高くなったようで、静粛性も上がっている。もっともその分ディーゼルのカラカラ音が却って強調されてしまっていて、どうもファイアーウォールに関しては強化されていないようだから、ここの遮音性さえ上げてもらえたら、素晴らしく静粛性の高いモデルになるような気がする。

何故遮音が良くなったように感じられたのかというと、今回の試乗車、季節がら実はスタッドレスに履き替えていたのである。だから通常ならたっぷりとタイヤのハミング音が聞こえてくるかと思いきや、驚いたことにその痕跡すらも感じられないほどだったからである。

確かにただトランスミッションが6速から8速に変わっただけでしょ?というかもしれないが、今の自動車、スペックを変えることなく劇的に走りを変えるだけの裏技をメーカーが持っているということを知っておいた方が良い。だから、3008もギアが2速余計になった以上に成熟している印象を受けること間違いなしである。

■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

(レスポンス 中村 孝仁)

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