【アルファロメオ ステルヴィオ ディーゼル試乗】尖がらない運転も出来るステルヴィオ…中村孝仁
◆アルファロメオのディーゼル、実は…
アルファ初のSUVとして『ステルヴィオ』がデビューしたのが2018年。『ジュリア』譲りの尖がった性格は、アルファファンには堪えられないものである反面、あまり一般受けはしないだろうというのが、偽らざる感想だった。
そして2019年の第1弾として、FCAジャパンはそのステルヴィオにディーゼルエンジンを搭載してリリースした。日本市場におけるアルファのディーゼルモデルはこれが初めて。このエンジン、即ち2.2リットルのターボディーゼルは、FCAお得意のマルチジェットと呼ばれているエンジンだが、それを作っているのは何とGMパワートレーン・トリノというところ。つまりはGMである。そう、ライバルになる。
どういうことかというと、フィアット系のディーゼルは長いことイタリアのチェントというところにある、VMモトーリという会社が生産していた。ところがこのVMモトーリは、(ここからややこしくなるが)デトロイトディーゼルという会社に売却され、それを今度はダイムラークライスラーが購入。続いて2003年にペンスキーが購入し、その後GMが購入して今に至るというわけ。その間継続して現在のFCAが、このメーカーのディーゼルを使い続けているということで、ジープや今回のアルファロメオに搭載されるマルチジェットは、元をただせばVMモトーリ、しかし今はGMパワートレーン製、ということだ。
この2.2リットルのマルチジェット2と呼ばれるエンジンは、2015年に完成したものだからかなり新しい。しかも俗にドイツメーカーが称するアドブルー、即ち尿素を吹かなくてもユーロ6のレギュレーションをクリアするというのである。だから、かなりクリーン。ただし、日本にやって来るこのエンジンには、すでにアドブルー噴射を採用しているということだ。
◆キレッキレのハンドリングがマイルドに感じた理由
排気量も2.2リットルということで、比較対象になるのはどうしてもマツダの『CX-5』。そこで、前日までそのCX-5ディーゼルを乗り回して、ステルヴィオのディーゼルに対面した。何せ、人間は直前に乗ったクルマの印象に大きく左右されてしまうから、CX-5から1時間後にステルヴィオに乗り換えた。
で、どうだったかというと、まあノーマルモードで走る限りCX-5と変わらないじゃん?というのが偽らざる印象であった。時間はたっぷりあったので、田町のFCA本社を後にして、ノーズをアクアライン経由で千葉方面に向けた。金田でアクアラインを降りて、下道をひとしきり走った。この間およそ38km程度の走行。まあ大した距離じゃないから断定はしないが、燃費は恐ろしく良い。敢えてオールウェザーのAは使わなかったが、Nで走った結果は、何と20.4km/リットルを記録。さしてエコ運転をしたわけではないが、前が詰まって必然的にエコになった結果である。高速走行中はディズプレイ上で22.0km/リットルまで行って、「おいおい」と思ったものだ。
かつて乗ったガソリン仕様のステルヴィオは何が凄かったと言って、そのキレッキレのハンドリング。あまりにシャープ過ぎて、一般ユーザーは扱いづらいのでは?と思えた。ところが今回試乗したディーゼルでは、そんなところはこれっぽっちも見せない。まさかと思って、帰ってから「ステアリングギア比変えてませんよね?」と尋ねたほど。勿論変えていない。
この大人しかった理由は、かつて乗ったガソリン仕様が20インチタイヤを装着していたのに対し、こちらは18インチであること。何とそれだけでここまでマイルドになるのかと思えるほど激変していた。おかげで、普通に乗るには実に快適だし、それに、まあやってはいけないけれど、適度によそ見も出来る。
◆CX-5とのディーゼル対決は…ステルヴィオの勝ち!
エンジンをかけた当初から、遮音に関してはまあ平均レベルだと感じた。取り立ててうるさくもなければ、極端に静かでもない。ただ、さすがにアルファ製と少しバイアスがかかったせいか、音そのものは雑音とは聞こえない。イタリアンらしく、意図的に透過音を大きめにしてエンジンサウンドを聞かせるためか、ファイアーウォール側から侵入する音は少し大きめだが、まあ適度な効果音程度。実際に走り出してしまえば路面からの音や風切り音などの雑音に紛れてしまう。
帰路は当然ながらDモードに入れて鞭をくれてやる。するとどうだ。Nでは味わえなかった鋭い加速性能を見せ、さすがにセグメント最高のパワフルさが目覚める。18インチタイヤは、ハンドリングこそマイルドにするものの、乗り心地の点ではより快適なはずだから、ステルヴィオに18インチタイヤというチョイスはアルフィスタのみならず、一般ユーザーにもその門戸を開いた印象がある。
では、CX-5との比較は?Nモードにしている限りやはり性能面での違いは感じられない。しかし、Dにすれば間違いなくアルファのパフォーマンスが炸裂する。それにあちらは6速、こちらは8速ということで、少なくともメーター上の燃費性能では断然アルファが勝つ。CX-5では過去の経験上どうあがいても15km/リットルを上回ることはなかった。
というわけでお値段もそれなりに違うが、やはりステルヴィオの勝ちである。同じセグメントのライバルと比べた場合、特にナビゲーションをカープレイに頼らなくてはならないところなど、アルファには不備もある。そのあたりをユーザーがどうジャッジするかというところだが、一皮剥けたステルヴィオを感じさせてくれた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
アルファ初のSUVとして『ステルヴィオ』がデビューしたのが2018年。『ジュリア』譲りの尖がった性格は、アルファファンには堪えられないものである反面、あまり一般受けはしないだろうというのが、偽らざる感想だった。
そして2019年の第1弾として、FCAジャパンはそのステルヴィオにディーゼルエンジンを搭載してリリースした。日本市場におけるアルファのディーゼルモデルはこれが初めて。このエンジン、即ち2.2リットルのターボディーゼルは、FCAお得意のマルチジェットと呼ばれているエンジンだが、それを作っているのは何とGMパワートレーン・トリノというところ。つまりはGMである。そう、ライバルになる。
どういうことかというと、フィアット系のディーゼルは長いことイタリアのチェントというところにある、VMモトーリという会社が生産していた。ところがこのVMモトーリは、(ここからややこしくなるが)デトロイトディーゼルという会社に売却され、それを今度はダイムラークライスラーが購入。続いて2003年にペンスキーが購入し、その後GMが購入して今に至るというわけ。その間継続して現在のFCAが、このメーカーのディーゼルを使い続けているということで、ジープや今回のアルファロメオに搭載されるマルチジェットは、元をただせばVMモトーリ、しかし今はGMパワートレーン製、ということだ。
この2.2リットルのマルチジェット2と呼ばれるエンジンは、2015年に完成したものだからかなり新しい。しかも俗にドイツメーカーが称するアドブルー、即ち尿素を吹かなくてもユーロ6のレギュレーションをクリアするというのである。だから、かなりクリーン。ただし、日本にやって来るこのエンジンには、すでにアドブルー噴射を採用しているということだ。
◆キレッキレのハンドリングがマイルドに感じた理由
排気量も2.2リットルということで、比較対象になるのはどうしてもマツダの『CX-5』。そこで、前日までそのCX-5ディーゼルを乗り回して、ステルヴィオのディーゼルに対面した。何せ、人間は直前に乗ったクルマの印象に大きく左右されてしまうから、CX-5から1時間後にステルヴィオに乗り換えた。
で、どうだったかというと、まあノーマルモードで走る限りCX-5と変わらないじゃん?というのが偽らざる印象であった。時間はたっぷりあったので、田町のFCA本社を後にして、ノーズをアクアライン経由で千葉方面に向けた。金田でアクアラインを降りて、下道をひとしきり走った。この間およそ38km程度の走行。まあ大した距離じゃないから断定はしないが、燃費は恐ろしく良い。敢えてオールウェザーのAは使わなかったが、Nで走った結果は、何と20.4km/リットルを記録。さしてエコ運転をしたわけではないが、前が詰まって必然的にエコになった結果である。高速走行中はディズプレイ上で22.0km/リットルまで行って、「おいおい」と思ったものだ。
かつて乗ったガソリン仕様のステルヴィオは何が凄かったと言って、そのキレッキレのハンドリング。あまりにシャープ過ぎて、一般ユーザーは扱いづらいのでは?と思えた。ところが今回試乗したディーゼルでは、そんなところはこれっぽっちも見せない。まさかと思って、帰ってから「ステアリングギア比変えてませんよね?」と尋ねたほど。勿論変えていない。
この大人しかった理由は、かつて乗ったガソリン仕様が20インチタイヤを装着していたのに対し、こちらは18インチであること。何とそれだけでここまでマイルドになるのかと思えるほど激変していた。おかげで、普通に乗るには実に快適だし、それに、まあやってはいけないけれど、適度によそ見も出来る。
◆CX-5とのディーゼル対決は…ステルヴィオの勝ち!
エンジンをかけた当初から、遮音に関してはまあ平均レベルだと感じた。取り立ててうるさくもなければ、極端に静かでもない。ただ、さすがにアルファ製と少しバイアスがかかったせいか、音そのものは雑音とは聞こえない。イタリアンらしく、意図的に透過音を大きめにしてエンジンサウンドを聞かせるためか、ファイアーウォール側から侵入する音は少し大きめだが、まあ適度な効果音程度。実際に走り出してしまえば路面からの音や風切り音などの雑音に紛れてしまう。
帰路は当然ながらDモードに入れて鞭をくれてやる。するとどうだ。Nでは味わえなかった鋭い加速性能を見せ、さすがにセグメント最高のパワフルさが目覚める。18インチタイヤは、ハンドリングこそマイルドにするものの、乗り心地の点ではより快適なはずだから、ステルヴィオに18インチタイヤというチョイスはアルフィスタのみならず、一般ユーザーにもその門戸を開いた印象がある。
では、CX-5との比較は?Nモードにしている限りやはり性能面での違いは感じられない。しかし、Dにすれば間違いなくアルファのパフォーマンスが炸裂する。それにあちらは6速、こちらは8速ということで、少なくともメーター上の燃費性能では断然アルファが勝つ。CX-5では過去の経験上どうあがいても15km/リットルを上回ることはなかった。
というわけでお値段もそれなりに違うが、やはりステルヴィオの勝ちである。同じセグメントのライバルと比べた場合、特にナビゲーションをカープレイに頼らなくてはならないところなど、アルファには不備もある。そのあたりをユーザーがどうジャッジするかというところだが、一皮剥けたステルヴィオを感じさせてくれた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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