【アウディ RS4アバント 新型試乗】能ある鷹は爪を隠して…ませんでした…中村孝仁
◆見るからにただならぬ存在感
『RS4』って、昔はセダンもあったよな?って、中古車市場を調べてみたらやっぱりある。でも今はワゴン版の『RS4アバント』だけ。とびっきり速いワゴンである。
そもそも、新しいRS4アバントは2.9リットルV6ターボを搭載して、450ps、600Nmという途方もないパフォーマンスを持っている。それに見た目だってどうだ!メーカーが合法的にシャコタンを作ったか?って思うほどベッタリと地面に張り付いた印象である。
ボディも、よく見ないと分からないわけではなくて、どうも普通の『A4アバント』に比べて佇まいが違うなぁと近寄ってみると、どうだと言わんばかりのボテッと張り出したフェンダーアーチを持っている。リアから見るとフェンダー分が余ってしまい、コンビネーションランプの外側にそれっぽいエアアウトレットを装備してつじつまを合わせている。
ただし、凄まじくふくよかに見えるフェンダーなのだが、素のA4と比較して全幅は僅か25mmしか違わない。しかも広がった結果1865mmの全幅だから、最近のクルマとしてはほとんど大きさを感じずに走ることが出来ると思う。とはいえ、クルマがポンとおいてあるだけでただならぬ存在感を示しているのだから、全くもって能ある鷹は爪を隠していない。以前のRS4アバントも、マッチョなフェンダーが存在感を示していたが、今回は以前にも増してその様相が強いように感じる。
装着タイヤは何と275/30ZR20!こいつもホイールにまとわりついているという雰囲気を醸し出していて、ベタベタ感満載だ。
◆驚くほど快適な走りに、やられた
さて、プッシュ式のスターターを押し、ストロークの非常に短いシフトレバーをDに入れて走り出してみる。外で見たベタベタ感とは裏腹に、驚くほど快適だ。まずそこでやられた。次に少しこもり気味のサウンドの静かなこと。というわけで、アクセルストロークのごく初期の部分だけを使って走れば、借りてきた猫のようにおとなしい。一般国道の流れに乗って前を追従する限り、このクルマはごく普通のワゴンである。
乗り心地は至って快適だが、ショックを吸収する時のサスペンションの動きは実にショートストローク。ボディ全体をドスッと揺するが上下に動いているという感覚ではなく、軽いショックとタイヤのたわみ程度(それだったほとんどたわむほどの厚みがないが)の上下動でしかない。その入力が実にマイルドなのである。まあ、この味付けは見事としか言いようがない。
極太のステアリングは、女性では少々手に余るのではないかと感じるほど。最近のスポーティーなドイツ車には、この傾向がある。こうした街中の流れに乗る程度の走りでは、そのステアリングのシャープさは伝わってこず、ここでも表現は適当ではないかもしれないが、まあ精々少しスポーティーなファミリーカーだと言ってもパッセンジャーは納得するレベルの運動性能である。
◆ある意味究極のクルマである
しかし、いったんアクセルに力を込めると、まさに豹変という言葉が相応しい。軽くワインディングを攻めてみても、あのベタベタ感から想像できる通り、およそクルマがロールするということがない。左右のコーナーはまるでクルマが横移動している感覚で走り抜ける。
パワー?言わずもがなであろう。圧倒的高性能だ。メーカー発表の0~100km/h加速は、たったの4.1秒。残念な事に今回の試乗で、そのゾクゾクするような加速はほんの味見程度しか味わえなかったが、とにかくひと踏みで周囲のクルマを後方に押しやる瞬足を備えている実力の片鱗だけは確かめることが出来た。
このクルマの凄いところは、この性能を持ってなお、ワゴンとしての実用性を兼ね備えていることだ。だからある意味究極のクルマである。スポーツカーの性能、パフォーマンスと、ファミリーカー並の実用性が同居しているわけだから。
ただし、お値段の方はセレブ御用達の1196万円から…だそうである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
『RS4』って、昔はセダンもあったよな?って、中古車市場を調べてみたらやっぱりある。でも今はワゴン版の『RS4アバント』だけ。とびっきり速いワゴンである。
そもそも、新しいRS4アバントは2.9リットルV6ターボを搭載して、450ps、600Nmという途方もないパフォーマンスを持っている。それに見た目だってどうだ!メーカーが合法的にシャコタンを作ったか?って思うほどベッタリと地面に張り付いた印象である。
ボディも、よく見ないと分からないわけではなくて、どうも普通の『A4アバント』に比べて佇まいが違うなぁと近寄ってみると、どうだと言わんばかりのボテッと張り出したフェンダーアーチを持っている。リアから見るとフェンダー分が余ってしまい、コンビネーションランプの外側にそれっぽいエアアウトレットを装備してつじつまを合わせている。
ただし、凄まじくふくよかに見えるフェンダーなのだが、素のA4と比較して全幅は僅か25mmしか違わない。しかも広がった結果1865mmの全幅だから、最近のクルマとしてはほとんど大きさを感じずに走ることが出来ると思う。とはいえ、クルマがポンとおいてあるだけでただならぬ存在感を示しているのだから、全くもって能ある鷹は爪を隠していない。以前のRS4アバントも、マッチョなフェンダーが存在感を示していたが、今回は以前にも増してその様相が強いように感じる。
装着タイヤは何と275/30ZR20!こいつもホイールにまとわりついているという雰囲気を醸し出していて、ベタベタ感満載だ。
◆驚くほど快適な走りに、やられた
さて、プッシュ式のスターターを押し、ストロークの非常に短いシフトレバーをDに入れて走り出してみる。外で見たベタベタ感とは裏腹に、驚くほど快適だ。まずそこでやられた。次に少しこもり気味のサウンドの静かなこと。というわけで、アクセルストロークのごく初期の部分だけを使って走れば、借りてきた猫のようにおとなしい。一般国道の流れに乗って前を追従する限り、このクルマはごく普通のワゴンである。
乗り心地は至って快適だが、ショックを吸収する時のサスペンションの動きは実にショートストローク。ボディ全体をドスッと揺するが上下に動いているという感覚ではなく、軽いショックとタイヤのたわみ程度(それだったほとんどたわむほどの厚みがないが)の上下動でしかない。その入力が実にマイルドなのである。まあ、この味付けは見事としか言いようがない。
極太のステアリングは、女性では少々手に余るのではないかと感じるほど。最近のスポーティーなドイツ車には、この傾向がある。こうした街中の流れに乗る程度の走りでは、そのステアリングのシャープさは伝わってこず、ここでも表現は適当ではないかもしれないが、まあ精々少しスポーティーなファミリーカーだと言ってもパッセンジャーは納得するレベルの運動性能である。
◆ある意味究極のクルマである
しかし、いったんアクセルに力を込めると、まさに豹変という言葉が相応しい。軽くワインディングを攻めてみても、あのベタベタ感から想像できる通り、およそクルマがロールするということがない。左右のコーナーはまるでクルマが横移動している感覚で走り抜ける。
パワー?言わずもがなであろう。圧倒的高性能だ。メーカー発表の0~100km/h加速は、たったの4.1秒。残念な事に今回の試乗で、そのゾクゾクするような加速はほんの味見程度しか味わえなかったが、とにかくひと踏みで周囲のクルマを後方に押しやる瞬足を備えている実力の片鱗だけは確かめることが出来た。
このクルマの凄いところは、この性能を持ってなお、ワゴンとしての実用性を兼ね備えていることだ。だからある意味究極のクルマである。スポーツカーの性能、パフォーマンスと、ファミリーカー並の実用性が同居しているわけだから。
ただし、お値段の方はセレブ御用達の1196万円から…だそうである。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
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パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★
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1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
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