【BMW 3シリーズ 新型試乗】“エンジン屋”BMWの真骨頂がここにある…中村孝仁
◆BMWジャパンはインポーターではない
BMWで『3シリーズ』を担当するブランドマネージャーの御館康成氏が「BMWジャパンはインポーターではなくブランチオフィスです」と、試乗会の説明で話してくれた。それ何?で、試乗前にまずはその点について尋ねてみた。
「インポーターというのは既に生産されたクルマを輸入するだけの業務をすることです。でもブランチオフィスでは開発段階からそこに参画し、市場の要望を取り入れて頂き、市場に合ったクルマ作りまで行う機能を有したところといった意味合いです」との説明。確かに先代では車幅をわざわざ1800mmに削り落としたモデルを作ってきたし、今回の場合は何と日本市場専用のエンジンまで作らせたのだがら、普通のインポーターとはわけが違う。
それもこれも売れているから。つまり売れているブランドは発言力も強くなり、必然的にメーカーもその市場の意見は取り入れてくれるという好循環が生まれるというわけだ。日本市場専用のエンジンとは、『320i』用の2リットルターボエンジン。日本の道路で使用頻度の高い領域を重視したチューニングが施されているという。ただし今回はその試乗車はなかった。今回試乗できたのはより高性能な『330i Mスポーツ』である。
◆「OK、BMW!」現代風の進化がそこかしこに
330iの基本的な構造は320iと同じで、エンジン型式B48B20Bというもの。直列4気筒で1998ccの排気量にツインパワーターボ装着だ。驚くべきはその燃料の噴射圧。実に350barだという。普通200barあればかなり強い噴射圧なのだが、先代のエンジンからいとも簡単にその普通でかなり高い…の200bar分を一気に引き上げた。このあたりがエンジン屋の真骨頂。それでいて、噴射圧が高くなれば必然的に煩くなるカチカチという独特なノイズもまるで出していない。
このエンジンに始まって、今回の3シリーズはあれやこれやと注目すべき点が多い。そのひとつはメルセデスが 「ハイ、メルセデス」と呼びかけて色々と操作を音声認識でこなすAIを搭載したのに対し、BMWでは「OK、BMW」と呼びかけて音声認識させるAIを搭載してきたことだ。何やらグーグルとアップルの戦いの様相を呈してきた。もっとも、BMWの場合、「OK、BMW」の呼びかけが嫌な人は、その呼びかけの文言を任意に変えることが出来るという。実際にあれこれ試してみたが、こいつに関してはまだまだ勉強不足(AIが)で、なかなか認識してくれないところが多々あった。
次に運転支援システムの強化。前方を監視するカメラはついに3眼になった。そしてほぼ全モデルに標準になるというパーキングアシスト。こいつが凄い。これは35km/h以下で駐車スペースなどを探す場合、袋小路に入ってしまったような時バックしなくてはならないが、直近50mの軌跡を覚えていて、リバースに入れてディスプレイされるリバースアシストをタッチすると、ステアリングを握ることなく、その直近50mを忠実にトレースしながらバックしてくれる機構。実際意地悪にクルマのすぐ横をすり抜けるような軌跡を作って試してみたが、どこにもぶつかることなく見事にトレースしてくれた。ただしこれ、ブレーキ操作はドライバー自身がやる必要があるし、後方確認もドライバーの役目である。
最後は新しいメーターを含むディスプレイ。センターのディスプレイが先代型よりだいぶドライバー側に近づいた。これはタッチスクリーン化したための措置。さらにメータークラスターは完全デジタル化され、メーター間の中間スペースを有効活用するため、タコメーターの針が右から左へと回転するようになった。まるでプジョーのメーターを見ているようであった。質感もかなり高い。まあ現代風といえる進化であるが…。
◆やはりエンジン屋の真骨頂である
最高出力と最大トルクがそれぞれ258ps、400Nmというスペックを持つ330i。そのトルク感は最早完全にディーゼルのそれだし、発生回転も1550rpmから始まるからまさにディーゼル。実は同じようなことをマツダがやってガソリンターボを作り上げた。しかし、あちらの車は高回転域がまるで回らない。ところが対するこちら、フルスロットルをくれてやると、何とレブリミットの6000pmを遥かに飛び越えて7000rpmのわずか手前で2速に入った。そこまで軽々と回る。やはりエンジン屋の真骨頂である。
とにかく全域で回してとても痛快で気持ちが良い。一方で1550rpmから4400rpmまで400Nmの最大トルクを出し続けるから、その加速感が走り出してすぐにグイグイ加速するので、ドラマチック感はまるでない。ひたすら力強さだけが前面に押し出されている。乗り易いことこの上ないわけで、何ら否定するものではないのだが、山を制覇したような高揚感は生まれない。これでAIが勉強不足を脱却すると、素晴らしく良いクルマになってくる。
日本人はMスポーツがお好きだとかで、このグレードに限れば販売は世界でもトップ3の市場だそう。このため、330iには今のところMスポーツしか用意がないようだ。試乗車は19インチのオプションタイヤを装着していたが、リア255/35R19という超扁平でも最近のクルマは実に快適で、乗り心地をスポイルしない。
でも気持ちとしては標準タイヤで乗ってみたいと思ったし、何より日本専用エンジンに乗ってみたいと思ったりもした。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
BMWで『3シリーズ』を担当するブランドマネージャーの御館康成氏が「BMWジャパンはインポーターではなくブランチオフィスです」と、試乗会の説明で話してくれた。それ何?で、試乗前にまずはその点について尋ねてみた。
「インポーターというのは既に生産されたクルマを輸入するだけの業務をすることです。でもブランチオフィスでは開発段階からそこに参画し、市場の要望を取り入れて頂き、市場に合ったクルマ作りまで行う機能を有したところといった意味合いです」との説明。確かに先代では車幅をわざわざ1800mmに削り落としたモデルを作ってきたし、今回の場合は何と日本市場専用のエンジンまで作らせたのだがら、普通のインポーターとはわけが違う。
それもこれも売れているから。つまり売れているブランドは発言力も強くなり、必然的にメーカーもその市場の意見は取り入れてくれるという好循環が生まれるというわけだ。日本市場専用のエンジンとは、『320i』用の2リットルターボエンジン。日本の道路で使用頻度の高い領域を重視したチューニングが施されているという。ただし今回はその試乗車はなかった。今回試乗できたのはより高性能な『330i Mスポーツ』である。
◆「OK、BMW!」現代風の進化がそこかしこに
330iの基本的な構造は320iと同じで、エンジン型式B48B20Bというもの。直列4気筒で1998ccの排気量にツインパワーターボ装着だ。驚くべきはその燃料の噴射圧。実に350barだという。普通200barあればかなり強い噴射圧なのだが、先代のエンジンからいとも簡単にその普通でかなり高い…の200bar分を一気に引き上げた。このあたりがエンジン屋の真骨頂。それでいて、噴射圧が高くなれば必然的に煩くなるカチカチという独特なノイズもまるで出していない。
このエンジンに始まって、今回の3シリーズはあれやこれやと注目すべき点が多い。そのひとつはメルセデスが 「ハイ、メルセデス」と呼びかけて色々と操作を音声認識でこなすAIを搭載したのに対し、BMWでは「OK、BMW」と呼びかけて音声認識させるAIを搭載してきたことだ。何やらグーグルとアップルの戦いの様相を呈してきた。もっとも、BMWの場合、「OK、BMW」の呼びかけが嫌な人は、その呼びかけの文言を任意に変えることが出来るという。実際にあれこれ試してみたが、こいつに関してはまだまだ勉強不足(AIが)で、なかなか認識してくれないところが多々あった。
次に運転支援システムの強化。前方を監視するカメラはついに3眼になった。そしてほぼ全モデルに標準になるというパーキングアシスト。こいつが凄い。これは35km/h以下で駐車スペースなどを探す場合、袋小路に入ってしまったような時バックしなくてはならないが、直近50mの軌跡を覚えていて、リバースに入れてディスプレイされるリバースアシストをタッチすると、ステアリングを握ることなく、その直近50mを忠実にトレースしながらバックしてくれる機構。実際意地悪にクルマのすぐ横をすり抜けるような軌跡を作って試してみたが、どこにもぶつかることなく見事にトレースしてくれた。ただしこれ、ブレーキ操作はドライバー自身がやる必要があるし、後方確認もドライバーの役目である。
最後は新しいメーターを含むディスプレイ。センターのディスプレイが先代型よりだいぶドライバー側に近づいた。これはタッチスクリーン化したための措置。さらにメータークラスターは完全デジタル化され、メーター間の中間スペースを有効活用するため、タコメーターの針が右から左へと回転するようになった。まるでプジョーのメーターを見ているようであった。質感もかなり高い。まあ現代風といえる進化であるが…。
◆やはりエンジン屋の真骨頂である
最高出力と最大トルクがそれぞれ258ps、400Nmというスペックを持つ330i。そのトルク感は最早完全にディーゼルのそれだし、発生回転も1550rpmから始まるからまさにディーゼル。実は同じようなことをマツダがやってガソリンターボを作り上げた。しかし、あちらの車は高回転域がまるで回らない。ところが対するこちら、フルスロットルをくれてやると、何とレブリミットの6000pmを遥かに飛び越えて7000rpmのわずか手前で2速に入った。そこまで軽々と回る。やはりエンジン屋の真骨頂である。
とにかく全域で回してとても痛快で気持ちが良い。一方で1550rpmから4400rpmまで400Nmの最大トルクを出し続けるから、その加速感が走り出してすぐにグイグイ加速するので、ドラマチック感はまるでない。ひたすら力強さだけが前面に押し出されている。乗り易いことこの上ないわけで、何ら否定するものではないのだが、山を制覇したような高揚感は生まれない。これでAIが勉強不足を脱却すると、素晴らしく良いクルマになってくる。
日本人はMスポーツがお好きだとかで、このグレードに限れば販売は世界でもトップ3の市場だそう。このため、330iには今のところMスポーツしか用意がないようだ。試乗車は19インチのオプションタイヤを装着していたが、リア255/35R19という超扁平でも最近のクルマは実に快適で、乗り心地をスポイルしない。
でも気持ちとしては標準タイヤで乗ってみたいと思ったし、何より日本専用エンジンに乗ってみたいと思ったりもした。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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