【BMW 3シリーズ 新型試乗】ボディサイズの拡大も「恐れることはない」…青山尚暉
◆ボディサイズの拡大も「恐ることはない」
今では多くの車種バリエーションが揃う中で、今も昔も、もっともBMWらしいスポーツセダンは『3シリーズ』だと思い続けている。自身も80年代にE30型「325i」を所有し、その駆け抜ける歓びを満喫したものだ。
そんなBMW 3シリーズの7代目となるプレミアムスポーツセダン「G20型」がいよいよ日本に上陸した。当初に用意されるのは、BMW本社がいかに日本市場を大切にしているかを示す、現時点で日本専用車(!)となる320i、そのM Sport、そして今回試乗した「330i M Sport」である。日本でもM Sportグレードは大人気で、これまで約55%のユーザーがM Sportを選んでいるという。
ボディサイズは拡大されている。全長は+70mmの4715mm。全幅は+25mmの1825mm。そしてホイールベースは+40mmの2850mmとなり、重心は10mm低くなっているという。ついに日本仕様がこだわってきた全幅1800mmを超えてしまったか!という声もありそうだが、アウディ『A4』やトヨタ『カムリ』は1840mm、VW『パサート』が1830mm、メルセデスベンツ『Cクラス』も今や1810mmなのだから、恐れることはない(モニター類、自動バック機能がフォローしてくれるはずだ)。
新型のハイライトのひとつが世界最先端をいく、全車標準の3眼カメラ+レーダーを用いた先進安全支援機能、BMWコネクティッド・ドライブ、およびBMW初のAIを活用したインテリジェント・パーソナルアシスタント、そして自動で前進した50mの軌跡を記憶して、そのまま同じ軌跡をバックしてくれるリバースアシスト機能などの用意である。
試乗した330i M Sportには標準の18インチに対して1インチアップの19インチランフラットタイヤなど、さまざまなオプションが付いていたが、あらゆる先端装備がすべて標準という思い切った設定、戦略は歓迎すべき点ではないか。
◆ドライバーの自在感に満ちたハンドリングマシン
走り始めて、まず感動させられたのが乗り心地。19インチランフラットタイヤを履いていても、ロングホイールベースが生きたプレミアム・セダンらしい快適感が支配する。荒れた路面、段差などでも、驚くほどマイルドでフラットに徹した乗り味を示してくれるのだ。2リットル、4気筒ターボ、258psのエンジン+8ATのパワーユニットを低回転で走らせ、直進する限り車内は驚くほど静かでコンフォータブルだった。
が、新型BMW 3シリーズが本領を発揮するのは、まずは“曲がり”のシーンである。交差点、高速レーンチェンジ、そして箱根ターンパイクのような大小のコーナーが連続する峠道を駆け抜けるシーンでは、水を得た魚のように、フロント回り剛性先代比50%増しが効いた、ヒラリヒラリとした、低重心かつダイレクト&シャープな操縦性、身のこなしを演じ、4輪のタイヤの接地感が手に取るように伝わってくる、まさにドライバーの自在感に満ちたハンドリングスポーツマシンと化す。
エンジンが4000回転を超えて快音の咆哮を発し、バイエルン製ユニットが歌い出せば、ドライバーの血を騒がせるファン・トゥ・ドライブの世界に浸り切れること必至である。
もちろん、動力性能に不満などあろうはずもない。箱根ターンパイクの急こう配を、エンジンを高回転まで回さずともグイグイ登る強大なトルクの余裕は330iならではだろう。減速時の自動ブリッピングはけっこう控えめだが、それはそれでプレミアムな大人っぽさと言い換えられる。
◆時間と「世界最先端の安全」を買えるプレミアムセダン
最新のインターフェースの使い勝手も文句なしだ。オペレーターサービスに頼らずとも、センターコンソールに並んだスイッチを押すだけで、あらかじめメモリーしておいた機能を呼び出せるほか、ボイスコントロールの精度もなかなかだった。試乗後、「オーケー・ビーエムダブリュー」と発し、続けて「平均燃費を教えて」と問えば、「10.0km/リットルです」と即答してくれた。今どき、ボイスコントロールはめずらしくないが、258psの高性能を高速道路で、山道で楽しみ尽くした燃費としては、なかなかの数値と言えるだろう。
そうそう、ACCの再加速性能に優れているのは最新の他のBMW同様だが、レーンキープ機能の精密さ、特にステアリングの引き戻し力の強さは特筆すべき点だった。S字の車線をはみ出し、真っすぐ走ろうとしても、極太のスポーツステアリングがそれを許さない…のである。
アウトバーンの発達したドイツで高性能車に乗ることは、「時間を買う」とも言われるが、新型3シリーズはその「時間」とともに「世界最先端の安全」を買えるプレミアムスポーツセダンだ。このあと、クリーンディーゼルなど多彩なパワーユニットが用意されるが、個人的には今秋上陸予定とされるワゴン版のツーリングにも興味津々である。
ちなみに、330i M Sportの632万円に対して49万円安い、現時点で日本専用車となる320i M Sportの583万円という値付けは、先代とまったく同じ。さまざまな新しい先進機能、充実した装備が標準なのだから、こちらは実質的な値下げとも言えそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータの蓄積は膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍も手がけ、また、愛犬とのカーライフに関するテレビ番組、ラジオ番組、イベントに出演。愛犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーとしての活動、自動車用ペットアクセサリーの企画・開発も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 青山尚暉)
今では多くの車種バリエーションが揃う中で、今も昔も、もっともBMWらしいスポーツセダンは『3シリーズ』だと思い続けている。自身も80年代にE30型「325i」を所有し、その駆け抜ける歓びを満喫したものだ。
そんなBMW 3シリーズの7代目となるプレミアムスポーツセダン「G20型」がいよいよ日本に上陸した。当初に用意されるのは、BMW本社がいかに日本市場を大切にしているかを示す、現時点で日本専用車(!)となる320i、そのM Sport、そして今回試乗した「330i M Sport」である。日本でもM Sportグレードは大人気で、これまで約55%のユーザーがM Sportを選んでいるという。
ボディサイズは拡大されている。全長は+70mmの4715mm。全幅は+25mmの1825mm。そしてホイールベースは+40mmの2850mmとなり、重心は10mm低くなっているという。ついに日本仕様がこだわってきた全幅1800mmを超えてしまったか!という声もありそうだが、アウディ『A4』やトヨタ『カムリ』は1840mm、VW『パサート』が1830mm、メルセデスベンツ『Cクラス』も今や1810mmなのだから、恐れることはない(モニター類、自動バック機能がフォローしてくれるはずだ)。
新型のハイライトのひとつが世界最先端をいく、全車標準の3眼カメラ+レーダーを用いた先進安全支援機能、BMWコネクティッド・ドライブ、およびBMW初のAIを活用したインテリジェント・パーソナルアシスタント、そして自動で前進した50mの軌跡を記憶して、そのまま同じ軌跡をバックしてくれるリバースアシスト機能などの用意である。
試乗した330i M Sportには標準の18インチに対して1インチアップの19インチランフラットタイヤなど、さまざまなオプションが付いていたが、あらゆる先端装備がすべて標準という思い切った設定、戦略は歓迎すべき点ではないか。
◆ドライバーの自在感に満ちたハンドリングマシン
走り始めて、まず感動させられたのが乗り心地。19インチランフラットタイヤを履いていても、ロングホイールベースが生きたプレミアム・セダンらしい快適感が支配する。荒れた路面、段差などでも、驚くほどマイルドでフラットに徹した乗り味を示してくれるのだ。2リットル、4気筒ターボ、258psのエンジン+8ATのパワーユニットを低回転で走らせ、直進する限り車内は驚くほど静かでコンフォータブルだった。
が、新型BMW 3シリーズが本領を発揮するのは、まずは“曲がり”のシーンである。交差点、高速レーンチェンジ、そして箱根ターンパイクのような大小のコーナーが連続する峠道を駆け抜けるシーンでは、水を得た魚のように、フロント回り剛性先代比50%増しが効いた、ヒラリヒラリとした、低重心かつダイレクト&シャープな操縦性、身のこなしを演じ、4輪のタイヤの接地感が手に取るように伝わってくる、まさにドライバーの自在感に満ちたハンドリングスポーツマシンと化す。
エンジンが4000回転を超えて快音の咆哮を発し、バイエルン製ユニットが歌い出せば、ドライバーの血を騒がせるファン・トゥ・ドライブの世界に浸り切れること必至である。
もちろん、動力性能に不満などあろうはずもない。箱根ターンパイクの急こう配を、エンジンを高回転まで回さずともグイグイ登る強大なトルクの余裕は330iならではだろう。減速時の自動ブリッピングはけっこう控えめだが、それはそれでプレミアムな大人っぽさと言い換えられる。
◆時間と「世界最先端の安全」を買えるプレミアムセダン
最新のインターフェースの使い勝手も文句なしだ。オペレーターサービスに頼らずとも、センターコンソールに並んだスイッチを押すだけで、あらかじめメモリーしておいた機能を呼び出せるほか、ボイスコントロールの精度もなかなかだった。試乗後、「オーケー・ビーエムダブリュー」と発し、続けて「平均燃費を教えて」と問えば、「10.0km/リットルです」と即答してくれた。今どき、ボイスコントロールはめずらしくないが、258psの高性能を高速道路で、山道で楽しみ尽くした燃費としては、なかなかの数値と言えるだろう。
そうそう、ACCの再加速性能に優れているのは最新の他のBMW同様だが、レーンキープ機能の精密さ、特にステアリングの引き戻し力の強さは特筆すべき点だった。S字の車線をはみ出し、真っすぐ走ろうとしても、極太のスポーツステアリングがそれを許さない…のである。
アウトバーンの発達したドイツで高性能車に乗ることは、「時間を買う」とも言われるが、新型3シリーズはその「時間」とともに「世界最先端の安全」を買えるプレミアムスポーツセダンだ。このあと、クリーンディーゼルなど多彩なパワーユニットが用意されるが、個人的には今秋上陸予定とされるワゴン版のツーリングにも興味津々である。
ちなみに、330i M Sportの632万円に対して49万円安い、現時点で日本専用車となる320i M Sportの583万円という値付けは、先代とまったく同じ。さまざまな新しい先進機能、充実した装備が標準なのだから、こちらは実質的な値下げとも言えそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータの蓄積は膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍も手がけ、また、愛犬とのカーライフに関するテレビ番組、ラジオ番組、イベントに出演。愛犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーとしての活動、自動車用ペットアクセサリーの企画・開発も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
(レスポンス 青山尚暉)
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