【マツダ CX-8 ガソリン 新型試乗】ガソリンエンジンの静粛性は捨て難いが…中村孝仁
2018年の3列シートSUVというカテゴリーでは販売台数がNo.1に輝いたというマツダ『CX-8』。敢えてミニバン市場から撤退してこれを作った甲斐があったのかもしれない。
そのCX-8に2列シートの『CX-5』同様、2.5リットルのターボエンジンが搭載された。CX-8はこれまでディーゼルユニットの設定しかなく、昨年の商品改良時に新たに2種のガソリンエンジンが追加設定され、そのうちの一つが今回試乗した2.5Tということだ。
今回の2.5Tユニットは4WDにしか設定がない。このクルマの前に乗ったCX-5の同エンジンを搭載したモデルは車重が1680kg。これに対してCX-8の方は1880kgときっちり200kg重い。このため、走りの性能はCX-5と比べるとやはりだいぶ異なっていた。
◆静粛性の高さが実感できる
すぐに感じたのは、CX-8の方が確実に静粛性が高いということ。今回の改良でも3列目周辺の遮音性を強化しているとのことで、一人乗車でもそうした遮音性強化がドライバーズシートでも実感できるのかな?と感じた。一方で200kgの重量ハンデは、やはり加速性能には大きな影響を与えている。
軽いCX-5ではパーシャル領域からの加速感が顕著で、そのスムーズで強力な加速感には感銘を受けたものである。しかし、CX-8ではその感銘を受けるほどの加速感は感じられなかった。十分速いのだが、まあマイルドな加速に終始する。素早い追い越しを求める場合でもアクセルペダルをベタ踏みする必要はない。
新しいCX-8にはもう一つNAの2.5リットルガソリンエンジンも追加されている。基本的にターボのある無し以外には差がないエンジンであるはずだが、チューニングはまるで異なっている。最高出力と最大トルクはNAの方が198ps/6000rpm、250Nm/4000rpm。これに対してターボ車の方は230ps/4250rpm、420Nm/2000rpmである。この数値を見ただけでも、ターボのチューニングが中低速を重視して乗り易さを出しているセッティングであることがお解りだと思う。
ちなみにディーゼルのパフォーマンスは、190ps/4500rpm、450Nm/2000rpm。最高出力は何とディーゼルの方が高い回転域で発揮される。というわけでガソリンターボでありながら、性格的にはディーゼルっぽいところがわかって頂けると思う。だから、間違っても回して楽しもうなどと思わない方が良い。ピークパワーを超えると、このエンジン、急激に音がうるさくなり、そもそも苦しげで回してやっても何のメリットもない。
◆CX-5比で200kgの増加を受け止めるエンジン
ガソリンの2.5リットルNAエンジンはCX-5で体験している。しかし、今回CX-8に採用された2.5リットルNAエンジンは、CX-5のものとは実は異なる。CX-5では低負荷時に2気筒を休める気筒休止システムが入れられているのだが、CX-8のNAユニットにそれが付かない。何故か理由は聞いていないのだが、いずれにしても車重も重いしNAの方は回さないと性能的にゆとりがないだろうから、多分かなり燃費的には不利になるものと思われる。
一応WLTCのモード燃費ではNAの方が燃費は良いとされているが、あくまでもテストでの話。現実は性能的にゆとりのあるターボの方が良いのではないかと感じられる。ただそうは言っても、燃費性能は決してよろしくなかった。
今回は走行距離をそれほど伸ばすことが出来なかったうえ、高速走行区間が全走行距離の5割ほどだったから、前回試乗したCX-5との横並びの比較はできないが、トータル燃費は一桁台の8.8km/リットルという結果になった。CX-5の試乗時にも書いたが、やはりトランスミッションが6速であることが燃費に影響を与えているものと感じる。因みにギア比はファイナルまで含めて完全にCX-5と同じであるから、200kgの重量増は確実に燃費を悪くするというわけだ。
◆乗り心地にこだわりをもつマツダならば
冒頭で静粛性がCX-5と比べて良いと書いたが、乗り心地もやはりCX-8の方が上で、上質である。やはり重量があるどっしり感と、ホイールベースが230mm伸びている恩恵だろうか。
また、マツダは横ブレを小さくするGベクタリングコントロールという機構を開発して取り入れているが、CX-8はさらにステアリングを戻した時にも効果を発揮するというGベクタリングコントロールプラスを設定している。残念ながら今もってその効果のほどを実感出来ていないというのが本音であるが、結構細かい乗り心地に対して拘りを持った開発を進めているのがマツダである。
ただ、そうした細かい点に気を使うよりも、本音としては性能の良いダンパーを入れた方が効果的なのでは?と思ってしまうところがあって、CX-5にしてもCX-8にしても、全体的にフラット感のある乗り心地とは言いにくい。このあたりが改善されてくると、マツダのSUVは素晴らしく良いクルマになると思う。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来42年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
(レスポンス 中村 孝仁)
そのCX-8に2列シートの『CX-5』同様、2.5リットルのターボエンジンが搭載された。CX-8はこれまでディーゼルユニットの設定しかなく、昨年の商品改良時に新たに2種のガソリンエンジンが追加設定され、そのうちの一つが今回試乗した2.5Tということだ。
今回の2.5Tユニットは4WDにしか設定がない。このクルマの前に乗ったCX-5の同エンジンを搭載したモデルは車重が1680kg。これに対してCX-8の方は1880kgときっちり200kg重い。このため、走りの性能はCX-5と比べるとやはりだいぶ異なっていた。
◆静粛性の高さが実感できる
すぐに感じたのは、CX-8の方が確実に静粛性が高いということ。今回の改良でも3列目周辺の遮音性を強化しているとのことで、一人乗車でもそうした遮音性強化がドライバーズシートでも実感できるのかな?と感じた。一方で200kgの重量ハンデは、やはり加速性能には大きな影響を与えている。
軽いCX-5ではパーシャル領域からの加速感が顕著で、そのスムーズで強力な加速感には感銘を受けたものである。しかし、CX-8ではその感銘を受けるほどの加速感は感じられなかった。十分速いのだが、まあマイルドな加速に終始する。素早い追い越しを求める場合でもアクセルペダルをベタ踏みする必要はない。
新しいCX-8にはもう一つNAの2.5リットルガソリンエンジンも追加されている。基本的にターボのある無し以外には差がないエンジンであるはずだが、チューニングはまるで異なっている。最高出力と最大トルクはNAの方が198ps/6000rpm、250Nm/4000rpm。これに対してターボ車の方は230ps/4250rpm、420Nm/2000rpmである。この数値を見ただけでも、ターボのチューニングが中低速を重視して乗り易さを出しているセッティングであることがお解りだと思う。
ちなみにディーゼルのパフォーマンスは、190ps/4500rpm、450Nm/2000rpm。最高出力は何とディーゼルの方が高い回転域で発揮される。というわけでガソリンターボでありながら、性格的にはディーゼルっぽいところがわかって頂けると思う。だから、間違っても回して楽しもうなどと思わない方が良い。ピークパワーを超えると、このエンジン、急激に音がうるさくなり、そもそも苦しげで回してやっても何のメリットもない。
◆CX-5比で200kgの増加を受け止めるエンジン
ガソリンの2.5リットルNAエンジンはCX-5で体験している。しかし、今回CX-8に採用された2.5リットルNAエンジンは、CX-5のものとは実は異なる。CX-5では低負荷時に2気筒を休める気筒休止システムが入れられているのだが、CX-8のNAユニットにそれが付かない。何故か理由は聞いていないのだが、いずれにしても車重も重いしNAの方は回さないと性能的にゆとりがないだろうから、多分かなり燃費的には不利になるものと思われる。
一応WLTCのモード燃費ではNAの方が燃費は良いとされているが、あくまでもテストでの話。現実は性能的にゆとりのあるターボの方が良いのではないかと感じられる。ただそうは言っても、燃費性能は決してよろしくなかった。
今回は走行距離をそれほど伸ばすことが出来なかったうえ、高速走行区間が全走行距離の5割ほどだったから、前回試乗したCX-5との横並びの比較はできないが、トータル燃費は一桁台の8.8km/リットルという結果になった。CX-5の試乗時にも書いたが、やはりトランスミッションが6速であることが燃費に影響を与えているものと感じる。因みにギア比はファイナルまで含めて完全にCX-5と同じであるから、200kgの重量増は確実に燃費を悪くするというわけだ。
◆乗り心地にこだわりをもつマツダならば
冒頭で静粛性がCX-5と比べて良いと書いたが、乗り心地もやはりCX-8の方が上で、上質である。やはり重量があるどっしり感と、ホイールベースが230mm伸びている恩恵だろうか。
また、マツダは横ブレを小さくするGベクタリングコントロールという機構を開発して取り入れているが、CX-8はさらにステアリングを戻した時にも効果を発揮するというGベクタリングコントロールプラスを設定している。残念ながら今もってその効果のほどを実感出来ていないというのが本音であるが、結構細かい乗り心地に対して拘りを持った開発を進めているのがマツダである。
ただ、そうした細かい点に気を使うよりも、本音としては性能の良いダンパーを入れた方が効果的なのでは?と思ってしまうところがあって、CX-5にしてもCX-8にしても、全体的にフラット感のある乗り心地とは言いにくい。このあたりが改善されてくると、マツダのSUVは素晴らしく良いクルマになると思う。
■5つ星評価
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